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淫らな面接 (7)
「凄いな。アナル子宮イキなんて、なかなか経験できないんだよ。ヒロくんの、大きいからS字結腸まで届くんだね。貴重な人材だなあ」
そう言うカオルの隣りにいるアキラは、まだ興奮が治まらないのか、頬を上気させ、とろんとした眼をしていた。
シャワーを浴び、身支度を調えた真希人と紘行は、面接に来たときとおなじように革張りのソファに並んで座っている。
「あの……」
声を出すと、カオルがわずかに首を傾 げて真希人を見る。その様子が何だか可愛く見えて、少し焦ってしまった。
「……あの、アナル子宮イキって、なんなんですか?」
「くくっ」とカオルが笑う。
「マキトくん、スマホ、持ってるよね。ググッてみて」
真希人は素直にスマホを立ち上げ、検索してみる。
そこには、驚愕する内容が書かれてあった。
【S字結腸は、直腸と大腸のあいだにある折れ曲がった部分です。アナルから20cmほどの距離にあります】
【受ける側は前立腺を責められるだけでも凄いのに、更に奥まで突かれて、S字結腸を亀頭でこじあけられてしまうと、それこそ天にも昇るような、たまらない刺激を感じてしまう。奥までズップリ届くモノでここを開発されてしまうと、もう際限なくメスイキし続けてしまう程に凄まじい】
【つまり、受け側がS字結腸を開発されてしまうと、攻め側は受けの腸襞で締め付けられ、扱 かれた上、ペニスの先に子宮口で吸い付かれてるような感覚でジュッパジュッパされ、そして射精に至る。
受け側は攻めのペニスで前立腺を責められた上、一番深くてズンと来る奥の部分を亀頭全体で舐め回されて連続メスイキ絶頂!!……というワケで】
(嘘だろ……)
真希人が口を半開きにして液晶画面を見つめるあいだ、カオルの押し殺した笑いが続いていた。
「人間の身体って神秘的でしょ? まるで海みたいに、限りなく広くて深いんだよ。これからしっかり勉強してね、マキトくん」
◆◆◆ ◆◆◆
カオルから渡された封筒の中には、指が切れそうな新札で五万円が入っていた。
「ごくろうさま。これ、今日の交通費と日当 分。じゃ明日の最終面接、よろしくね」
面接の日当と交通費にしては法外な金額だった。
なんだか売春をしてしまったような気分になり、真希人の胸には、もやもやした罪悪感が湧いてくる。
ここで仕事をするたびに、おなじような思いをすることになるのだ。そのことを考えると、ため息が出そうになった。
そのうち、馴れてしまうのだろうか?
馴れてしまっては、いけないような気がするけれど――。
最終面接は明日、日曜日の午前十一時からだった。
昼食をとりながらの面談になるらしい。
(明日は、まともな面接っぽいな……まさか、飯 を食いながら変なことをするとは思えないし……)
真希人は少しほっとした。
ほっとしながら、明日もまた、ここに来るつもりになっている自分に気付き、何とも言えない嫌な気分になる。
それ以上に、真希人の心中には消えないわだかまりがあった。
紘行が男との性行為に慣れているのではないか、という疑念だ。
あのフェラチオといい、後孔への刺激の仕方といい、初めてとは思えない。
もし、自分の疑いが正しかったら――。
おそらく、紘行を見る眼は変わってしまうだろう。
これまでのように幼なじみの親友として、心を許して付き合うこともできなくなるかもしれない。
真希人にはそれが分かっているだけに、安易に紘行に尋ねることができなかった。
電車に揺られている間、二人は終始無言だった。
駅の改札を出て別れる寸前に、真希人は口を開く。
「なあ、ヒロ。明日も……行くのか?」
紘行は真剣な顔で頷 いた。
「当たり前だろ。あんな、えげつないことをさせられたんだぞ。このまま尻尾 を巻いて逃げるなんて癪 だろうが? しっかり元を取らなきゃな」
「でも……この先、もっとえげつないこと、させられるのかもしれないだろう? 五万円もらったし、もうやめといたほうがよくね?」
