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淫らな面接 (5)

(なんで? おれがフェラされて射精したのを見て、興奮したのか? ヒロって、もしかして……)  ゲイなのか――そう思いかけた真希人は、頭を左右に振って否定した。  それなら、アキラにペニスを舐められて気持ちよく射精してしまった自分も、ゲイということになる。紘行の勃起は、単純な生理現象に違いなかった。 「ふうん。ヒロくんはもう準備OKなんだね。じゃあ、アキラは必要ないかな?」  カオルが話していたところへ、真希人の精液を洗い流したアキラが、バスタオルで身体を拭きながら戻ってきた。  アキラは紘行の前に立ち、真希人のときと同じようにネクタイに手をかける。 「いい。自分で脱ぐ」  紘行はアキラを押しのけ、さっと立ちあがると、一瞬の躊躇(ちゅうちょ)もせずに脱ぎはじめた。  バサッと上着が床に落ちる。次にシャツ、靴、靴下、それからスラックス。  あっという間にボクサーショーツ一枚になった。  その最後の一枚すらも、彼はためらわずに脱ぎ捨てる。 「いい脱ぎっぷり。男前だね、ヒロくん。股間のモノも立派だし」  カオルの言葉通り、紘行のペニスは大きかった。巨根と言ってもいい。  修学旅行のとき、宿泊したホテルの大浴場で初めて見たときはショックだった。平均以上はあると自負していた自分のモノが貧弱に見えて、しばらく落ち込んだくらいだ。  真希人が紘行の強引さに逆らえないのは、このときのトラウマが原因かもしれなかった。  頭ではバカバカしいと思っていても、男として完全に負けてしまったという劣等感が、どうしても(ぬぐ)えない。  眼の前にある紘行の巨根は、腹にくっつきそうなほどの急角度で勃起(ぼっき)しながら震えていて、爆発寸前のように見える。 「……ああ、ヒロくんの、もう限界が近いみたいだねえ。どうする? 自分で抜く? アキラにしてもらうほうがいい? それとも――」  にっこりと笑いながら、カオルは信じられないことを口にした。 「仲良しのマキトくんにフェラしてもらおうか?」  真希人は呆然とした。  頭の中に氷を流し込まれたみたいに、アキラから受けたフェラチオの余韻が冷めていく。 (こいつ……このカオルって人、絶対にどこかおかしい……あのアキラってやつも……)  もう黙っていられなかった。  真希人はカオルのほうに向き直る。 「あのさ……おれたちは女性の相手をするんだろ? どうして男どうしでこんなこと、しなきゃならないんだよ? おかしいだろ?」  もう敬語を使う余裕などなかった。 「なんだよ、これ!? これが面接? ただの変態行為じゃないか!」  こんないかがわしいバイトなど、もうどうでもよかった。紘行という証人もいるのだ、警察に訴えてやろうとまで思う。 「マキトくんは、少し勘違(かんちが)いしてるみたいだね」  カオルは穏やかに返してきた。 「もちろん、きみたちは男としてメンバーの相手をする。でも、それだけが仕事じゃない。男の子どうしの(から)みを見るのが趣味っていう女性もいるんだ。だから男どうしでもできるっていうのは、大切な条件の一つ。そのためのオーディションなんだ」 「男どうしの……絡み……?」  頭がくらくらしてきた。 (つまり……ホモどうしがヤってるところを見たいっていう変態女がいて、おれたちはそんな要求にも応じなきゃならないってこと……?)  真希人の背筋が(あわ)立った。 (男どうしでヤるってことは……フェラのしあいこをするだけじゃない。ケツも掘られるってことじゃないか! 冗談じゃない!)  よろけながら立ちあがった真希人は、散らばった自分の洋服をかき集めた。  なぜだか、さっきから身体が熱っぽくて股間がジンジンと(うず)くけれど、かまってはいられない。 「あれ、どうしたの、マキトくん。まだ面接は終わってないよ」 「帰るんだよ! ヒロのをフェラしろだなんて……どう考えたって、おかしいだろ!」 「ちょっと待てよ、マキ」  紘行に肩をつかまれ、引き留められた。 「ここまできといてやめるのか? 恥のかき(ぞん)じゃないか。最後までやり抜いて元を取ろうぜ」  紘行はそう言うと、カオルのほうを見た。 「別にマキトにさせなくても、俺が自分で抜けばいいんでしょ?」 「うーん、さっきまではそう思っていたんだけどね。でも、どうしようかなあ……マキトくんのも、また息を吹き返してきたみたいだし」 「……え?」  真希人は自分の股間を見おろした。  みごとに勃起している。どうりで(うず)くはずだ。 