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第1話
俺、川口五月は突然ですが恋に落ちました。
「で、さっちゃんどうしたとよ?」
目の前の幼馴染みは興味無さそうに聞く。
「ババアに痴漢って言われてさ…」
「お前、痴漢しそうやもんな」
「いや、だけん、せんって!」
幼馴染みの突っ込みに突っ込み返す。
そう……俺は昨日、部活帰りに乗った電車で痴漢呼ばわりされたのだ。
俺の前に居たババアがこっちをチラチラ見るなって思ってたら、突然「痴漢です」と言い出した!
男子校で女子には飢えてるけれど、母親の年齢に近い人を触りたいとか思わん。
否定しようとした時に違いますよって俺の横から声がした。
160cm台の色白の目が大きい女の子。
短い髪でボーイッシュな、凄く可愛い子。
この子なら触りたいかも!とか思ってしまったくらい。
「あの、多分、貴方の身体に当たってるのは僕が持ってる大根だと思うんです、ごめんなさい。この人は僕の横でゲームしてたので触れないです」
僕……ボーイッシュの子が僕って言うの可愛いよなあ。
身体に当たってたのが大根だと分かり女性は真っ赤な顔して黙り込み、止まった駅で降りて行った。
間違えたクセに謝らないなんて!って思ったけど、その可愛い子が「ごめんなさい。僕のせいだと思います」と俺に頭を下げた。
「えっ……いや、」
俺は頭と両手を同時に振る。
どうしよう……名前聞こうか?なんて思っていると「僕、ここで降りるから」と頭を下げて降りて行った。
「はいはい……で?どーしたいわけ?」
目の前の幼馴染はどーでもいいよ?って顔で俺を見ている。
「部活帰りにさ……あの子が降りた駅で待ち伏せしようかと」
「痴漢の次はストーカーか!」
「失礼な!純粋な気持ちをストーカー扱いするなや!」
「お前……自覚なしのストーカーだな。まあ、ストーカーって自覚なしだもんな」
「芽衣」
「その名前で呼ぶな!ただでさえお前といるとジブリ扱いされるんだからな!」
幼なじみの名前は河野芽衣(こうのめい )俺がさつきだからトトロのあの姉妹扱いされている。もう、幼稚園からずっと。
「芽衣は芽衣だろ!お前だって、俺をさっちゃん呼ぶやん!」
こんな会話を毎回やってる俺達って成長していないと思う。でも、俺は生まれ変わる!あの子を振り向かせる為に!だから、ストーカーでも構わない。
◆◆◆
「で?何でお前までくんの?」
俺の横には芽衣がいる。
「見たいだけ、お前が振られるとこ」
「何で振られる前提なんだよ?」
「ストーカーとか相手しないって!」
「だから、ストーカーじゃ」
ストーカーじゃないって言いかけた時にあの子の姿が。
やっぱり居た!
「何みてんだよ?」
芽衣も俺の視線の先に気付く。
「あの子?」
「うん」
俺はそっと、その子に近づく。
すると、こちらを偶然向いてくれて「あっ、」ってニコッって笑ってくれた。
やった!覚えてくれてた。
「こここ、こんにちわ」
「ニワトリか!」
俺の挨拶に突っ込みする芽衣。
「こんにちわ」
ニコッと笑う顔が可愛い。
「あの、昨日はありがとうございました」
俺は深々と頭を下げる。
「ううん……今日はお友達も一緒?」
「はい!幼馴染です」
「同じ高校なんだね」
「えっ?何でわかる……」
驚く俺。
「制服」
芽衣から突っ込みが入った。その瞬間、その子がクスクス笑いだした。
か、可愛い!ばり可愛い!!
「あ、あの、俺、川口五月って言います!友達になってください!」
精一杯だった。声の大きさとか顔が赤いとかその時は全く気付いてなくて、あとから芽衣に言われた。皆、注目してたぞ!って。
「うん!僕、佐藤碧です」
ニコッと笑って自己紹介してくれた。
「碧さん……あ、あのいくつですか?」
「18だよ」
「えっ?高校生?」
「ううん、社会人」
「あ、ごめんなさい」
「ふふ、よろしくね。川口君」
「あ、あの、五月でいいっす!」
「じゃあ、五月君」
ほわわ!めっちゃ嬉しい!名前呼び。
「君は?」
碧さんは芽衣を見る。
「俺は河野芽衣っす」
「よろしく芽衣くん。2人ともバスケ部?」
「はい!そうっす!何で知って?」
「昨日、ジャージ着てたでしょ?バスケ部って書いてあった」
あっ!そうだった。
俺は照れ笑いする。
「じゃあ、僕、用事あるから」
碧さんは手を振る。
「あの、また会えますか?」
「うん、きっと!」
碧さんは手を振って歩いて行った。
凄い!俺ってば、やれば出来る!
「友達になってくれるって」
俺は芽衣の肩を組む。
「なあ?お前気付いてんの?」
「何が?」
「確かに碧さんは可愛い」
「うん、な?可愛いだろ?芽衣もそう思うか?あ、でも、先に目をつけたのは俺だからな」
可愛いからなあ。碧さん……
「いや、そうじゃなくて……男じゃん?」
「は?」
コイツは何言ってるんだろう?
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