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第41話

『さて……』  フゥっと一つ、長い溜め息を吐き出した。 『難しい質問ですね。最初はどんな機体もコストが掛かるものです。制作には成功したが、コストダウンに失敗したのか。それとも、開発者の酔狂なのか。 あぁ、《ノイシュヴァン》製造を担う科学技術局は閉鎖的な所で、やたらシークレットが多いんですよ。副団長の俺では、門外漢だと門前払いです。足を踏み入れる事さえ許されません』 「そうなんだ」 『おっと。お喋りの時間は、そろそろ終わりのようです。エネミー反応がないと思ったら、待ち伏せられていたようですね』  レーダーに赤い点が急速に増殖する。  N4に至る通路は3ヶ所。  どれもが敵影に埋め尽くされている。 『退路は断たれています』  背後にも敵影が。 『動きを止めないで。止まった途端、雪崩込んできます』 「分かった」  スピードは緩めず、だが慎重に走行を進める。 『敵影は全て上層階、この上にいます。俺達が地下を出たタイミングで、数で押し潰す……単純で子供でも考える陳腐な作戦ですが、最も効率よい戦術です。何しろ俺達は上に上がるよりほか、外に出る道はないんですから』 「どうすればいい?」 『我々の戦術に変更はありません。撹乱を続けます』 「しかし……」  たった一機で、この数を相手にどう撹乱すれば。  《リヒトヴォルケ》を使えば、エナジー不足で機動不能に陥る。  モニターに映る瞳に迷いはない。クレイには、この先の戦局が見えている? 『ライト様も操縦に慣れてきた頃ですね。それでは《デュナメス》の両腕を左右に広げて下さい』 「こう?」 『そうです。スピードは落とさず、バランスを崩さないように……そう、お上手です』  カシャン、カシャン  装甲が割れて手の甲から銃が出現した。 『照準を絞って。……今です』  ピィーッ  モニターに発射可能のサインが表示された。

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