「さっき出したばっかりなのに……なんで……」  まさか、紘行の裸を見て、興奮したのだろうか? (そんなこと、あり得ない! おれはただの一度も、ヒロをそんな眼で見たことはない!)  それに、この身体の熱っぽさ、股間の疼き方は普通じゃない。何か変な、興奮剤みたいなものを飲まされたのかもしれなかった。 (まさか、さっきの紅茶に……? だとしたら……。何もかもが変だ! こいつら、みんな狂ってる!)  逃げようとして身体をよじったとき、またしても紘行にがっちりと肩をつかまれた。 「いいから、じっとしてろ」  有無を言わせない強い口調で命じられ、真希人は一瞬、固まってしまう。 「あ……っ!」  いきなり生温かく湿った感触に包まれ、真希人は声をあげた。  しゃがんだ紘行が真希人のペニスに手を添え、ずっぽりと亀頭を呑み込んだ。  ねっとりとした口内粘膜が肉茎(にくけい)にまとわりつく。 「……なっ、なにやってんだよ、ヒロ! は、離せ……!」  整った顔を(ゆが)めた真希人は、紘行の頭をつかんで引き()がそうとした。  手に力を込めると、紘行も負けじと腰にしがみついてきて、さらに深く真希人の分身を(くわ)え込む。 「ヒ、ヒロ……やめろって……!」  全身の血液が、一気に股間に流れ込んできた。  紘行の口の中で、自分のペニスがむくむくと不規則に(うごめ)いているのを感じる。  身体中が熱くなり、舌で愛撫されている真希人の肉棒は、ますます大きく、硬くなっていった。 「……うう、くっ……」  鈴口や亀頭の下にあるくびれ、さらに(くき)の裏筋へと、紘行の舌が這い回り、絡みついた。  そうしながら、片手は肉棒の根元を指先でつかみ、上下に軽くしごきあげている。 (……あ、ああっ! すごい……すごく気持ちいいっ! ヒロが……紘行が、おれのチ○コを舐めてるなんて……信じられない……)  鳥肌が立つような快感が股間から這いあがってくる。  低い(うめ)きを()らしながら、真希人は背筋をのけ反らせた。もはや、紘行から受けるフェラチオを拒む意志など失われてしまっている。 「……ああっ、いい……! いいよ、気持ちいい……っ!」  とうとう、快楽にねじ伏せられて声が漏れた。 「もっと」とねだるように、真希人の腰はいやらしい動きをする。  紘行は真希人の肉棒をつかみ、今度は横笛を吹くようにチュパチュパと吸い、しゃぶった。  やわやわと甘噛(あまが)みされる感触がたまらない。 「ねえ、マキトくん。気持ちよさそうだけど、このままじゃヒロくんがかわいそうじゃない? ほら、彼、触ってほしくてパンパンになってる」  あまりの快感にぼんやりしてきた真希人の頭を()ますように、カオルが話しかけた。  快楽に(にご)った眼で見おろすと、しゃがんで奉仕している紘行の股間は今にも暴発しそうな様相(ようそう)を帯びている。 「それにしてもさ、ヒロくんて男を愛撫するの、慣れてそうだよね。経験あるの?」  カオルが近づいてきて、ペニスを咥えている紘行の頭を撫でる。  口いっぱいに真希人を頬張(ほおば)っている彼は何も言えず、黙ってカオルを見あげた。 (え……? ヒロが、男と? 男と寝たことがあるってこと? まさか、そんな……)  真希人は必死で否定しようとした。  四歳の頃から知っている紘行が、男好きだなんて、男と寝てるなんて、認めたくない。  でも――。 (こいつ……フェラ、上手(うま)すぎる……) 「……あ、ダメ……出そう……っ」  迫ってくる絶頂感に、真希人は(あご)をくっと持ちあげ、紘行の髪を握り締める。 「ねえ、マキトくん。ヒロくんはマキトくんが大好きみたいだよ。自分だけ楽しんでないで、ヒロくんにも楽しんでもらおうよ? ……アキラくん、ちょっと手伝って」  カオルがアキラを呼ぶ。 「ヒロくん、お楽しみのところ悪いけど、ちょっと横になってくれる?」 「あ……」  アキラは紘行を真希人の股間から引き離した。  膨張しきったベニスが、「びちゃっ」と音を立てて口から吐き出される。  唇をてらてらと光らせ、(あふ)れた唾液を(あご)に伝わせている紘行はひどく淫猥(いんわい)で、真希人は背筋がぞくりとするのを感じた。  アキラは紘行の脇の下を抱えて後ろに引きずり、床の上に転がした。 「マキトくんはこっちだよ」  カオルに誘導され、真希人は横たわった紘行の頭の側に立たされた。  身体を動かすたびに、はしたなく屹立(きつりつ)した性器が前後左右に揺れる。 「さあ、ヒロくんの顔を(また)いで」 「え?」  空耳かと疑った。

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