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第1話 R18

 「あ、じゃぁ演者さん来るまでシャワー浴びて、歯とか磨いてもらってても良いですか?」  「……………、はぁ……」  …………………。  どうしてこうなった?どうして?  俺、林昂輝はグルグルとこうなった経緯を思い返している。  事の発端は一週間前、仕事が終わって妻の待っている家へと帰ると、家財道具は一切合切無くなっていて、フローリングの床に一枚の離婚届と、手紙。  一旦マンションの部屋から出て、本当に自分の家かと確認した後、急いでその手紙を開くと  『昂輝ヘ、  こうなってしまった事、本当にごめんなさい。私、寂しかったんです。  だから、本当に私の事を愛してくれる人のところへ行こうと思います。  離婚届を置いて行くので、サインして出して下さい』  ……………は?  寂しかった、とは?  結婚してから三年、そろそろ子供も欲しいねと言ってたんじゃないのか?  本当に私の事を愛してくれる、とは?  浮気もせずに仕事が終わったら真っ直ぐ家に帰っていたし、休日は疲れた体に鞭打って二人で出掛けたりもしてたよな?  まぁ……、夜の回数は疲れていた事もあって、減ってはいたが……、そんな事些細な事だよな?  寂しい思いも、愛して無かった態度もとってなかった筈だし、お前だって一度もそんな素振り俺に、見せてなかったじゃ無いか……。  俺はその時、人生で初めて膝から崩れ落ちるって体験をした。  高校卒業と同時に建設作業員の仕事に就いて、何年後かに事務で入社してきた妻と出逢った。  恋愛経験は少なめの俺に、年下で明るい妻の方がグイグイきてくれて、交際がスタート。付き合って一年で同棲を始めて、結婚を意識してから三年、がむしゃらに働いて結婚資金を貯めて、ゴールイン。  平凡な幸せでも、楽しく過ごしていたんじゃないのか……?  失意のどん底に突き落とされた俺は、次の日初めて仕事を休んだ。  これからどうしていけば良いのか解らなくて、ショックで回らない頭と何もしたくないという感情の狭間で、綺麗になったフローリングの床に体を預けて、その日はずっと天井を見ていたのだ。  だが人とは不思議なもので、何もしたくないと思っていても腹は減る。  近くのコンビニで弁当を買って、風呂に入って、寝て、朝日が登れば次の日からは仕事に復帰して……。何も無い家に帰るという生活を何日間か続けていた時だった。  ピンポーン。  仕事から帰って、風呂から出た時にそのインターフォンは鳴った。  あのインターフォンに出なければ、俺は無事だったのだろうか?  『はい?』  インターフォンの画像を確認せずに玄関を開けると、そこには柄の悪そうな人達が何人か立っていて  『あ、林昂輝さん?』  『そ、うですが……?』  答えた瞬間に、玄関のドアを閉めれないように相手は靴を挟んできて  『ちょっとお邪魔しても良いですかね?』  有無を言わせない迫力で、そのままグイッと玄関扉を引かれてしまえば、ドカドカと数人の男達が部屋の中へと入ってくる。  『あ?何もねぇじゃん?』  『どういう事だよッ』  『あんた、奥さんは?』  男達の後に続いて、理由も解らないまま部屋へと入っていくと、一人からそう尋ねられ  『妻は……、出ていきましたけど……』  『はぁ?マジかよ!』  『クソッ、逃げられたッ!』  憤る男達の言葉に、妻は何をしてしまったんだという不安に、ハラハラと落ち着きなくしている俺に  『あんた旦那さんだよね?』  妻は?と聞いてきた一人の男が、再度私にそう尋ねてきたので、コクリと首を上下に振ると  『座って、くれるか?』  と、床を指差す。  その威圧的な雰囲気に、俺はゴクリと喉を鳴らして床に座ると、男達も並んで俺の正面に尻を着ける。  『奥さん、どこ行ったか知ってるか?』  『いえ……帰ってきたら家がこの状態で……』  『そうか……、災難だったな。けど、こっちも災難でね……』  静かにそう呟いて、男は着ているジャケットの内ポケットから紙を一枚取り出すと、床の上に広げ  『あんたの奥さんが、あんた名義で我社から金、借りてるんだわ』  『えッ!?』  男の一言に、俺は広げられた紙を掴むと、それを食い入るように見詰める。  『多分、あんたが知らない間に借りた金だ。まずは借りた奥さんと話をしたかったが……居ないんじゃ名義人のあんたから回収するしか方法が無くなる』  少し言いづらそうに整えた髭を触りながら、正面の男が呟いている。  だが俺は今、それどころでは無い。  紙に書かれている借用書。つらつらと説明書きの後に、日付と金額に俺の名前と印鑑まで押してあって、俺は目を疑った。  ……………、嘘、だろ……?さ、三百万……。  その紙を掴んで言葉を失った俺に  『まぁ……知らなかったよな。けどこっちも仕事でやってる事なんでな……返してもらいたい』  『む、……ッ無理ですよ……こんな大金……』  『あ゛?』  『オイ、止めろ』  無理だと言った俺に、傍らの男が凄んでくるが、それを止めて  『なぁ、貯金は?』  『は、い?』  『あんた、貯金はどれ位ある?』  『あ………、それも……解りません。妻に全部お金の管理は……任せてまして……』  『あ〜~……、そうか。明日にでも確認できるか?』  俺の返事に男はガシガシと髪を掻きながらそう言ってくるが、その態度は多分、俺の名義で作っていた夫婦の貯金も、妻に全額引き下ろされていると言っているようで……。  それが雰囲気から解って、すぅッと顔から血の気が引く俺に  『名刺、置いて行く。明日確認したら一度連絡をくれるか?』  スッ。と目の前に出された名刺は、金融会社の名前と、谷垣浩一と書かれた名前。多分目の前の男の名前だ。その下には電話番号が書かれている。  『わ、かりました……』  力無く答えた俺に、傍らに座っていた男が一言  『逃げようとしても無駄だからな、キッチリ監視してるからよ』  ピースサインを作った指を自分の両目にあてた後、俺の顔に向けて言った表情にゾッとして、コクコクと首を上下に振ると  『遅くにすまなかったな、また連絡してくれ』  と、正面の男は立ち上がり傍らにいる男達を引き連れて帰ろうとするので、俺は咄嗟に一番聞きたい事を尋ねてみる。  