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淫らな面接 (4)
「ええ?」「はあ?」
思いもよらない要求をさらりと出され、二人の口はぽかんと開いたままだ。
「だって、もう顔は見たし、おバカさんじゃないことも分かったし。あと興味があるのは、きみたちの身体。大人の社交場で仕事をするわけだから、そこは外せないからね」
「カ、カラダ……」
あまりにもあけすけな言い方に、聞いている真希人のほうが恥ずかしくなった。
「あの、脱ぐって……ここで、ですか?」
尋ねる紘行も戸惑 っているようだ。
「もちろん。自分一人で脱げないのなら、さっきの彼に手伝ってもらうけど。アキラくん、いいかな?」
「はい」
お茶を出してくれた彼が返事をする。
「この子たち、自分で脱ぐのが恥ずかしいんだって。お付き合いしてあげてくれる?」
「わかりました、カオルさん」
アキラくんと呼ばれた彼は頷くと、紺色のロングカーディガンを脱いだ。さらに下に着ていた半袖のボーダーTシャツも、あっさりと脱ぎ捨てる。
「え? ち、ちょっ……!」
驚き、戸惑う真希人たちのことなど気にもせず、アキラはモカシンを脱ぎ、チノパンに手をかけ、あっという間にボクサーショーツ一枚になった。
本当はあの黒いドレスの女性がサクラなのかどうかを訊 きたかったのに、それどころではなくなってしまった。
真希人がおろおろしている間に、アキラはさっさとショーツを脱ぎ、一糸纏 わぬ全裸になっている。
(うわ……)
別に男の裸なんか見たくもないのに、自然と眼が吸い寄せられる。
そのくらい、アキラの身体は均整がとれていて綺麗だった。
(……この人……チ○コ、でかい……え? なんだ、あれ?)
アキラの亀頭の先に、小さな金属が付いている。
よく見ると、一センチほどの金色の丸い輪っかに、ミニチュアサイズのダイヤのリングが下がっていた。
(これって……ボディ・ピアス? 信じられない……チ○コの先に……)
真希人の頬が、かあっと熱くなる。
「はい、立って」
アキラが有無を言わさぬ強さで、真希人の腕をつかんだ。
「え? え? お、おれ?」
「そうだよ。早く立って」
アキラの前で服を脱ぐ――ということは、つまりは自分と紘行も性器の大きさを比較され、吟味 されるということなのだ。
助けを求めて、真希人は紘行を見る。
けれど、紘行も想定外の展開にパニックになっているのか、口を半開きにして真希人を見つめるだけだった。
「僕の声、聞こえなかった? 立って、って言ったんだよ」
少しきつい口調になったアキラは、ぐずぐずしている真希人を強引に立ちあがらせた。
「……やっ、いやだ……!」
抵抗する真希人に、
「恥ずかしくて脱げないんでしょ? だから、僕が手伝ってあげるんだよ」
微笑みながらアキラは言う。
大人びているが近くでよく見ると、真希人たちとほぼ同じくらいの年齢にしか見えなかった。
真希人のシャツの胸元に、アキラの手が伸びる。彼の指は細くて、爪が桜色でつやつやしていた。女の指先みたいだ。
その指が、真希人のネクタイを緩 める。
「あっ、な、何を……?」
「何をって、脱ぐのを手伝ってあげてるんじゃないか」
「いやだ、困るよ。こんなとこでいきなり裸になれ、だなんて。おれたちは、バイトの面接に来ただけで、別に――」
「そのバイトに必要だから脱げって言われてるんだろ? 女の子じゃあるまいし、バイトの内容も分かってて来てんだから、さっさと腹を決めろよ」
タメ口で急 かされ、真希人はむっとした。
たいして歳 も違わない見ず知らずのやつに、なんだってそこまで言われなくてはならないのか。
(くそっ! もういい! 帰ろう。ヒロがどうしようが、知ったことかよ!)
