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第8章 13
Dom、Sub、Neutral――その違いが明らかにされた途端、多くの人々は自身の在り方がようやく肯定されたことに安堵し、縋りつくようにそれを受け入れた。そして、幸村や夏野のように、生まれた時からDynamicsの存在が認知されていた世代の人間は、その役割を疑うこともせず全うし続けてきた。
DomとSubのPlayは「おすわり」というCommandから始まる。
彼らはそう教えられ、それが正しい形なのだと信じ込んでいた。主従関係を伴ったPlayはDynamicsの方向性が明確で、あらゆるDomとSubを確実に満たすことができるからだ。身体的、精神的な苦痛を伴う方法も同様だ。
多くのSubにそうしたPlayを求められ、それに応えてきた夏野は、いつしかそれが自分の本性なのだと思い込んでいた。夏野の心が他人を組み敷くことを拒んでも、その声はDomに対する偏見によって掻き消されてきた。
幸村との出会いはその偏見を打ち壊し、夏野の中にあるDynamicsの方向性を少し変化させた。夏野は幸村を力ではなく幸福感によって支配することを求めており、幸村もまた、夏野にそうされることを望んでいる。
今日も2人は、お互いのことをたくさん褒めて、甘やかして、心と体が赴くままに求め合う。そこに主従関係はないが、信頼関係が生み出した繋がりは、それだけで2人のことを満たしていく。
◇◇◇
「ごちそうさま。今日もめちゃくちゃ旨かったよ。デザートは俺が準備してやるから待ってて」
「ありがと、幸村さん。……でも、その前に」
「おい、ちょっ……んんっ……」
腰を引き寄せられて、優しく唇を奪われる。
「……なっ、なんだよ。まったくナツは甘えん坊だな」
「幸村さんがしたいと思って。契約取れたご褒美に」
何度も音を立ててキスを繰り返し、やがてその口は首筋を噛む。
「あっ……な、なつ……待っ……」
「そんな顔されたら、俺我慢できないんだけど」
「はっ……だってお前がっ……」
「……俺?違うだろ。朝陽、どうしてほしい?言って。言えよ」
琥珀色の瞳は、獲物を狙って野性的な光を放つ。
「……お、お願い……もっと、して……」
「よくできました。いい子だな」
「なっ……そんなっ……やっぱダメっ……」
「朝陽はこれが好きだろ?好きって言って。素直になればもっと褒めてあげる」
愛に溢れるCommandが、俺の欲望 をあるべき方へと導いていく。
「す、好きっ……夏野が、大好き……」
愛しいDom様は、俺のペットで、恋人で、支配者で……。
fin
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