『あ、あのッ……妻はどうしてそちらで金を借りたのか……知ってますか?』  靴を履いて出ていこうとしていた男が、一瞬俺の方に顔を向けてフイと戻し、開いているドアから出ていき扉が閉まる瞬間  『ホスト……』  ガチャン。  耳にこびりついたフレーズが、頭の中でリピートしていた。  翌日、銀行に貯金の件で確認に行ったが、案の定金は全額引き下ろされていて……。スッカラカンになっていた。  俺は力無く昨日男が置いていった名刺の電話番号に電話をかけて、金融会社まで足を運び、その事務所で提案を受ける。  『AV出てみないか?』  と。  当初はその提案に拒否を続けているも、堅実に働いて借金を返そうにも利息はどんどん膨らんでいくと説明を受けて……。何度か出演すれば、サクサクっと返せると説得されてしまえば、それが一番良い方法なのかもと……。出演OKの書類にサインしている自分がいて……。もう、難しい事はあまり考えたく無かった。と本音を言ってしまえばそうだ。  もう、どうなっても良いと。  とことん落ちてしまって、後は這い上がるだけなんだから、何も考えずに流れに身を任せて、こんな理不尽で悲劇な事を終わらせてしまおうと……。  言ってしまえば、やけ糞だったのだ。  ………で、今俺は高級感溢れるラブホの風呂場でシャワーを浴びているワケだ。  「あのー、すみません」  どこまで綺麗に洗って良いのか解らずに、適当にいつも通りの洗い方で体にボディーソープを塗り付けていると、ガチャッと風呂場のドアが開いて、スタッフさんが声をかけてくる。  「え?あ、……はい?」  いきなり声をかけられて、動揺しながらも返事をしつつ顔を後ろヘ向けると  「えっと~、中綺麗に洗った事ありますか?」  ……………、ん?中、とは?  スタッフさんの問いかけに、返事が出来ずにいる俺に対して  「デスよね。じゃぁ、これで中も洗っといてくれます?」  と、言いながらズイっと差し出してきたのは浣腸。  「やり方、解りますよね?」  「は、ぁ……」  浣腸を受け取りながら、曖昧な返事をする俺に  「水面器にぬるま湯入れて、二、三回浣腸してもらいたいんですよ……。出てくる水が透明になるまで……」  シャワーに入る前に用を足したのに、更にこれで綺麗にするのか……。  説明してくれるスタッフさんの言葉に、無言で何度か首を縦に振っていると  「綺麗な水が出たら浣腸はもう良いんで、その後にアナル、解してた方が良いですよ……」  「え……、解す……ですか?」  「はい……、あの、初めてですよね?」  この時になって、初めてスタッフさんがコソッと小声になる。  「え?はい。初めてです……」  こんな事、経験済みなワケが無い。  何を言っているんだと、少しムッとしたが、スタッフさんの真剣な顔に素直に答えると  「だったら、絶対に少しでも解しといた方が良いですよ」  「………、どうやって、ですか……?」  解せ、解せと言われても、初めての経験。しかもアナルを解した事も無ければ、浣腸だって初体験なのだ。  ?が頭一杯に広がっている俺に  「あ、……そうですよね、すみません。先ずは穴の周りを指で優しくマッサージするように揉んで、会陰とかも優しく押すように触って下さい。その後で指を一本入れてから中を解すように動かして、最終的には二本入れてもらって、穴を横じゃなくて、縦に開くような感じで触ってもらったら良いと思います。で、最後も綺麗に……、あ、そこにあるローション使って解して下さいね。最後は綺麗にローション洗い流して下さい……では」  最後の方は早口に説明して、シャンプーとかのボトルが置いてあるところを指さして、風呂場のドアを閉めて行く。  多分、準備の合間に手順を説明してくれたのだろう。  俺は手渡された浣腸を見詰め、一度溜め息を吐き出すと、スタッフさんに言われたように水面器にぬるま湯を張っていく。  金融会社の事務所で、AV出演を決めた時に、ゲイ向けのしかも俺が受け役である事は事前に知らされていた。  AV出演を最初に聞いた時は、もしかして女優と……?なんて淡い期待が無かったワケでは無いが、事の顛末を聞いてしまえば世の中そんなに甘くないよな。と納得したのは覚えている。  男の自分が男に抱かれる。  二十九年間、女しか抱いた事が無い自分にとって、それは正に未知の領域だ。  AV出演の契約書にサインして何枚か写真を撮られた後、その日は家に帰った。すると翌日直ぐに連絡があり、日程を相談して決めて、待ち合わせの場所まで出向くと声をかけられ、機材が積まれたバンで今いるラブホまで連れてこられた。という流れだ。  金融会社の事務所で、あの男からは  『まぁ、三、四回出たら借金は無くなる』  と言われている。  その台詞にゾッとはしたものの、出演しなければ金額は膨れ上がる一方なのだから、腹を括らなきゃとサインしたのは自分だ。  ガチャッ。  スタッフさんに言われた通りの準備を済ませ、風呂場で歯磨きも終わらせて、ゲッソリしながら脱衣所に足を上げると、バスタオルとボクサーパンツ、バスローブが置いてあり俺はそれに身を包む。  案外、普通の下着を着させるんだな……。  なんて思いながら部屋へと戻ると  「あ、準備終わりました?お疲れ様です。一応林さんの衣類とかはそこのソファーに置いてるので」  先程、手順を教えてくれたスタッフさんがそう声をかけてきてくれたので、ペコリと会釈すると  「もう少し準備にかかるので、そこの水とか飲んで待っててもらえますか?」  「解りました……」  指を指してくれたのは、俺の荷物を置いてくれているソファー。その前にテーブルがあって、水やお茶などが置いてある。  俺は自分の荷物の隣に腰を下ろして、テーブルにある冷たくも無い水を手に取ると、キャップを開けてグビグビと飲んでいく。風呂場で準備していたのと緊張で、酷く喉が渇いていた。  水を飲みながら部屋の中を見渡せば、キングサイズのベッドの周りに照明機材がズラリと準備されている。その周りにも無人のカメラが何台かあり、ライトの加減とカメラ映りの調整をしているようだし、ライトとカメラの配線を何人かのスタッフさんがガムテープで絨毯に細かく留めている。  あ〜〜〜……、あの中でするのか……。