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陽が傾いてきたとはいえまだまだ暑さの厳しい時期の密室は、窓とドアを全開にさせてなんとかいられる空間であった。だが、あまり長居するものではない。ましてやここは倉庫である。
身体を動かさざるを得ない青木亮介は、こまめに休憩を挟みながら作業を続けていた。
誰もやりたがらない作業ではある。亮介も暑い中で動くのは億劫でしかない。それでも、準備を怠らずにしておけば、後々に困ることは少ないだろう、と考えて積極的に動いていた。
「……よし。寛希、そっちはどうだ?」
「俺も終わったよ」
倉庫の奥には、亮介と同じ学年の金山寛希も一緒に作業をしていた。
学園祭運営委員会に所属する二人は、物品管理チームとして日々委員会を支えていた。
寛希は入り口付近にいる亮介の方へと近付いていき、ガバリと亮介の肩に手を回す。
「うわっ! いきなりはやめろ!」
「ごめんごめん。でも、相変わらず手際がよくて丁寧で早い、そんな姿見てたらついね」
「つい、じゃねーよ。子どもじゃねぇ」
「でも偉い偉い」
ガシガシと寛希は亮介の頭を撫でる。
口ではやめろ、と拒んでみせてはいるが、寛希に頭を撫でられることが実は嬉しい。
はっきりとイケメンであることを自覚している男の自然な笑みが、不思議と同性である亮介をも幸せな気分にさせていた。
こんな壁のないやり取りをしている亮介と寛希ではあるが、出会ったばかりのときから仲がよかったわけではない。
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