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第48話
『さ、出口を目指しましょう。この先、N4通路最終地点の大広間を抜ければ、城門はすぐそこ……』
ゴゴゴ
「なに?」
音が聞こえる。
ガゴゴゴォー
風を蝕むような音色だ。
闇夜に虎が遠吠えするかのような。
ピィーッ
索敵反応が光った。
『《ノイシュヴァン》一機。こちらに向かって来ます!』
「一機だけ?」
エネミーを示す赤い点滅は一つだけ。
数で擦り潰す作戦はやめたのか。けれど、先程の戦いで《パワーズ》では《デュナメス》を止められないと分かった筈。
なぜ今更、単騎で?
「考えている暇はない」
モニターのエネミーとの距離が、瞬く間に縮まっている。
もの凄いスピードだ。時速100キロ……いや、200キロ出ているか。
『ライト様、構う事はありません。ギリギリまで引きつけてかわしましょう』
そうか!
背後は暗闇の底。
崩落で床が崩れてしまっている。
エネミーに減速の気配はない。
「Allesklar!(アレスクラー)」
まだだ……
もっと引きつけろ。
……見えた。
《ノイシュヴァン》の機影だ。
「なんて装備を付けてるんだ」
まるで中世の重装騎兵だ。
重厚な鎧で武装した《パワーズ》だ。なぜ、あの重量で動けるのか。どんな出力をしているのだろう。
右手に巨大な槍。ランスを構える。
「あれが獲物」
加速度が穂先に乗る。まともに受ければ無事ではいられない。恐らく、コックピットの破壊は免れない。
一撃必殺
渾身の攻撃が来る。
まだだ……
もっと、もっと。
もっともっと敵を引きつけて……
寸前でかわして、敵機を崩落の底へ。
「今だ!」
このタイミング。ランスは届かない。加速の頂点で軌道修正は不可能。
《デュナメス》の右を《パワーズ》がすり抜けた。
『ライト様!』
ガラガラガラ、ガゴン!
金属の不協和音が鳴る。
《パワーズ》の鎧が外れた。《デュナメス》は攻撃していないのに。
「整備不良?」
ツッ
モニターが波打った。『SOUND ONLY』の表示だ。クレイの通信じゃない。
……『んなわけねーだろ』
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