勃つかな、俺……。  ギラギラに照らされ、何人も知らない人達に見られながら事に及ぶ現実に、一抹の不安が過ぎる。  「演者さん入られまーす」  「おはようございます」  「おはようございます」  部屋の中が一気にざわめき立つ雰囲気に、俺も緊張が走る。  今日、俺を抱く側の人間が部屋に入ってきたのだ。  残り少なくなった飲んでいたペットボトルをテーブルに置いて、視線を出入り口に続く通路の壁に向けると、キャップを被り長身のガタイの良い男がスッと部屋へと入ってくる。  あ、この人が……。  と、思っていると直ぐに同じ位の身長と体格の男が続き……。  ……………、マネージャー。か?  そんな事を思いジッと見ていると、後から入ってきた男が「監督」と言いながら、カメラの近くにいる人に話しかけていて、監督と言われた人は  「奈央、今日はよろしく」  なんて、声をかけるものだから、あぁ、あちらの人が今日俺を抱く側の人だったか。と納得していると  「アンタ、名前は?」  と、上から声をかけられて、俺は視線を声がした方に向ける。  そこには先に入ってきた男が、被っているキャップを脱ぎながらそう俺に尋ねてきたところで………。  何だかさっき見た顔だなと思いながら  「林昂輝……です」  ボソボソと呟くように名前を言った俺に  「昂輝、ね。俺、理央よろしく」  「は、ぁ……」  ズイと手を差し出してきたので、条件反射でその手を掴み、立ち上がったところでブンブンと無言で上下に振られる。  ……………、何でマネージャーと握手?  イヤ、そういうものなのだろうか?出演者とも挨拶するが、マネージャーも挨拶するのが、こういうところのマナーなのかな?それにしても、丁寧だな。他のスタッフさんは会釈か無視する人ばかりだったが……。  ボンヤリとそんな事を考えながら相手を見ていると  「あ、理央先に挨拶してるし。初めまして奈央です。本日は宜しくお願いします」  ニッコリと笑顔で手を差し出してくる男の顔を見て、先程握手した理央と言っていた男の顔と見比べる。  「え?………、あ、……双子……?」  理央と握手した時に、見たことあると感じたのは、監督と話をしている奈央を見た既視感かと納得する。  「です。俺達一卵性双生児なんで、そっくりでしょ?」  差し出された手を、驚きで掴み損なっていると、反対に掴まれてブンブンと振られる。  「奈央、やっぱり当たりだ。昂輝って名前らしい」  「昂輝君ね、宜しく」  ニッコリとした笑顔のままそう言われて、奈央にジッと見詰められる。  「あ、の……」  海外の人みたいな彫りの深い顔に見詰められ、俺はタジと居心地が悪くなる。  目の色素が薄い……。本当に海外の人、かな?なんて思っていると  「昂輝君、良い体してるね?趣味で鍛えてるの?」  「え?これは……仕事柄……」  「ジムのインストラクターとか?だったらどこのジムか教えて欲しいな」  「イヤ……建設業で……」  「あ、そうなんだ〜。ヘ~……」  「奈央、理央、先にシャワーと歯磨きしてきて」  自分より身長の高いガタイの良い男二人に囲まれ、質問されている時に監督が二人にそう指示を出す。  俺も平均よりは随分高い身長だし、ガタイも仕事柄良い方なんだが……。この二人には負けるか?なんて、チラリと盗み見する。  「「はーい、じゃまた後でな」でね」  ジロジロと品定めされている居心地の悪さから開放されて、小さく溜め息を吐いてから再びソファーに腰を落ち着けると、先程までベッドでカメラのアングルチェックをしていた監督が俺のソファーまで近付いてきて  「林君……、大丈夫そう?」  「え?は、はい……大丈夫です?」  何を大丈夫だと言われたのか解らずに、今のところは大丈夫なのでそう返すと  「ン〜……、まぁ二人共上手いから不安になんないでね?」  「あ、……はぁ……。二人共……、ふ、二人共ッ!?」  「あ〜……、やっぱ、説明聞いてない?」  「え?え、二人共って、さっきの双子、二人共と……ですか?」  ………、寝耳に水だ。そんな事、誰も何も言ってくれなかったじゃ無いかッ!  「そう、見たこと位あるでしょ?ウ~ンと他の作品だったらあの有名な〇〇女優とか、〇〇女優と共演してる子達だけど……」  ………、女優の方は何度もお世話になってるが……。正直男優は眼中に無いから、記憶に無い。  それが顔に出ていたのだろう。監督は苦笑いしながら  「だよね。林君ノンケだもんね……。まぁあの二人はバイだからコッチの作品にも良く出てて上手いから、ね?」  「イヤ、けど二人って俺……聞いてない……」  「何だ?揉めてんのか?」  風呂から出てきた理央が、ボクサーパンツにバスタオルだけ肩から掛けた状態で戻ってくる。  「ン〜〜?揉めてるの~?」  次いでは直ぐに奈央が同じ格好で出てくると、俺と監督を見詰めて  「もしかして、しぶられてる?」  楽しそうにズバリな事を言うものだから、コッチはどう反応して良いのか解らなくなる。  「まぁ、二人と共演するって説明を聞いてなかったみたいで、ね?」  チラリと俺の方に視線を向けながら監督が言ってくれるので、俺はコクンと首を上下に振る。すると、理央は大きく溜め息を吐き出しながら  「大丈夫だろ、相手は俺達だぜ?それにサインしたんだろうが、契約書に」  「コラ理央、言い方!」  ………ッ、契約書にサインしたのは勿論俺自身だけど、二人を相手にするとは聞いて無い。  初めてのAV出演に、二人を相手すると聞いていれば、返事は……、違ってたかも知れないだろ……。  けれど、理央の台詞に俺は一理ある事も理解しているので、何も言えないでいると、言葉使いの悪い理央を諌めていた奈央が  「昂輝君ってどういう経緯で、コレの出演って流れになった人?」  ニコニコと口角を上げているが、ズバッとプライベートな事を聞いてくる奈央に、この二人双子なだけあって似てるな……。と言えないが、心の中で呟く。  「………、借金……で」  妻の作った。とは、言えない。それは男のプライドが許さない。  「あ〜〜、そうだよね……。理央、ちょっと」  俺の言葉を聞いて、奈央が理央を顎で呼ぶ。二人は俺と監督から離れるとベッドの位置でコソコソと話し合っていて、俺は二人のうち、どちらかが諦めてくれる相談でもしてくれているのだろうかと期待する。  