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第12話
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薄く開いた唇の間から温かな舌が入り込んでくる。往生際悪く縮こまらせて避ける俺の舌を誘うように、口内をゆうるりと移動していく。
丁寧に歯列をなぞり、唇の裏を舐め、口内低の柔らかな部分をちょんちょんとつつく。
やっと、舌先と舌先が触れ合った。
その瞬間に欲が、後悔や躊躇いを押し退ける。俺は天音のその舌を絡め取った。
彼の後頭部に手をやり、ぐっと押しつける。
激しく舌を絡め、自分の口内に誘う。その舌先を甘噛みしたり、ちゅうっと吸い上げたりした。
長く続いた激しい口づけに俺の方が苦しくなった。顔を離すと、名残惜しげに出された天音の紅い舌と、顎を伝い落ちる水滴が見えた。
「どうしたら、いい……? ── 男とシタことがない」
頭が熱くなりすぎて、さっきも言ったことを繰り返してしまう。情けないくらいに声も掠れている。
ふふっと、天音が微笑む。
優しい、それでいて妖艶な笑み。
「女のコにするみたいに、して、いいよ。四季の思うままに、していいんだよ?」
そう言って、自分のネクタイを引き抜きラグの上に落とし、一つ二つとボタンを外した。
ワイシャツの下から現れた肌も白くて滑らかだ。綺麗に浮き出た鎖骨もちらりと見えた。
俺はごくっと喉を鳴らした。
肌触りの良い上質そうなスーツの上着をするりと落とし、天音が自ら外したボタンの残りをすべて外していく。
白い清潔なタンクトップの上から、女にするように胸を掌で覆う。もちろん膨らみも柔らかさもない。しかし、その頂きは存在を主張するように布越しにも、つんと立ち上がっているようだ。
──── 興奮……してるのか……?
そう思うと身体の中心にも熱が溜まってくる。
タンクトップの裾から手を滑り込ませ、直接に右の胸に触れる。乳輪は思ったよりもぷっくらとしていて、他人の手の跡を感じるような気がして、苦く思う。
それを振り切るように、白い首筋に舌を這わせ、ちゅうっと強く吸い上げる。
痕がついただろうか。
痕をつけるのは、所有の証。
相手が院内の人間であることも多い俺は、けして痕をつけるようなことをしなかった。理由はそれだけではなく、痕をつけたい程所有したい相手に出逢わなかったからだ。
天音には ── つけてみたくなった。
見えたら困るだろうと、思いやる気持ちを持つ余裕もなく。
「ん……」
首筋から鎖骨までを噛みつくように辿っていく。そうしながら、つんと立った乳首を女のそれを弄るように攻めた。
そうしていると、天音の唇から甘い吐息が漏れ始めた。
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