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ステージを駆け巡る色とりどりのスポットライト。耳に残る甘い声と曲は、かなり大きな音でハウス中に流れている。そんな曲に合わせて踊るのは、レースが沢山使われた服を纏っている可愛いアイドル。ボルテージが高まる中、ライブはいよいよ後半戦。 そして俺の両隣には高身長のイケメン達。いやぁ、まさかイケメン侍らせてアイドルの応援する事になるとは。生きてると何があるか分からないもんだ。 なんて冗談はさておき 「…………ちょっと離れて貰って良いですか」 隣にいて応援するだけなら文句は言わないんだけど、お互い俺にぎゅうぎゅうと体を密着させてくるから、如何せんブレードが振り辛い。正直言って邪魔。 ハウス内にいる観客は多いけど、かと言ってそこまで詰める必要はない。普通に人ひとりはギリ通れる程度に隙間がある。なのにこの両隣の男達は、俺を潰したいのかと言わんばかりに寄せてくる。 遡る事5分前、海星を連れて泡沫さんと合流。途中で見えなくなったから、泡沫さんはかなり心配していたらしく、そこは本当に申し訳ないと俺は謝る。 海星は泡沫さんを見るなり、あの日突っかかってきた人だと気付いた途端顔を顰めるが、泡沫さんは海星に目を合わせて、疑った事に対して真っ直ぐに謝ってくれた。 泡沫さんの隣にいた浬君は、海星に何やら熱い視線を向けていた。多分この子、男女問わず面食いなんだろうな。 一件落着した途端、ナイスタイミングでアイドル達がステージに立つ。それと同時にハウスのボルテージは上がった。 さて、謝った後は皆で仲良くアイドルを応援しよう!なんて俺の思惑は海星の一声で崩れ去る。 「水科が夢中になってる時の顔、俺すきかも。なんか腰にクる」 とんでもセクハラ発言が曲と同時に聞こえてしまい、俺は固まる。隣にいた泡沫さんも思わず目を見開いて海星を見る。浬君には聞こえてなかったようだが、泡沫さんの行動に気付いて俺の方を見る。 そこからはもう凄かった。すかさず俺と場所を変わろうと泡沫さんが動くが、海星は俺にひっついてくる。それからぎゅうぎゅうと押し合って今に至るってワケ。いい加減にしないと潰れて煎餅になっちゃうぞ。 正直今はゆらたそを全力で応援したいので、セクハラに対する嫌悪感とか危機感は全く感じる事ができない……というより、興味がなかった。ライブが終わってからそういう事は解決していこう。頼むから今だけは応援させてくれ。 _____________________ ライブが終わり物販前。結果、推しの力は偉大だった。ゆらたそがセンターになった途端コロッと魅了された俺は、隣の湿度高めな視線もガン無視できる程夢中になれた。 「はぁ、新衣装可愛かった……」 あまりの可愛さにため息が出る。隣でチェキポーズを考えている浬君は、夢見心地な俺を見るなり小さな声で「水科やばぁ……」と呟いていた。 泡沫さんと海星は、少し離れたところでお互い見つめ合っている。それを見た女性ファンは少し頬を染めていた。そうだよな、女の子なら長身イケメン二人が見つめ合ってたらドキッとするよな。でもあれは多分、メンチ切ってるだけだと思う。とことん性格合わないんだろうな。 「浬君、物販終わったらこっそり抜け出そう」 隣にいる浬君を見て、試しに提案してみる。どうせ断られるだろうけど、二人のバチった空気に居た堪れないんだ。 しかし俺の言葉を聞いた後、浬君の顔は少しずつ赤く染まっていき「ぇ、何それ。逃避行的なやつ……うぅ」と、俺の想像していたものと全く違う返事が来た。どう変換したら逃避行になるんだろう。若い子の感性って難しいな……

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