しばらくして再び二人がソファーのところに戻ってくると、ニコニコ顔の奈央が  「昂輝君の借金、俺達が全額肩代わりしてあげるから、今日は三人で楽しみませんか?」  なんて、提案。  「えぇッ!!?」  と、俺よりわざとらしく驚いて声を上げたのが監督だった。俺は監督の声に驚いて、逆に声を上げられず何を言っているのかと二人を見詰める。  「え?それって……、え?大丈夫なの?」  動揺しながら監督が呟くと、理央が肩に掛けているバスタオルを外しながら  「問題無い。で、借金幾らなんだ?」  「そ、そうだよ、まだ金額も聞かないうちからそれ決めちゃって良かったの?」  金額が幾らあるのか聞かない前の提案に、監督は至極真っ当な事を言って一人で、ハラハラしている。  「大丈夫ですよ監督、俺も理央もそれなりに稼いでるし。で、昂輝君幾らなの?」  笑顔を崩さない奈央の言葉に  「さ、ん百万……位……」  ボソボソと呟いた俺の台詞に、奈央と理央は顔を見合わせて  「ん、じゃぁ僕達と契約し直そうか昂輝君」  「そうと決まれば、連絡先交換するぞ」  と、俺の運命は決まったらしい。  その後はなぜか二人に主導権を握られて、トントンと話が決まっていく。  先ずは、紙とペンを持ってきた奈央が、俺の借金を二人が払う誓約書モドキみたいな簡単なやつをスラスラと書いて、二人の名前と俺の名前に続いて拇印を三人共押す。日付も忘れずに……。その次は俺が借金を返すはずの金融会社に理央が風呂場の方で連絡して、どう話を付けたのかAV出演しなくてもよくなっていた。  「と、言うわけで監督。コイツはAV出ない事になったから」  「えぇッ!?困るよ~!」  「困んねーだろ?金は俺達が払うって言ってんだからさ」  「そうは言っても、ここまで準備しちゃったしさ〜〜、僕も撮る気満々だったのに」  ……………。何だ、俺AV出なくて良くなったのか?ラ、ラッキー……。  「ん、それもそうか……じゃぁ理央撮ってもらおうよ。世間には流出しないプライベートなAVって事で、動画は俺と理央だけ持ってたら良くない?」  「奈央……、お前天才かよ……」  「それなら良いでしょ監督、綺麗に撮ってよ?」  「え?撮らせてくれるの?ウ~ン、……じゃぁ、まぁ、やっちゃう?」  「アハハッ!監督のそういうところ好きだよ~」  ………、イヤイヤイヤ、勝手に話が……。俺抜きで進んでる……。イヤ、まぁ、俺に口出しする権利は無いんだけど……。  「んじゃ昂輝、ヤろうぜ?」  話がまとまり、理央がそう言いながら俺に手を差し出す。  「楽しもうね、昂輝君」  首を傾げながらとびきりの笑顔で奈央もそう言って、ベッドの方にスタスタと歩き出したので、俺はゴクリッと喉を鳴らして差し出された理央の手を摑む。  ………。でもこれって、凄く良い条件じゃ無いか……?今日、この二人に抱かれればこの一回だけで終わる。しかも俺が男に抱かれている動画は世間に流出しない。見られるとしても、この二人だけ……。それで借金チャラなんだろ?  ……………ッ、えぇいッままよッ!!  俺は再度自分に喝を入れ直し、引かれるままベッドへと近付いていく。  「監督〜、途中でストップは今回無しだからね。ずっとそのまま撮っててね?」  「うっ……、む、難しいけど精一杯させてもらいますッ!」  「よろしく〜」  カメラの前にいる監督に向けて奈央が一言そう言い、ベッドの上へとあがると、クルリと態勢をこちらに向けて座り、両手、両足を広げて  「昂輝君、ここにおいで?」  と、広げた間に俺を入れ込む気なのかそう指示を出す。  「昂輝、バスローブ外すぞ」  ベッドの前で立ち尽くしている俺に、理央はそう声をかけて腰で留めている紐を解くと、俺の肩からバサリとバスローブを滑らせ床に落とした。  「わ、本当に良い体してるね~。最初に見た時からタイプだったんだ〜、興奮するよ」  俺の体を見てテンションが上がったのか、奈央はそう言って、片手でおいで、おいでと俺を呼んでいる。  俺は躊躇いがちにソロリとベッドへ上がると、オズオズと奈央に近付く。  「アハ、捕まえた~。ン〜昂輝君良い匂いするね」  奈央が広げた間に体を持っていくと、ガバっと伸びてきた両手両足が俺の体に巻き付いて、ギュッと抱き締められる。裸の男に抱き締められた経験が無い俺は、勿論ガチガチに固まってしまい  「ハハッ、緊張し過ぎ。は~いじゃぁコッチ向きになって、俺に体重預けてくれる?」  パッと俺から離れると奈央はそう言いながら、向かい合っている態勢から俺を後ろ向きで抱き締める態勢へと変えると、理央がギシリと音を立ててベッドへと上がってきているところだった。  「昂輝、緊張せずに任せろ」  理央も俺にそう言いながら、俺の足首からゆっくりと手を滑らせて撫で上げてくる。  そんな触られ方を初めてされ、俺はビクリッと脚を揺らしてしまう。  「くすぐったかった?」  すかさず奈央が俺の耳元で囁いた途端、ゾワゾワする感覚に俺は首を窄める。  「……、もしかして昂輝君、感度良い?」  尋ねてきた奈央の台詞に、俺は答えが解らず不安気に奈央に視線を向けると、もう一度今度は確かめるように奈央の指が俺の脇腹をスリリッと撫でる。  「ッ……」  くすぐったいような、ゾワゾワする感覚がまたキて、俺は息を詰める。すると、耳元で奈央が  「マジかよ……」  と低く呟いたので、俺はえ?と再び視線を横に向けると、そこには先程までの笑顔が消えて、理央ソックリの真顔があり俺は息を呑む。  ……、え?え……、コワッ……。  先程までずっと笑顔だったのに、急にそんな奴が真顔になると、ゾッと背中に鳥肌が立つ感覚。  「オイ、奈央。昂輝が怯えてる」  俺が顔色を変えたのを敏感に察知した理央が、奈央にそう注意すると  「あ、え?……素が出てた?」  直ぐにニコーッと奈央が笑顔になるが、俺は笑えない。  そんな直ぐ、笑顔になれる奴……怖いだろ。  「昂輝君、怯えないでよ~」  俺のリアクションに奈央は大袈裟に悲しむ素振りを見せると同時に、俺の胸筋に両手をあてて揉んでくる。  「え……ッ?……、あ……」  「怖がらせちゃったお詫びに、マッサージしてあげるね?」  