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第26話
次の朝、旭葵が大輝たちとしゃべっていると、隼人が教室に入ってきた。
「おはよう、旭葵」
「あ、おはよう隼人」
大輝と湊は顔を見合わせる。
「隼人ってめっちゃいい奴だった」
旭葵は驚いている大輝と湊に、昨日浜辺で隼人と会ったことを話した。
「なぁ、なぁ、昨日教えてもらった相手を動けなくする技なんだけどさ」
そこへ隼人がやって来て2人は昨日のおさらいを始めた。そのうちに大輝と湊も加わってふざけ合いになる。
「痛てててて」
旭葵が隼人の腕をひねり上げる。
「どうだギブアップ?」
「まさか」
「10! 9! 8!」
「え、なんでカウントダウン?」
「10秒で技から抜けられなかったらアイス奢れ」
「マジか、じゃあその逆に技が解けたらラーメンな」
「よっしゃ」
2人のやり取りを見た大輝が面白がってカウントを手伝い始めた。
「7! 6!」
「旭葵そのままいけ」
湊が旭葵を応援する。それを見ていたクラスの女子たちが隼人を応援し始めた。
「隼人君頑張って!」
「5! 4!」
「くっそう、絶対ラーメン」
隼人は懸命に体をよじる。それを見てヘヘッと笑う旭葵はまるで自分の勝ちを確信しているかのようだ。
「3! 2!」
「アイスもらいだな」
「アサ」
一生が教室の外から旭葵を呼んだ。
「一生」
旭葵は勝負中なのも忘れ、ぱっと手を離すと一生の方へと駆け寄った。
「俺の鞄にアサの英語の教科書入ってた。確か1限目英語って言ってただろ」
「あれ! ホントだ! サンキュー一生!」
隼人は旭葵に掴まれていた手首をさすりながら、隣にいる湊に尋ねる。
「あの2人ってなんであんなに仲いいの? あいつだけ旭葵のことをアサって呼ぶんだな」
「旭葵は一生の姫だったからなぁ。キングの特権っていうやつ?」
「なにそれ」
湊は隼人に戦国合戦の話をして聞かせる。
「それにしても、あんなに女と間違われるのを嫌がる旭葵がよく姫になることを承諾したな」
「一生は旭葵の特別だからじゃない? 旭葵に喧嘩で勝てるのは一生しかいないからな」
「狂犬の飼い主って感じだろ」
さっきから2人のやり取りを聞いていた大輝が、話に入ってくる。
「委員長もあいつが旭葵を手懐けてるとか言ってたけど、どちらかと言えば俺には逆に見えるけどね。それこそ大事なお姫様を守る凶暴な番犬って感じにさ」
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