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第37話
エンジンが甲高い響鳴を上げた。
『目的地N4』
モニターがN4通路までのルートをシミュレーションする。
エネミーを表す赤い点が無数に存在する。ここをかい潜るのか。
『北側通路死守は脱出の絶対条件です。しかし直進は不利です。一旦地下道に潜り撹乱します』
手薄とはいっても、やはり敵の数が多い。これだけ数を全て振り切るのは不可能だろう。
「戦闘になるかな……」
『恐らくは』
避けて通れない。
『どうか不安な顔をなさらないで』
モニターの中で、そっと手が差し伸べられた。
『不安に怯えるあなたを撫でて差し上げたい。震える手を包んで、ぎゅっと繋いでいて差し上げたい。けれど、それが叶わぬなら……』
俺はあなたの剣です。
『如何なる事があろうとも決して折れぬ、あなたの剣です。指一本触れさせません。あなたがいる限り、必ず守り抜きます』
俺を……
『あなたの剣を信じて下さい』
揺るぎない瞳がある。
信念を映した鏡面のような双眼。
頷くだけで十分だった。
心があたたかい。
まるで、その熱に触れているのように。
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