楽しそうに言いながら、下から上へと持ち上げるように胸を揉み始めると、理央は理央でスススと手を俺の太腿まで持ってくると、俺の脚を開いてボクサーパンツの中にまで手を滑らせてくる。  「ちょっ、………ッ、と待っ……てッ」  「リラックスしろ」  理央もそう言いながら、際どいところを絶妙な力加減で撫でるので、俺は自分の顔が赤くなるのを感じながら直視出来ずに、ギュッと目を閉じる。  「昂輝君、目瞑るのは駄目だよ。誰にこれから抱かれるのか見なきゃ、ね?」  俺の胸を揉みしだいている奈央がまた耳元で囁きながら、最後の一音を発するタイミングで、両乳首をキュッと抓上げた瞬間  「ひ、ぁッ……?」  自分の口から出た音だと思えない声に、俺はバッと口に手をあてて目を見開く。  は?……、今の、俺の声か?  信じられない思いで混乱している俺に、目が合った理央はニヤリと口を歪めると  「奈央……」  「ウン、解ってるよ理央」  と、二人で何やらアイコンタクトを取って会話をすると、奈央が執拗に乳首を愛撫し始めた。  「あ?……ッ、ンゥッ、な、に……」  指の腹で押し潰すようにトントンと叩くと、次いでは指先でピンピンと弾くように先端を弄ぶ。  「あ、……あッ、止めッ……、それ、ンウゥッ……」  後ろから奈央に乳首を弄られる度に、ビクビクと腰に甘い電流が流れるみたいな感覚に俺は戸惑う。  くすぐったい……?イヤッ……、それに勝る気持ち良いッ、感覚がヤベー……。  初めての感覚に、戸惑いながらも与えられる快感を拾おうと体が勝手に反応する。乳首を嫐られる度に腰にクる感覚。俺は太腿をモジッと閉じようとしてしまうが、それは理央によって阻まれてしまう。  「昂輝、気持ち良いか?勃ってるぞ?」  「ぅあッ……、そだ、ろ……ッ」  今まで生きてきて、自分や人に乳首を弄ってもらった事は無い。AVとかで女優が男優の乳首を舐めたりしているのは見た事があるが、自分がそこで感じるなんて知らなかった。  理央に言われて視線を下げると、ボクサーパンツの中で確かに俺のモノは頭をもたげている。  「気持ち良いんだ〜?エッチだね、昂輝君」  嬉しそうに奈央が言ったかと思ったら、ピチャリと耳に水音。次いで耳を舐められている感覚にゾワッと項が粟立つ。  「ンッ……、は、ぁッ、……な、に?」  「耳も気持ち良いでしょ?」  ハミハミと俺の耳を食みながら、奈央が甘く囁くと、ビクンッと腰が浮いてしまい俺は恥ずかしさに再び目を閉じてしまうが  「ホラ昂輝君ちゃんと目、開けて。理央が勃起した昂輝君のちんぽ可愛がってくれるよ~?」  奈央の台詞に煽られるように俺は目を開くと、理央がゆっくりと穿いているボクサーパンツを脱がせようとしている。  「あ、ア……ッ、ちょっ、と……ッ待っ、て……」  勃ち上がった自分のモノを見られるのが恥ずかしくて、俺は咄嗟にボクサーパンツのゴムの部分を手でギュッと握り締める。すると乳首と耳の愛撫で先端から漏れ出ていた先走りがジワッとボクサーパンツに染みてしまい、カァッと顔が熱くなってしまう。  「何を待つ?気持ち良くて染みてる……」  スリッと理央が言いながら、ボクサーパンツの上から俺の裏筋を指でなぞるので、その感触にビクッと太腿が揺れる。  こんな……、男に触られて俺……。  戸惑いながら視線を彷徨わせると、ライトの向こうにスタッフさんの影。  ハッと冷静になれば、撮られていると思い出し、急激に恥ずかしさが込み上げてくる。  顔を伏せて、モジッと体を捩らせた俺の耳元で  「昂輝君、大丈夫だから。俺と理央だけに集中して?」  言い終わると、ハミっと耳の軟骨を甘噛みされ  「ハァ、ァ……ッ」  と、吐息が漏れる。  ………ッ、そうだ。こうなるのを決めたのは俺なんだから……、と少し堅くなった体の力を再び抜くと  「ン〜?コッチでイキたいのかな?」  後ろから奈央が再び俺の乳首の先端を今度は爪でカリカリと刺激し始めて、俺はヒュッと息を呑む。  「ッ……、ンゥゥ~~ッ、ァ、ヒァ……ッ」  弄られて立ち上がった乳首に、愛撫されている刺激が強過ぎて、俺は片方の手を奈央の腕に絡めると  「あ〜〜、可愛い……ッ」  そう呟いてまた俺の耳を舌で舐り始め、今度は耳の穴にすぼませた舌を差し入れる。  「ファッ……?あ、ヤ……ッダ……、耳ン……ッ中ッ、……入れ……ッ」  気持ち良さに体から徐々に力は抜けていく。俺は満足な抵抗も出来ずに、二人のなすがまま……。  理央はビクビクと跳ねる俺のタイミングで、コスコスとボクサーパンツの上から裏筋や、玉を揉みしだいていて、奈央は執拗に爪で乳首を弄り、耳を甘噛みしたり舌で舐め回している。  アッ、ア……、ヤバい……ッ、ヤバいッ!コレ、イクッ……、男二人に体良いようにされて……ッ、俺ッ……!  「昂輝君、イキそう?お腹ブルブルし始めてる……」  絶頂が近い俺の感覚が解るのか、奈央はそう言うと、カリカリと刺激していた乳首から指を離し、耳からも口を外して俺の顔を見ようと覗き込むように首を傾ける。  「あっ……、なん、……で……ッ?」  切なさに口から出た自分の台詞にハッとなる。なんで?……、って言ったのか俺……ッ。と、戸惑いの色が隠せない。  「ホラホラ〜、余計な事は考えない……、気持ち良い事だけ、ね?」  俺の頬にチュッとキスをして、スリッと伸びてきた指先に、先程と同じように乳首を弄ってもらえると思いジッと見詰めるが、指先は意地悪に乳首を外して、乳輪や乳首をかすめる位で、ちゃんとは触ってくれない。  そのもどかしさに、脳が焼き切れそうだ。  なんで……ッ、?ソコ、違うッ……、もっと、ちゃんと……ッ触って……欲しい……ッ。  焦らされる歯痒さに、俺は無意識に胸を突き上げるような態勢で、奈央の指先が乳首にあたるようにクイ、クイッと上半身を捩る。  「何昂輝君、どうして欲しいの?」  甘い囁きが俺の鼓膜を震わせて、優しく俺に聞いてくるから……。  「……ッ、も、…ちゃんと……、ンぅッ、触って、欲し……ッハァッ、……さっき、みたいに……ッ」  「ン〜?触って欲しいの?」  奈央の問いかけに、俺はコクコクと首を上下に振ると  「アッハ……、本当堪んないよ、昂輝君」  嬉しそうに奈央は声を上げて、俺の両乳首を親指と中指でギュッと抓ると、人差し指で飛び出した先端をカリカリと愛撫し始めた。  