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第1話

 あー……ねみぃ。今何時だろ。今日は、えっと……水曜か。1限の政治学基礎はサボるとして、2限に間に合えばいいよな。うーん、今8時回ってるんなら起きよう。でもアラーム鳴ってないし、まだたぶん―― 「あっ……え?」  あれ?動かない。手が、動かない。 「……は?え?何?!ここどこ?!」  瞼を持ち上げた途端、視界に飛び込んできたのは眩しい青空……?いや、違う、海の中だ。だってあそこに魚が……。 「えっ、ちょっ、は?!海の中?!」  がくんっ……手をついて体を起こそうと思ったのに、両手首に衝撃が走る。そうだ、手が動かなくて……いや、腕は動く。腕は動くというか……は?何これ?仰向けに寝転ぶ俺の顔の前に持ってきた両手首には、薄茶色の革でできた手錠のようなものが嵌められていた。 「何これ……俺、死ぬの……?海に沈められて……?」  海の中、拘束具、そこから連想したのは、いつか映画かドラマで見たシーン。ヤクザに捕まって、レンガを縛り付けられて海に投げ入れられるお決まりの展開。 「でも俺ヤクザに恨まれるようなことは……あっ、いや、待って!息できる!俺、海の中でも息が……」  そう思い再び顔を頭上に向けた時、それが作り物だと理解する。水も魚も天井に描かれた絵で、よく見れば房のついた照明がぶら下がっている。 「あれ?……そりゃそうか。海の中で息できるわけないよな」  段々と寝ぼけた頭がはっきりしてきた俺は、腹筋だけを使って上体を起こし辺りを見渡した。そこは俺の家のリビングよりも広い部屋で、俺は今その中に置かれた巨大なベッドの上にいる。海中が描かれた天井に繋がる壁は白く、縁取られた中にドラゴンの彫刻が施されている。隅には木製の飾り棚が置かれ、まっすぐ顔を向けた先にはゴテゴテとした飾りのついた扉が見える。  なんだこの部屋は……派手で悪趣味すぎんだろ。こういうのゲームで見たことあるような……あっ、中国の皇帝の部屋ってこんな感じ?いや、天井に海はないかぁ。

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