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第16話
「この星はポラリスだそうです」
不意に声は舞い降りた。
「ポラリス?」
「はい。北極星なのだと」
そんな事を?
「ポラリスは北を指す星。古来、船人(ふなびと)はこの星を目印に航海しました。
道に迷わぬよう、この星が俺に未来を指し示すようにと」
「そうだったんだ」
「あなたが取り押さえられた時、物証として全ての持ち物は取り上げられてしまいましたが、このペンダントだけは渡したくなかったんです。この星だけは……」
あなたと俺を繋ぐ唯一のもの。
「今日まで俺が大切に保管していました。あなたに渡せて良かったです」
この星が、あなたの未来を指し示しますように……
サラサラと流れた金の髪が、長い睫毛に掛かった。
伏した青眼。
「My Lord ……」
御心のままに……
おもむろに彼は跪くと、恭しく右手を手にとった。
青い瞳が落ちてくる。
繊細なガラス細工でも扱うかのように。
唇が静かに手の甲に触れた。
「我が剣はあなたのために。あなたを守り、あなたの味方で在り続けると誓います」
世界の全てを敵にまわしても。
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