「やッ……、コレ……ッさっき、より……強ッ」  「気持ち良いね~?」  「ンウゥッ……、ヤ、ダ……、ヒィ……ッあ、アッ……イクッ」  「ン〜?昂輝君、乳首でイクの?」  「ア、で……ッ、る……イクッ……イクッ」  「ホラ、ちんぽ扱かれてじゃ無く、乳首でイケッ、腰ヘコヘコして無駄撃ちしろッ」  乳首を弄られ、耳元で言葉攻めされて腰から背中にかけてビリビリとする快感の波に、俺は伸ばしていた脚に力が入ると  「ア゛ッ、イ、グ……ッイクッイクッイクッ!!」  ピンッと爪先まで脚を伸ばし、ボクサーパンツの中でビュクッ、ビュルル〜ッ!と射精してしまう。  久し振りに出した余韻にクタリと全身が弛緩し、ハァ、ハァ、と荒い息を吐いていると理央が  「上手にイケたな昂輝、ケド本番はこれからだぞ?」  と、出したばかりのボクサーパンツを、今度は止めもせずにズルリと下にさげる。  そこには、白濁にまみれた俺のモノが半勃ちの状態で……。まだ余韻でビクビクと時折痙攣している。  「わぁ、良いサイズ。昂輝君男優でもやっていけるんじゃ無い?」  「ぁ……ッ、見んなよ……」  恥ずかしさにモジッと太腿を合わせようとすると、理央がそれを阻み  「曝け出さないと続きが出来ないだろ?」  と言いながら、俺の太腿をカプリと噛む。  「ンゥ、ゥ……ッ」  たったそれだけの事なのに、気持ち良い余韻に声が上がってしまい、俺は唇にグッと力を入れる。  「本当に、感じやすい体だな……」  カプリと噛んだ口をそう言う為に離して、言い終わった後に舌を伸ばして太腿の付け根まで舐めると  「溜めてた匂いだな?最近してなかったのか?」  と、その上にまで舌を這わせてくる。  「アッ、理央……、駄目、だ……ッ」  それ以上は……。と言う前に口を大きく開けた理央が俺の半勃ちを口に含む。  「ハッぁ〜〜……ッ、ぁ、アッ……」  ジュルッと音を立てて、白濁の液体と一緒に俺のモノを口に入れ、ジュプッ、ジュプッと厭らしい音を立てて顔を上下に動かし始めた。  「ン、グゥッ、〜〜〜ッ、アッ、アッ……」  出したばかりのモノは敏感で、口の中で亀頭に舌がまとわりつく度に、過度な気持ち良さで腰が跳ねる。理央は器用に口の中で舌を動かしている間、手で玉を揉んだり裏筋をスリスリと扱いたりしていたが、不意に玉と孔の間に指をあて、そこをグッグッと押すように刺激する。  あ……、会陰、刺激されてる……ッ。押される度に……なんか……ッ鈍くビリビリ、クる。  「理〜央、ローション忘れてるよ?」  俺の後ろでゴソゴソしていた奈央が、理央の近くにローションをポンと軽く放ると  「ン、ファンキュ〜」  咥えたままで喋るので、口の中で舌が動き、歯が少しカリをかすめるとゾクゾクゾクッと腰から背中に電流が流れる。  「ヒ、ンッ……喋ン……な、よぉッ……」  咄嗟に理央の頭に手を置いて、上半身を起き上がらせ理央の方に体を曲げると、しゃぶっている理央がこちらに視線を上げると俺とバチリと目が合い、フッと表情が和らいで笑った。  その顔にドキリとした瞬間、グイッと肩を持たれて再び奈央の方に倒されると、小さく耳元で  「昂輝君、ベーってして」  と、言いながら俺の頬を指で掴んで、自分の方に顔を向けさせる。  向けさせた奈央の顔もまた酷く優しい表情で、俺に促すように自分の口から舌をベーっと出しているので、俺も真似するようにオズオズと舌を伸ばす。  伸ばした舌を、奈央の舌先がピチャピチャと音を出して上下左右に器用に動くと、視線で俺にも舌を動かして欲しそうに見詰めるから……、俺も奈央がしているように舌先を動かすと、ご褒美だと言わんばかりに乳首を愛撫される。  「あぇッ……、ハァ、……ッ」  乳首の先端を、スリスリと指先で撫でるように上下に刺激され、奈央とキスしているのに、喘いでしまう。そんな俺に顔を近付けた奈央は、そのまま自分の舌を俺の口腔内へと侵入させて、深くディープキスをしてくる。  舌は、器用に歯の裏側の歯列をユックリとなぞり、上顎を舌先でチロチロと愛撫され、俺は再び奈央の腕に手を絡めてビクビクと緩く体を跳ねさせてしまう。  気持ち良さに頭がボーッとしてくるタイミングで、ヌチャリと俺の孔に痛みなく何かが入った感覚に、ゾワッと体が反応する。  「柔らかいな……」  勃起した俺のモノを、ペロペロと舐めながら理央が呟いて俺の中に入れた指を探るようにクイクイと動かす。  「ンゥッ……!ンンッ……、〜〜ッ!」  ガッチリと頬を掴まれている俺は奈央とのキスから口が離せなくて、入れられている違和感に眉間に皺が寄ってしまう。  あ……、入ってる。俺の……ッ内臓……触られてるッ!  空いている片方の手で、シーツをギュッと掴み、脚の爪先にも力が入ってシーツを引き寄せてしまうと  「昂輝、力抜け……、気持ち良くしてやるから」  理央は言いながらも俺の中で何かを探るように指を動かしていたが、あるか所をグッと押された瞬間、俺の腰が跳ねた。  「フッ、ンウゥッ……ッ」  押されたところからジンッと強烈な気持ち良さが広がり、腰が跳ねた直後にブルブルと、内腿が痙攣する。  「見付けた……」  嬉しそうに理央は呟くと、そのか所を執拗に愛撫し始めた。  「ンぅッ、……ハァ、ァ……ッン、ン、あ…」  口を開き、逃がせない快感を発散させるように喘ぐと  「いっぱい、鳴いて」  と、奈央が俺から唇を外してまた耳元で小さく囁く。  「ハッ……ッ、理、央……駄目、だ……アゥンッ、ソレ……ッ止め、て…ぇ……」  「気持ち良いだろ?」  ……ッ、気持ち、良いから……、止め、て欲し、い……ッ。  経験した事の無い快感は、自分がどうなってしまうのか予想出来ない事への恐怖だ。  風呂場で慣らした効果なのか、理央が上手いからなのか、痛みは感じずに圧迫感だけがある不思議な感覚。  ……………ッ、何本入ってんだ?  と思った瞬間に、先程擦られて気持ち良かったか所を今度は指で挟まれた感触に俺は喉を反らせる。  「ヒィ……ッ、ア゛ッ、あぁ゛〜〜ッ!」  挟まれた状態で指を二本上下にスライドされれば、ビリビリとした快感に臀部が揺れ、ギュッ、ギュッと中の指を食い締める形になる。そうなればより一層自分で指を押し付ける形になり、無意識に俺はヘコヘコと腰を浮かせて振ってしまう。  