「もっとえげつないことをされたって、そのときはそのときさ」
紘行の真剣な表情は崩れなかった。彼は本気だ。
「なんだかんだ言っても、俺は興味があるんだ。これから先、いったいどんなことが起きるのか……。こんな貴重な体験、金を積んだって簡単にできるもんじゃないだろ。むざむざ捨てるなんて、もったいないじゃないか。おまえもそう思わないか?」
なんとも逞 しい正論に、真希人は混乱しながらも同意するしかなかった。
◆◆◆ ◆◆◆
帰宅した真希人は自分の部屋に入ると、そのままベッドに寝転んだ。
現実感がない。
いまだに夢を見ているみたいだ。
(なんで断らなかったんだろ? いくらヒロに強引に誘われたからって、あんな常識外れの、いやらしいこと……明日もまた、させられるかもしれないのに……)
けれど、あのときの興奮――。
紘行にフェラされたり、尻に巨根を呑み込んだアキラの痴態 ――。
あれは、一生忘れられないと思う。
もしかしたら、もう普通の女の子相手のノーマルなセックスでは満足できなくなるかもしれない。
真希人はベルトのバックルを外し、スラックスを緩 めた。
ブリーフの中に手を入れ、ペニスではなく、後ろの蕾 に触れてみる。
紘行に指を入れられた場所だ。
(……ここ、排泄 するための場所なのに……なんで、あんなに気持ちよかったんだろ?)
肛門の少し奥に前立腺という、『男のGスポット』と呼ばれる快感スポットがあることは知っていた。
そこを刺激してもらえる風俗店や、自分で使える器具もあって、結構人気があるらしいということも。
けれど場所が場所だけに、わざわざ自分で開発しようとは考えたこともない。
(でも、あんなに気持ちいいなんて……知らなかった……)
紘行の指の感触が、まだ秘孔に残っている。
彼の指は的確に真希人の性感帯を探りあて、絶妙のリズムや力加減で刺激してきた。
たぶん、誰かに同じようにしてもらったり、自分で刺激したことが何度もあるに違いない。
なんだか、また男として紘行に負けてしまったような気がした。
生まれや育ち、体格、能力、おまけに性器の大きさ……ただでさえ、かなわないと思うことがてんこ盛りなのに。
真希人の指は、さっきから後孔の周囲をぐるぐると撫で回している。
(また、あんな風にされたい……掻き回されたい……)
思い出しながら指を入れようとすると、意識してもいないのに襞 がきゅっと窄 まった。
窄まったヒダヒダはぽっこりと盛りあがっていて、子供のころ海岸の潮だまりで見かけた小さなイソギンチャクを連想させる。
ヒダヒダに触れていると、何だかひどく淫らな、いけないことをしているような気分になった。
指を入れて、紘行にされたみたいに掻き回してみたいような気もするし、そんなことをするべきではないような気もする。
(興味はあるけど……でも、男どうしでするのは、ちょっとな……。おれ、別にゲイじゃないし……)
そう思う先から尻の奥がむずむずして、股間が硬くなってきた。
アキラがしていたみたいに、男のモノを挿入したらどんな感じなのだろう? あんなに激しく腰を振り、淫らに叫ぶほど気持ちがいいのだろうか――?
一度試してみたいような気もする。
でも、怖い。
病 みつきになってしまったら、どうすればいいのだろう?
ただ尻を掘ってもらうために、『男のGスポット』やらを刺激してもらうために、誰でもいいから満たしてくれる男を求めて徘徊 している未来の自分を想像して、ぞっとした。
(やっぱり、こんな場所、触っちゃダメだ……)
真希人は後孔に触れていた右手を外し、タオルケットの外に置いて眼を閉じた。
つい数時間前に南青山ヒルズ・タワーで体験したあれやこれやが、鮮明に脳裏に浮かんでは消える。
カオルの美しい顔と声。
激しく腰を振って叫ぶアキラの嬌態 。
紘行の、勃起した巨大なペニス。そして、真希人のペニスを口に含んだ彼の表情。
「ああ……」
我慢できなくなってペニスを握りしめた真希人は、その記憶をオカズにしてオナニーをはじめた。
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