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よくできました 21

珀英はそう言うと、オレの上に乗ってきて、体を押さえつけてから、顎を捕らえて動けなくすると、少し厚い柔らかい口唇でキスをしてくる。 口唇が重なって、何度も何度も探るように離れては重なってを繰り返して、恐々と舌が口唇を舐めてきた。 なんだ、それ? 昨夜はアホみたいに口吻けて、咬(か)みちぎってしまいそうなキスをしてたのに。 珀英は昨夜の強引なセックスを思い出して、怒られると思ったのか、オレの反応を窺(うかが)う様子に、思わず吹き出してしまった。 昨夜やりまくって、オレが気絶するまで、アホの猿みたいにやりまくったから、オレが怒ってるんじゃないかと、勘ぐって恐がっているのか。 まあたしかに、体のあちこちは痛いし、中も珀英に出されまくったので変な感じだし、乳首はいじられすぎて少し痛いし、珀英の太いのを何度も入れられ続けた穴も少し違和感あるけど。 怒っているわけではない。 オレが望んでしたことだし、珀英を煽って挑発して、激しくしてもらいたかったのは、オレのほうだから。 怒ってなんかいない。 オレは珀英の頭を掴んで、そのまま強引に引き寄せて。 驚いて戸惑ったように大きな目を左右にふって、瞬(まばた)きを繰り返している珀英のその表情に思わず笑ってしまった。 戸惑いながらも抵抗せずに素直にオレに引き寄せられながら口吻ける、珀英の口唇が舌が嬉しくて。 オレは少し口唇を開いて舌を出しながら、珀英の口唇にしつこく吸い付くと、舌を中に入れて珀英の舌を搦め取って、搦めて吸い上げる。 珀英はちょっとびっくりした様子で、それでもオレの舌が口唇がしたいようにしてくれている。 起き抜けにするようなキスじゃない、執拗(しつよう)な食らうようなキスをして。 セックスしている時のような執拗な口吻けをオレがするから、珀英が少しだけ戸惑っている気配を感じた。オレは珀英のその戸惑いを吸い上げて、噛み砕いて飲み下す。 オレは珀英の頭を開放すると、そっと胸を押して。 ゆっくりと口唇を離して。 舌を、離して。 オレは珀英を解放した。 「おはよう・・・」 呆気(あっけ)に取られた表情(かお)の珀英に、オレはゆっくり微笑んでそう言った。 あまりに普通の挨拶に、珀英が戸惑っているのが、すごく可愛い。 「あ・・・おはよう・・・ございます・・・」 「くす・・・今、何時?」 「あー、9時くらいです」 「もう?・・・起きなきゃ」 そう言って珀英の体を横に押しながら、体をベットから起こす。 体にかかってた羽毛布団が落ちて、裸の上半身に冷たい空気が刺さってくる。 そのオレの背中を見ながら、ベットに寝たままの珀英が少し不満そうな声をしながら、 「仕事、ですか?」 と物凄く不機嫌な表情をして、眉間にシワを寄せて、口唇を尖らせて拗(す)ねた。 珀英を振り返って、オレはその表情を確認すると、ふっと、笑った。 あまりにも想定通りの反応をしているから、面白くて嬉しかった。 「いや、今日と明日は空けてもらってるけど」 「え?じゃあ・・・何で・・・」 「どうせお前も休みなんだろ?」 「あ・・・はい・・・」 珀英がちょっと恥ずかしそうに、顔を赤くして顔を背けた。 裸の肩に、赤い点々が見えた。オレが我慢できなくて、思いっきり噛み付いた時の痕(あと)だと、すぐにわかった。 オレは珀英のその様子を見て、くすりと、思わず笑いを堪(こら)えていた。 珀英がオレの帰国に合わせてスケジュールを空けていることなんて、当たり前だ。 オレに会えなきゃ死んじゃうし、オレの声を聞かなきゃ気が狂うし、オレの体温を貪(むさぼ)らなきゃ頭おかしくなるし、オレの中に突っ込んで、オレを喘(あえ)がせてイカせて、何度も何度も好きって愛してるって慟哭(どうこく)しないと、おかしくなるって。 普通の最低限の生命維持すら、おかしくなるって、知ってる。 珀英が炊事掃除洗濯、それ以外の細かい家事や管理を全部やってくれるのが、オレのためじゃないこと、オレが生きていないと珀英が生きていられないから、オレのためだけど最終的には自分のためにやってるってことくらい。 みんな知ってる。 だから珀英がオレのためだけに、オレと一緒にいるためだけに、仕事も体調もスケジュールなんか全部調整するのなんて、当たり前すぎて疑ってもいない。 オレは体を起こしてベットの上に座ると、首を左右に倒して軽く伸びをしながら言った。 思ったよりも体のあちこちが悲鳴をあげている。セックスしてる時って、結構無理な態勢になったりするから、関節痛くなったり、変な所にアザができてたりする。 オレは肩甲骨の痛みに顔をしかめながら、 「日本久しぶりだから、今日はオレが行きたい所、付き合え」 「え・・・?あ・・・はいっ!!」 珀英の嬉しそうな声が聞こえて、珀英が体を起こした気配がして、ベットが軋(きし)むのを感じていたら、後ろから珀英が抱きしめてきた。 ふわっと、優しく包まれたかと思ったら、ぎゅううっって肩と腰と、強く抱きしめられて、首筋に珀英の顔が埋められる。 「好き好き好き好き好き・・・緋音さん好き好き、大好き大好き大好き」 呪文のように呟いている。 正直気持ち悪いけど、まあ珀英が気持ち悪いのなんて、いつものことだから。 オレは首筋にある珀英の頭をぽんぽんと撫ぜて、珀英が安心するように、落ち着くようにゆっくりと撫ぜる。 犬が嬉しくて、感極まってブンブン尻尾(しっぽ)振りながら、顔舐められているような、そんな気分。 好き好きと繰り返し呟(つぶや)く声を聞きながら、ずーーっと頭を撫ぜてやっていると、珀英の声が小さくなっていって、呼吸が浅く早かったのが深くゆっくりになっていった。 しばらくすると、珀英の落ち着いた呼吸音が、耳朶(じだ)を打つようになった。 やっとなんとかなったらしい。 珀英は顔を上げないで、オレの肩に額を押し付けた状態で、 「どこ・・・行きます?どこでもいいですけど」 「まだ決めてない」 「え〜?なにそれ」 そう言って嬉しそうに笑いながら、珀英はオレの肩と腰と、ぎゅっと抱きしめてくる。 恥ずかしくて顔を上げられない感じで、珀英はオレを抱きしめている。 珀英の体温が、背中から腰から浸透して来て、すごく気持ちがいい。 抱きしめられてるだけなのに、自分の存在全部が許されて、オレの命が求められたような。 温かくて。 柔らかくて。 くすぐったくて。 ああ・・・そうだ。 この感じが、欲しかった。 めちゃくちゃに抱かれて、愛されて、それもいいけど。 でも、やっぱり。 ただ、こうして抱きしめられるのが、嬉しい。 ただ、嬉しい。 珀英の匂いに、体温に、安堵(あんど)して。 やっと帰って来たと、心の底から、安心していた。 Fin

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