「気持ち良いね?昂輝君」  「アァッ……、ア゛ッ、ンァ……、アンッ」  「本当に初めてかな~?」  「ヒィッ……ッ、アハッ……、アゥン……ッ」  「答えて?」  奈央の質問に答えられないほど喘いでいると、それが面白くなかったのか、低く意地悪そうに奈央が呟き、弄っていた乳首をギュウゥッと強く捻り上げる。  「ア゛ッ!……ッじめ、て……、初め、でぇ……ッ」  「ウン、そうか〜初めてかぁ。ケツま○こ気持ち良い?」  「イ゛……ッ、ンゥッ、気もぢ……ッ良い゛ッ……」  「……、素質、かな?」  最後に呟いた言葉の意味が解らなくて、答えられないが、どうやら独り言のようで、奈央に視線を向けると、嬉しそうにチュッと頬にキスされる。  「昂輝君お顔がトロトロだね~、可愛い」  今自分がどういう顔をしているのか、気にする余裕は最早自分には無くて、もう少しでまた達しそうになっている下半身の熱を早く、出したい。  「昂輝、もう一本増やすからな……」  下から理央がそう呟いて、入れている指に添えてゆっくりともう一本指を増やしていく。  「アッ、グゥゥ……ッ、ハァ……」  きつかったのは挿入する時だけで、入ってしまえば幾分か楽になる。  理央は俺の入り口が傷付かないように、ローションを足すと、腹側をクイックイッと押すように指を抜き差しし始める。  「ハァ、ア゛……ッ、ンィ゛ッ、イ゛……ッ、気持ちッ、イ゛ィ……」  指が増えて、圧迫感は先程よりはあるものの、気持ち良さは変わらなくて……、俺は奈央に言われた通り素直に気持ち良いと喘ぐ。  理央の指は徐々に俺を追い上げるように、抜き差しが激しく早くなり、俺はその快感に堪えるように奈央の両腕を掴んで、目をギュッと閉じてしまうと  「駄目だよ昂輝君、俺の顔見て」  耳元で囁く奈央の声に、閉じた目を開けると  「良い子、昂輝君のトロ顔見せてて?」  「ア゛……ッ、奈央……、ハアァ、奈央ッ」  「ン〜〜?また、イキそうなの?」  「イ゛ック……ッ、ンァ゛ッ、イクッ!」  「理央にちんぽ触られて無いのに、ケツま○こほじられてイクんだ?」  ジュボッ、ジュボッと下からの厭らしい音と、奈央の言葉攻めに俺の鼓膜は震え、掴んだ腕にギュッと力を込めると  「イ゛グッ……尻弄られ、てぇ゛…、イッ」  「あ〜、可愛い!……ッ、ホラ、イケよッ女みたいに、ま○こほじられてさぁッ!」  「イ゛ッ……ギュ……ッ、イ、ち゛ゃう……ッ……、イ゛ィ゛、〜〜〜ッ!!」  中から与えられる快感は大きく、俺はビクンッと腰を上へと持ち上げて喉を反らすと、何度か腰をビクつかせながら射精し、出し切ると直ぐに腰がベッドへと落ちる。  理央は俺が腰を上げた瞬間に、傷付けないように指を引き抜いていて、俺が射精している間に自分のボクサーパンツを脱いでいた。  ベッドの上で息も絶え絶えになっている俺の態勢をクルリとうつ伏せにすると、腰だけ持ち上げて理央が俺の孔に舌を這わせる。  「ア゛……ッ何……、止め、て……ッ理央、汚い、から……」  「……、石鹸の匂いがする」  そう呟いた直後、ズゾゾゾゾッと音を立てて、理央がベチャベチャの孔に吸い付く。  「ヤァ゛ッ、……、理央ッ……マジ、でぇッ」  シーツに顔を押し付け叫ぶ俺を無視して、理央はそのまま自分の舌を孔の中へと侵入させる。  「ツッ!」  その感触に、俺はキュッと孔に力を入れてしまい、理央の舌の感触を襞と内壁で味わってしまう。  「あ、………、ア゛〜〜〜……ッ」  指よりも柔らかく弾力のあるそれは、締め付けた直後に回すように内壁を愛撫していて、独特の感触に俺はガクガクと腰を落としてしまいそうになるが、それよりも先に理央の両手が臀部を掴み、落ちないように支えていて、それと同時に両側に肉を押し広げ、舐めやすいようにしていた。  ツポツポと舌を抜き差しさせ、フニャフニャになっている俺のモノを片手で扱くように愛撫する。  「ンゥッ……、理央………ッ、理央ッ」  先程まで中に指を入れられていた感触がまだ残っている。奥がジンジンと言うか……、ジクジクと疼いていて……、舌で愛撫される度に物足りなさが募って、モジ、モジと臀部が揺れる。  俺の甘い声に、理央は舌を中から出すと、バキバキに勃起している自分のモノにゴムを装着しローションを垂らして、何度かゴシゴシと扱いて俺の臀部に挟む。  「あ〜〜………ッ、昂輝のケツ……めっちゃ肉付き良くて、気持ち良い……」  ギュッと臀部を中央に寄せて、腰を振って自分のモノを擦り付けてくる理央の台詞は、本当に気持ち良さそうで、俺はゾゾゾと背中に鳥肌が立つ感覚に、体をくねらせる。  擦り付けていると、孔の襞に理央のモノがあたり、間違って入ってしまいそうな錯覚に俺は無意識にクイッ、クイッと臀部を持ち上げてしまっていて……。  ハァ……ッ、入れて欲し………、中、………ッさっきみたいに……、擦って、欲しい……ッ。  「昂輝、腰揺れてる……ッ入れて欲しいのか?」  後ろから嬉しそうな理央の声音に、コクコクと首を上下に振ると  「ちゃんと言え、ナニを、どこに入れて欲しい?」  言いながら理央は擦るのを止め、襞にモノを押し付けて、掻き分けるように少し先端を入れると、直ぐにそれを出してしまう。  あッ、なんで……?そのまま、入れろよ……ッ。  先端が少し入るタイミングで、グッと臀部をちんぽの方に押し付けるが、そうするとフイと先端が出ていき、それが何度も繰り返される。  俺はもう、満たして欲しくて……、一度引き結んだ唇を震えながら開くと  「入れ、て……ッ欲し……」  消え入るような声で呟くが  「ナニを、どこへ?」  ちゃんと言わなければ、入れてくれない。  俺はヒュッと息を吸い込み  「理央、の……ッちんぽ……お、俺の……ケツま○こにッ……、入れて、欲し……ッ」  ドチュンッ!  俺が言い終わった直後に、勢い良く理央のモノが中へと入ってきて、目の前でチカチカと星が飛ぶ。  「あ゛ッ、あ゛〜〜〜〜……ッ」  入って、きたぁ……ッ、指よりも……、太い、ちんぽ……ッ。  入ってきた衝撃に涎が垂れるが、拭うよりも強烈な快感に身を震わせている。  理央は俺の中が馴染むまで動かずに耐えてくれるが、俺の内壁が理央のモノに絡み付いて収縮し、それだけでゾクゾクと快感が腰から背中へと駆け上がる。  