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かおる・佐久間の弱さ

27歳の未羽は、過去を思い出して嫌な思いをしたからかどんよりとした気分だった。 しっかり寝て、しかも公休を挟んだはずなのに疲れがとれず、浮かない表情の未羽が出勤した 「おはようございます…」 「未羽。おはようございます」 「あ。紫藤先生。おつかれさまです」 「未羽?あなた、顔色があまりよくないですが体調は?」 「問題ないです」 「ならばいいです。私は外来なのでまた」 紫藤は不安を感じたが問題ないという言葉に納得し、医局から出て外来へと消えた。 と、同時に佐久間が出勤してきた 「はよ。みぃ、なんか今日…体調悪い?大丈夫か?」 「??」 「無理すんなよ?今日はかおるん所行くんだけど…気が立ってるから気をつけるようにな」 「分かりました」 佐久間に後ろにつき、かおるの部屋へと2人向かった かおるは佐久間たちを一瞥すると、すぐオーバーテーブルの原稿用紙に視線を戻した 「今日はしないから。しっこは出てるし熱も無いから放っておいて?」 「そういうわけにはいかない。かおる、嫌だろうけど、きちんと尿道拡げておかないとまた詰まるぞ」 「別にいいし」 「書くのやめろ。かおる」 佐久間は原稿用紙の上に手を置いた 制止されたことに切れたかおるはペンを突き刺そうと振りかざしたが、その手を未羽が掴んでとめた 「だめっ!え…えーと大事なものをそういう使い方しちゃいけないと思うな?」 「あんた…誰?もしかして、この間の小っこい医師見習い?」 「うん、遠野未羽だよ」 「かおる。そいつ見習いじゃなく資格取った立派な医者だから」 「ふーん、そ?で?お偉い医者が連れ立って何をしに来たわけ?」 「今日はブジーを通す日だから迎えにきた」 「やなこった。こっちは追込み入ってんの。せっかく獲った新人賞からの次回作、落とすわけにはいかないんだわ。あっちにもこっちにも凄腕の作家はたくさんいるから」 「かおるっ」 「ああ゛?出てけっ。次来たらおまえの目に目がけてペン投げるからな」 「…っち。みぃ、とりあえず医局に戻るぞ。かおる、午後また来る」 佐久間は部屋を出、医局へと歩いた 未羽はその後をついて歩き 「先生っ!いいんですか?」 「仕方ない」 「でもっ。詰まったらそれこそやばいんじゃ」 「やばいよ。けど、暴れてくれると傷がつくからそれも困るんだよ。最悪、佐渡先生に頼むけど…借りを作りたくねーし」 「借りって!患者さんのためにお願いするのがなんで借りなの?」 「俺はっ!佐渡先生みたいに鬼にはなりきれねーし、紫藤先生みたく手技に自信があるわけじゃなく、相馬みたいに患者に寄り添うこともできないし…負けるわけにいかねーの」 「勝つとか負けるとか意味分かんないよ?治療に勝ちも負けもないよ」 「おまえには分かんねーよ?」 「なんで?飴くれたじゃん!ぼく、頑張ろうって気になれたよ?いちばん背中押してくれてた!あんたに憧れて医者になったのに弱いとこ見せないでよっ」 「みぃ…」 10年前ー、 入院後はこのあくまのせいで最悪で、めちゃくちゃぼくはイライラしていた。 「血糖値下がらない…意味わからないっ。 インスリンちゃんと打ってるのに。ちんちん触っても勃起もしないし…っ」 「みぃ?お前が頑張ってんのはよく知ってる。今日は特別な?ほら、この間の飴やる。好きなんだろ?これ」 イチゴの飴を佐久間に手渡された あったかいおもいで、、 そこからことあるごとに渡され続けたこの飴… これのおかげでつらい入院生活も耐えられ血糖コントロールもうまくいき退院ができた。 佐久間により前立腺のマッサージやいろいろされたおかげで無事に射精もでき、あくまと呼んだ先生が憧れになって勉強を頑張り、ぼくは医者になった。 いまでも、飴はぼくの支え。 で、ぼくもいつかお世話した子にそっと手渡しするんだという夢がこの間ようやく叶えられた なのに、、意味が分からない なんで、こんな弱気なの?佐久間先生… 「ごめん…。俺の話聞いてくれるか?」 佐久間はソファに座りポツポツと昔の話をし始めた

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