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第18話 照葉の日記 5
某月某日 夜長が帰ってきた
二人が戻る。
*****
行商に出ていた師匠と夜長が戻った。
けれど。
その姿を見たとたん、オレの口から出たのは声にならない悲鳴。
「……!」
「あー、わかった。何も言うな。言いたいことはわかってる」
「照葉……あの、ただいま……」
面倒くさそうに腕まくりをしながら答える師匠と、困ったように帰還の挨拶を口にする夜長。
遠くに姿が見えた時点で、なんだか不思議だなあと思ったんだ。
なんか妙にゆっくり歩いているし、師匠が寄り添って夜長を支えているように見えた。
その上に家の方ではなく、まず工房の方に回って行ったし。
それほど荷物を持っているようにも見えなかったのに、だ。
変だなと思ったけど、それでも帰ってきたのは嬉しくて、急いで工房に向かって扉を開けて、言葉を失った。
床におろされた荷物。
卓の上に手桶と手拭いが置かれていた。
卓の隣に置かれた椅子の上に夜長が座っていて、師匠が包帯を持っていた。
その夜長の額が。
左目の上がぱっくりと裂けている。
血の様子を見る限りは、今日、先ほどできたような傷ではない。
でも、その大きさと生々しさが。
「な……何……? なんで……?」
よく見たら夜長の全身は生傷だらけのようだった。
左の腕も浅く長く、引っかかれたような傷がある。
「あー……ちょっと、足滑らせちまって……あの、もう見た目ほど、痛くはねえし」
「ま、そういうことだな。照葉、傷薬出してくれ」
オレの衝撃はなかったかのように、あっさりとそれで済ませようとしてる。
二人そろって。
あれほど、行商に行くとき、無事に帰ってこいって、言ったのに。
小さい傷が多いと言ったって。
ほとんど治りかけの傷だと言ったって。
傷なのに、かわりはないじゃねえか!
キレていいよな。
一人で心細くて、それでも待ってたのに。
こんな怪我して帰ってきて。
何の説明もなくて。
ま、そういうこと、だぁ?
「ふっざけんな! なんだよその怪我! 師匠が付いていて、何で夜長に怪我させてんだよ!」
オレがキレて怒鳴りつけたら、師匠が腹を抱えて笑った。
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