41 / 50
第41話
『さて……』
フゥっと一つ、長い溜め息を吐き出した。
『難しい質問ですね。最初はどんな機体もコストが掛かるものです。制作には成功したが、コストダウンに失敗したのか。それとも、開発者の酔狂なのか。
あぁ、《ノイシュヴァン》製造を担う科学技術局は閉鎖的な所で、やたらシークレットが多いんですよ。副団長の俺では、門外漢だと門前払いです。足を踏み入れる事さえ許されません』
「そうなんだ」
『おっと。お喋りの時間は、そろそろ終わりのようです。エネミー反応がないと思ったら、待ち伏せられていたようですね』
レーダーに赤い点が急速に増殖する。
N4に至る通路は3ヶ所。
どれもが敵影に埋め尽くされている。
『退路は断たれています』
背後にも敵影が。
『動きを止めないで。止まった途端、雪崩込んできます』
「分かった」
スピードは緩めず、だが慎重に走行を進める。
『敵影は全て上層階、この上にいます。俺達が地下を出たタイミングで、数で押し潰す……単純で子供でも考える陳腐な作戦ですが、最も効率よい戦術です。何しろ俺達は上に上がるよりほか、外に出る道はないんですから』
「どうすればいい?」
『我々の戦術に変更はありません。撹乱を続けます』
「しかし……」
たった一機で、この数を相手にどう撹乱すれば。
《リヒトヴォルケ》を使えば、エナジー不足で機動不能に陥る。
モニターに映る瞳に迷いはない。クレイには、この先の戦局が見えている?
『ライト様も操縦に慣れてきた頃ですね。それでは《デュナメス》の両腕を左右に広げて下さい』
「こう?」
『そうです。スピードは落とさず、バランスを崩さないように……そう、お上手です』
カシャン、カシャン
装甲が割れて手の甲から銃が出現した。
『照準を絞って。……今です』
ピィーッ
モニターに発射可能のサインが表示された。
ともだちにシェアしよう!