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第1話 秘め事

 裸の青年が、うつ伏せになり官能的な姿を晒していた。後ろに突き出された双丘から液体が流れ落ち、絹の寝具に染みを作る。その液体の正体は媚薬交じりの香油である。 「あっ……、はぁっ……、サイル、さまっ……」  青年はまるで、目を開けながら眠り、夢を見ているかのようだった。その肌色は健康的なオリーブ色だ。黒い縮れた巻き毛が女性的な顔に落ちかかる。  裸の青年の双丘に香油を注いでいるのは、目から下を黒い布で覆った、覆面の男だった。  金糸銀糸の刺繍の施された、ゆったりとした白装束に、長身痩躯を包んでいる。  陽光を透過する水晶を思わせる直毛の金髪を、長く腰まで流していた。  瞳しか晒していないにも関らず、その覆面の内側に、類まれなる美貌を予感させた。  青空のような瞳だった。  空のように透き通り、空のように空虚だった。  裸の青年が、艶のある息を吐きながら乞い願う。 「サイル様……。もう我慢ができません、どうか、はやく……」  サイルと呼ばれた覆面の男は、痴態にくねる裸の青年を、劇でも鑑賞するような目で見下ろした。 「では、私を愛してると言え」  無機質で淡々とした囁きだった。  裸の青年は既に何度も言わされたその言葉を、オウムのようにまた繰り返す。 「アイシテます、サイル様」  サイルは自らの前を払う。下半身をくるぶしまで覆う長衣を。濃紺の帯の下、白く美しい下肢がちらりと覗く。  サイルは長衣を伸ばし、とばりのように青年の双丘に覆い被せた。絹のとばりの内側で、屹立したものを青年の後孔にあてがい、突く。 「んっ……はあぁぁ……っ!」  青年はのけぞり身悶えする。 「言え」 「あぁっ、ぁい……あいしてます、サイルさ、まっ……」  サイルの見下ろす背中には、奴隷であることを示す焼印がしっかりと刻まれていた。  青年の嬌声が褥を振るわせた。 「あっ……あっ……あぁあ……っ……!」  熱に浮かされたように痴態をさらす青年の後ろで、果たしてサイルがどんな表情をしているのか、覆面の上からはうかがい知れない。  ただ瞳だけが、空のように透明だった。 ◇ ◇ ◇

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