俺が理央のモノを受け入れている間に、奈央もボクサーパンツを脱いで、俺達の痴態を見ながら自分のモノを扱いていて、そうして俺の顎をクイッと指先で持ち上げると  「昂輝君、両腕で起き上がって」  上半身をベタリとベッドへ付けていた俺に、奈央がそうお願いするので、腕に力を入れてベッドから上半身を起き上がらせると、四つん這いの態勢になる。  「ん、良い子」  素直に言うことを聞いた俺の頭を優しく撫でると、ベッドへ膝立ちになった奈央のモノが、俺の目の前にあり  「舐めてくれる?」  俺の頬をスリッと指先で撫でて、奈央は呟くと、俺の項に手をあててグイッと俺の顔を自分のモノに近付ける。  抵抗が無いと言えば嘘になる。だが、俺は二人に実質金で買われている。三百万円分の事をしなきゃ二人共納得しないだろう。  腹は決めている。  一度、チラリと視線を上げて奈央を見ると、ニコリと笑顔で笑われて俺は口を大きく開き、咥えようとすると  「はい、ちょっとストップ。昂輝君、君もフェラされた事あるでしょ?」  奈央に突然止められ、そう聞かれて俺はコクリと首を振ると  「ん、じゃぁ最初から咥え無いよね?厭らしく誘うようにフェラしてみよっか?」  そう言われて、俺は良く見ているAVを思い返す。  最初は近付いて、匂いを嗅いで……、そのまま舌を伸ばして裏筋を舐め上げる。顔の角度を変えながら何度かそれを繰り返し……、カリ首をチロチロと舌先で愛撫したら、亀頭の鈴口に舌を這わせて……、亀頭全体を口に含む。  「ん、上手に出来てるね……ッ、気持ち良いよ……」  亀頭を咥えた状態で、気持ち良さそうに呟く奈央の顔が見たくて視線を上げると、ジッと俺を見詰めている視線と絡んで、俺はカァァッと顔が熱くなるのを感じる。それと同時に理央が入っている内壁を更にキュウゥッと締め付けてしまい、気持ち良さに眉根が寄ると  「ッ……、そろそろ動くぞ」  「アハッ、トロ顔になっちゃったね?」  奈央と理央が、それぞれに言った直後、理央が腰を振り始める。  奈央は理央が腰を振り始めると俺が口を離すのを見越していたみたいに、俺の頭を掴むとフェラの状態を保ち  「舐めて?」  と、楽しそうに俺に呟く。  「フウゥんッ……、ウンン……ッン、グッ、ン、ン、……」  ジュッポ、ジュッポと厭らしい音を立てながら唾液を絡み付かせて、俺は奈央のモノを口腔内で扱くと、その間理央は俺の内壁を自分のモノで愛撫していて、先程指で気持ち良くなったところを、重点的にカリ高のモノで押し潰すように腰を揺らす。  気持ち良さに喘ぎ声が出てしまうが、奈央のモノを咥えていればくぐもった吐息しか吐けず、逃がせない快感が体の中で渦を巻く。  「ンブッ……、ンブッ、……ッウゥン……」  「あ〜〜、気持ち良いね昂輝君……、ケド、もっと気持ち良くなろうか?」  俺の頭を撫でながら、上半身を折り畳んで耳元でそう言うと、奈央は再び両手で俺の頭を持ち直すと、自分で腰を振り始めた。  いきなり腰を振られ、喉奥まで奈央のモノが侵入してくると、苦しさにオ゛ェ゛ッと嘔吐いてしまうが、奈央は構わず腰を振り続ける。  「ホラ、喉開いて……ッ」  「グゥゥッ……、エ゛ッ、グェ゛……、ガァッ」  苦しさにジワッと涙が溢れて頬を伝うが、奈央は止めてくれず一度俺の喉ちんこまでモノを押し込むと、グイッグイッと捏ねるように腰を動かす。その度に喉ちんことカリが擦れて、苦しさにキュウゥッと喉が締まる。  「気持ち……ッイィ……ッ」  締まれば、奈央のモノはグァッと更に大きくなり、そのタイミングでゲェェ゛ッと俺は嘔吐く。嘔吐けばズルッと引き抜かれるの繰り返しだ。  鼻水も鼻から垂れ、涙で顔面がグシャグシャになっても、奈央は止めてくれない。  俺が喉奥にモノを押し込められれば、内壁も締まるのか、その度に理央のモノもビクビクッと大きく反応する。  ……………。まるで二人にとって道具みたいに扱われている自分に、少なからず感じてしまっているのも事実で……。  自分の中で、開いてはいけない扉を次々と二人の手によって開かれている事実は、不思議な事に俺の中で嫌悪感を持たないものだった。男としての矜持を捨てて、二人に身を投げ出してしまえば、自分が知らなかった開放感や、委ねる心地良さまであり……。  それを自分が受け入れれば、ただただ今、この状況は気持ち良いだけ。  もっと酷くされても良い……ッ、そんな感情さえ自分の中で首をもたげると、俺は奈央の腕に自分の指を絡ませ、スリリッと小さく愛撫する。  奈央はずっと注意深く俺の事を観察している。そうして俺の限界を見極めているんだと理解すれば、さすがプロだと安心して体を預けられる。そしてそれを理解していると、二人に解って欲しかった。  俺の小さなサインでも、奈央は嬉しそうに受け取って  「昂輝君、気持ち良いんだ?」  と尋ねてくるので、俺は奈央を見詰めたまま小さく首をコクコクと振る。  「ア〜〜……ハハッ、……。ハァ、……無理」  奈央はそう呟いて、顔から笑顔を消した。  変わりに獰猛な雄の表情になると、ギラリと俺を捉えて  「可愛がってあげるね?」  言った直後から、俺の頭と髪を片手で掴み直し、もう片方を自分の腰にあて少し腰を反るような形にすると、今度は自分の腰では無く俺の頭を振りイラマチオし始めた。  ガッボッ、ガポッと鈍い音を立てながら俺は奈央がするまま体から力を抜いて委ねる。  喉奥まで突かれるのは正直辛いし、涙や嗚咽、鼻水も垂れ流しだ。今となっては息もつけない程に隙きを与えられていないが、息苦しさに頭に白のボヤがかかる頃、上から奈央が、唸る。  「グゥゥ……ッ、出るッ……、あ〜〜ッ、イクッ……イクッ、イクッ!!」  その声に俺もまた同調するようにゾクゾクと快感が這い上がってきて、ギュウゥッと内壁と喉奥を締め付けると、両方に入っているモノが膨らみ、次いでは二人共ほぼ同時に俺の中で達してしまう。  「クッ……、グゥ〜〜ッ……」  内壁に絞られたのか、理央もイキながらくぐもった吐息を吐いている。  ……………、そうして俺も、無意識にパタタッと色の薄くなった白濁でシーツを汚していた。

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