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第2話

 その時、ガチャリと鍵の開くような音がして、ずずっと床を引き摺りながら目の前の扉が開いた。部屋に入ってきたのは、頭にちょこんとした冠を載せて、派手な着物を着た皇帝……ではなく、淡い水色のセーターに色の濃いデニムを履いた、すらりと背の高いモデルみたいなイケメンだった。そいつは扉を閉めるとにっこりと微笑み、こう言った。 「おはよう。そしておかえり、僕のプリンセス」  ……プリンセスって、やっぱ皇帝じゃねぇか!いや、王様か?キング? 「いや、そうじゃなくて!誰だよ、お前?!俺をどうするつもり?!」 「何がそうじゃないの?どうするつもりって……そりゃあ、もちろん、大切にするよ」  微笑みを絶やさず俺の方に歩み寄ってくる。ベッドから降りて逃げようとしたその時、足首にも足枷のようなものが付けられていることに気が付いた。 「くっ……来るな、この変態キング!」  変態皇帝より変態キングの方が言いやすかったからそう言った。 「キング?はは、光栄だな。僕のプリンセス」  そう言うと男はベッドの端に腰掛けた。ギシっと軋む音がして、傾いだマットレスの動きが俺の方にも伝わってくる。男の手がこっちに伸びてくるのを見た瞬間、背中にぞっとするものを感じ、俺は全身の力を使って身を捩った。 「俺にっ……触んじゃねぇ!」  男が座ったのとは反対側のベッドの端を目掛けて、俺はごろごろと転がっていく。これでも中学まで器械体操をやってたんだ。手錠や足枷なんて俺には無意味―― 「あっ……」  ふいに肝の冷えるような浮遊感が走り、そのすぐ後には全身を打ち付ける痛みを感じていた。 「いっ……てぇ……」  どうやらそのベッドは俺の想像の3倍くらい背が高かったようだ。衝撃と痛みで目の前に火花が散る。チクチクとした絨毯の感触で、俺はその時初めて自分が全裸なことに気が付いた。でも、今はそんなの気にしてる場合じゃない。すぐにうつ伏せになって体を起こそうとしたその時、俺の胸は再び床へと押し付けられた。 「まったく、お転婆なプリンセスだな。躾が足りないんじゃないか」 「がぁっ……」  ぐっと胸を圧迫され、肺から押し出された空気が喉を通って不快な声となる。頭上からは男のものであろう含み笑いが聞こえてくる。 「だけど、そんなところも愛おしいよ。大切にし甲斐がある」

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