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第40話 溶け合いたいから★

 平日の昼下がり、自然光が入る部屋。祐輔はカーテンをそっと閉めると、明るかった部屋が少し暗くなった。  暖房を効かせた部屋も部屋着では少し寒く、祐輔は肩に掛けたタオルで濡れた頭を拭く。遅れて出てきた蓮香が、早速祐輔の後ろから抱きついてきて、頭の匂いをクンクンと嗅いできた。 「こら、髪の毛濡れてる。ちゃんと拭かないと風邪ひくぞ?」  蓮香の髪から滴り落ちた水がヒヤリとして、祐輔は振り返る。彼の髪を自分が持っていたタオルで、ガシガシと拭くと、もっと優しくしてください、とされるがままじっとしている蓮香がかわいい。  末っ子だからなのか、臆面もなく甘えられるのは蓮香のかわいいところだと思う。拭き終わって、乱れた髪を直してやると、彼は笑っていた。  目元はまだ少し腫れているけれど、綺麗なアーモンド型の目はじっとこちらを見ている。その目が閉じられ、顔が近付いた。  祐輔は不覚にも、その顔がカッコイイと思ってドキッとしてしまう。目を閉じると予想した通り、厚めの唇が優しく触れた。  ちゅ、と柔らかなリップ音が鳴り、耳をくすぐる。軽く唇を合わせたまま、蓮香は囁いた。 「祐輔さんの唇、柔らかい……」  好きです、ともう一度吸われ、頬を両手で撫でられる。くちゅくちゅとキスを交わしながら耳をくすぐられ、祐輔は肩を竦めた。  俺も好き、と心の中で呟くと、蓮香はキスを止めて鼻の頭が付く距離で見つめてくる。その目に少し涙が浮かんでいて、泣き虫だな、と頭を撫でた。 「貴徳……俺もお前が好きだよ。大丈夫、俺は今のところ病気じゃないし、どこにも行かないから」 「……はい……っ」  きちんと言葉にして伝えることがどれだけ大切なことなのか、と祐輔は思う。それが相手にとって勇気や安心に繋がるなら、積極的に言おう、とも。  最愛のひとの最期を看取れなかった後悔から、蓮香は祐輔を失うことを、極端に不安がってしまっている。本来の甘えん坊な性格もあって、執着として出てしまっているのは、彼の本当の姿ではないのだろう。 「好きだよ。お前がかわいい。だから、本気で俺を抱き潰してくれ。……全部……お前の悲しみも怒りも、好意も、俺が受け止めてやる」  だから遠慮しないで来い、と言うと、蓮香は噛み付くようにキスをしてきた。 「祐輔さん、……祐輔さん祐輔さん……っ」 「ん、んん……っ」  唇が、痛みに変わる直前の力で噛まれる。遠慮なく唇を舌でこじ開けられ、上顎を撫でられた。感情をぶつけるように舌を絡ませ、震えた肩を咎めるように顔を上げさせられる。  それでいい、と祐輔は全て受け入れた。当時吐き出すことのできなかったものを、尽きるまで、何度でも出せ、と蓮香の首に腕を回す。 「……っはぁ! 祐輔さんっ」  ガシッとキツく抱きしめられ、祐輔は宥めるように彼の後頭部を撫でた。俺は大丈夫だと、彼が納得するまで言い続ける。 「大事にしたいのに……酷くしそうで……! そんな自分が嫌です!」 「大丈夫だ貴徳。俺は壊れたりしない」 「ずっとそばにいてくれますか?」 「いる。お前が嫌だって言ってもいてやる」  泣き足りないなら泣け、叫び足りないなら叫べ、愛し足りないなら俺を愛せ、祐輔も心からそう思い、蓮香に囁いた。 「俺は美嘉に……甘えて欲しかった……!」  そう言って、また祐輔の唇を塞ぐ。  そうだな、と思いながら、祐輔は応えるように彼の唇を吸い上げた。舌が再び絡み合い、唾液が混ざり合い、感情も混ざり合う。大丈夫、その深い傷は必ずよくなるから。そう思って蓮香の唇を舐めた。  柳が手紙で残した通り、彼女が蓮香の中で思い出になった頃も、祐輔は彼のそばにいたいと思う。 「……っ、祐輔さんっ」 「うわ……っ」  突然、蓮香が肩を押しベッドに倒れ込んだ。危ないだろと睨むもすぐに唇を塞がれて、快感の波に攫われていく。 「んっ……んふ……、ぁ……っ」  激しくキスを交わしながら、蓮香は祐輔の顎まで舐めていた。同時に服の中に手が忍び込んできて、思わず漏れた吐息が甘くなる。 「んん……っ」  服の中に入った手が、祐輔の胸の粒に触れた。途端に背筋に電流が走り、背中を浮かせる。しかし蓮香は構わずそこを指で撫で続け、キスどころじゃなくなる。 「あ……っ」  ゾクゾクして、一気に顔が熱くなった。やってくる快感をシーツを掴んで耐えていると、蓮香がじっと顔を見ていることに気付く。 「祐輔さん、ほんとかわいい……」 「ふ……、ん……っ」  蓮香の少し掠れた声にも祐輔は反応し、息を詰めた。  知ってますか? と蓮香は囁く。 「祐輔さん、かわいいって言うと、後ろがきゅっ、て締まるんです。それ想像しただけでほら……堪んない」 「ああ……っ」  首筋を舐められながら胸も弄られ、その上彼は体重をかけてきた。脚の根元にある確かな存在感に、祐輔はぶるりと身体を震わせる。  蓮香の一言で、自分の身体がそんな風に反応しているなんて知らなかった。自分が感じている姿を見て、彼も興奮してくれているのかと思うと、嬉しい。  嬉しくて、一気にゾクゾクが増す。 「あ、貴徳……っ、いく、いくいくいく……っ!」  そう宣言すると、祐輔はあっという間に頂点へ達した。ダメ押しのように胸の突起を捏ねられ、頭が真っ白になる。 「んんんんーっ!」  こともあろうに、蓮香はそんな祐輔の唇を塞いできて、苦しくなった。でもその苦しさがまた性感を高め、祐輔はさらに深いオーガズムに入る。 「──はぁっ! た、貴徳……っ!」  全身の痙攣が止まったあと、蓮香の目は細められていた。しかしそれは優しい眼差しではなく、加虐心を湛えた、強いものだ。  祐輔はそんな蓮香の視線にもゾクリとする。  彼は一度祐輔の上で膝立ちになり、上の服を脱いだ。これから抱かれるのだ、と思ったら呼吸が自然と上がる。祐輔は蓮香の下から抜け出し、自分も服をすべて脱ぐと、ベッドの上で尻を上げた状態で四つん這いになる。 「……いい子ですね、祐輔さん」  クスクスと笑う彼の声がくすぐったい。祐輔は片手で自ら尻の肉を開き、蓮香しか知らない蕾を見せつける。 「貴徳、挿れて……」  もう、すっかりここも蓮香の形に馴染んでしまった。早く繋がって溶け合いたい。そう思って、祐輔は尻をくすぐるように撫でてきた蓮香を見る。 「エロい祐輔さん、大好きですよ」  そう言って笑った蓮香はつぷ、と指を挿れてきた。

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