そう思うのに、身体が動かない。
「しようがないなぁ」
アキラが慣れた手つきで真希人のネクタイをほどいた。上着を脱がされ、黒いシャツのボタンをプチプチと外してゆく。
シャツの裾がスラックスから引き抜かれた。
胸元がはだけたシャツを強引に剥 ぎ取られ、真希人の上半身はあっという間に裸にされてしまう。
痩 せてはいるが貧弱ではなく、適度な筋肉が付いた細身の上体が晒 された。
真希人の贅肉 のない引き締まった腹や胸、背中をじっくりと見たカオルが微笑む。
「さすが元売れっ子のモデルだね。綺麗な身体をしてる」
「え――」
真希人は、背筋がぞわりとするのを感じた。
スマホから送った応募用のフォームはごく簡単なもので、詳しい経歴を書く欄 はなかったはず。
なのに、なぜ自分がモデルだったことを知っているのか。
「マキトくんて、本名の『真希人』で芸能活動してたでしょ? 今はネットがあるから、すぐに調べられるんだよ。もったいないよね。なんでやめちゃったの?」
「それは……いろいろあって……」
話したくない。真希人にとっては黒 歴史だ。
世間は飽きっぽいから、すぐに忘れ去られると思っていたのに、いまだに亡霊みたいにくっついてくる。
(あ……)
カオルの執拗 な視線を浴びて、真希人は全身が熱くなるのを感じた。
(うそだ……おれ、興奮してる……?)
その証拠に、桃色の小さな乳首が固くしこっている。
(カオルさんが……見てる……み、見られてる……恥ずかしい……のに……)
状況に逆らわなくてはと思うのに、自分でもよく分からない淫らな期待感が、真希人を押しとどめていた。
アキラは中腰になると、ぼんやりと立ち尽くす真希人のスラックスのベルトを外し、ファスナーを下ろした。
そのままウエスト部分がはだけたスラックスを一気に引きおろす。
「うわっ!」
思わず声が出た。
今や真希人の下半身を覆っているのは、黒いブリーフ一枚だけだった。
幸いなことに、ブリーフの前部分は乳首のように反応せず、怯えたように萎縮 している。
「へえ、マキトくんはブリーフ派なんだ。今どき珍しいね」
カオルの声に、また頬が熱くなる。
アキラの、萎 えていても立派なモノが視野に入り、嫌でも劣等感を刺激された。
「あれ? なんだ、緊張してるの?」
バカにしたように言ったアキラは、ブリーフの中で縮こまっている真希人のペニスを指でつつく。
「わっ、わっ、やめろ!」
反射的に腰を引くが、アキラの手はしっかりと真希人自身をとらえてしまった。
「うわ、新鮮な反応。可愛 いね」
アキラは嬉しそうにブリーフ越しにまさぐってきた。
力なくうなだれた肉茎の感触を楽しむかのように、彼の指はなめらかに蠢 く。
「ちょっ……やっ、やめろって……!」
抵抗しながらも、真希人は戸惑っていた。
よく知らない男に性器を揉まれているというのに、それほど嫌悪を感じないのだ。
「ちょっと、アキラくん。きみが楽しんでても仕方ないだろ?」
カオルの咎 める声がした。
アキラは「すみません」と素直に謝 ると、真希人のブリーフに手をかける。
「あっ、それはっ……!」
押しとどめようと伸ばした真希人の手より、アキラのほうが一瞬だけ速かった。
一気に膝下まで引きおろされる。
「やっ……!」
ブリーフから飛び出した、ぐにゃりとした情けないペニスを、真希人は反射的に手で覆 い隠 した。
「ダメだよ、隠しちゃ。ちゃんとカオルさんに見せないとね」
幼児をなだめるような口調でアキラは言い、真希人の手首をつかんで剥 がそうとする。
「いやだっ! やめろっ! ひ、人前でチ○コを見せるなんて、そんなこと……!」
「――あのさ、マキトくん。きみ、ここに何しに来たわけ?」
アキラの声のトーンが変わった。
「これは遊びじゃない、仕事なんだ。その覚悟ができないのなら、きみには無理。さっさと帰ったほうがいいよ」
黒目勝 ちのアキラの眼が、真希人を見据える。
唇を噛みしめて黙っていると、「はあー」と小馬鹿 にしたような溜め息をつかれて、頭がかっとなった。
(ちくしょう……!)
――こんなやつに言われたくない。バカにされたくない。
真希人はアキラの手を払いのけると、下半身を誇示するように両手を腰の後ろで組んだ。
アキラほどではないが、綺麗なピンク色の、平均よりは大きな性器があらわになる。
「うーん……これじゃあ本当の大きさがわからないな。アキラくん、悪いけど、もうちょっと頑張ってくれる?」
「はい、わかりました。カオルさん」
返事をしたアキラは素早く正面に回り込み、ひざまずいた。
うなだれている真希人のペニスを指で持ちあげ、先端をぱくりと咥 える。
「うわあっ! 何するんだっ!」
腰を引こうとするが、臀部 をカオルの両手でガッチリとつかまれて身動きできなかった。
細身の身体に似合わず、力が強い。
真希人のペニスはアキラに根元まで呑み込まれ、吸いあげられながらゆっくりと吐き出された。
亀頭の割れ目に舌の先を入れられ、くにゅくにゅと嬲 られる。
「うう……っ!」
恥ずかしさと気持ちよさに、真希人は身体を揺すって身悶 えた。
(うそ……嘘だろ? 男だぞ? 男にチ○コ舐められて、気持ちよくなってるなんて……!)
紘行とカオルの眼の前で、見ず知らずの男にフェラチオされてるなんて、辱 め以外の何ものでもない。
羞恥に喘 ぐ真希人の思いとは裏腹に、ペニスはヒクヒクしながら血液を漲 らせ、膨張していく。
亀頭から唇を離したアキラが、すっかり勃起して上を向いた真希人の肉茎に鼻を近づけた。
「うわあ! なんか、すごいエッチな匂いがする」
亀頭の裂け目から、じわっと透明な先走り液が滲 んでいた。
「はは、男にオチ○チン舐められてガマン汁こぼしてるって、キミ、どんだけ変態なの?」
嘲笑しながら、アキラはペニスの先端を鼻先ぎりぎりに近づけ、「ふうっ」と息を吹きかけた。
「うわっ! やめて!」
ぴゅく、ぴゅくんと、真希人の肉茎は妖しくわななき、凄まじい勢いでそそり勃 つ。
それを見たアキラは唇から舌先を出し、ペロペロと亀頭を舐め回した。ふたたび、ぱっくりと口に含んで音を立てながら吸いあげ、舌でしごく。
「あっ、ダメッ! ダメだよ! 出ちゃう!」
いきなり、強烈な射精感がやってきた。
真希人は反射的にアキラの頭をつかむと、力まかせに引き剥がした。
と、ほぼ同時に、膨 れあがった亀頭の先っぽから白濁 した粘液が噴き出す。真希人の肉棒は上下に痙攣 しながら青臭い樹液を吐き出し、アキラの顔や胸に浴びせかけた。
「うわあ、すごい! いっぱい出てくる!」
アキラは動じる様子もなく、喜々として精液のシャワーを浴びている。
「ああ……出た……出しちゃった……」
真希人は呆けたようにつぶやき、床の上にへたり込んだ。
瀟洒 な部屋にはそぐわない、鼻をつく生臭 い臭気があたりに漂う。
「すごい、いっぱい出たねぇ」
アキラは顔に散った精液を拭 い、指に付着したそれを楽しそうに舐めている。
こうなると、もう、どちらが変態なのか分からなかった。
「わあ、すごい量のザーメンだねえ、マキト。若い男の子の精液を浴びるのが好きって人、割といるから、喜ばれるかもしれないよ。ペニスの大きさも合格。だけど早漏 気味なのは残念だから、少しトレーニングしたほうがいいね」
脱力して床に座り込んでしまった真希人は、ぼんやりとカオルの声を聞いていた。
「よし。じゃ次はヒロくんの番だね。あれ?」
カオルが眼を見張った。
紘行の股間がもっこりと盛りあがっているのが、真希人の位置からでも見えた。
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