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佐渡×紫藤の記念日

佐渡が手にしているバラを見て紫藤は驚いて手に持っていたケーキの箱を落とした。 「なんでそんなの…」 「受け取れ、縁」 佐渡は縁の前にバラを突き出し受け取るよう促した。 「あ…ありがとうございます」 おずおずと手を伸ばして紫藤はバラを受け取るとその重みに照れて顔を赤らめ、佐渡は手からバラが消えるとしゃがみこみ、箱を拾った。 「縁これは?」 「あ…ケーキです」 箱を開けると落ちた衝撃で崩れた抹茶ケーキとショートケーキが入っていて、佐渡は笑みを浮かべた 「来い縁」 「え?」 「そっちで待ってろ」 バラを持ちながら紫藤は佐渡についていくとカウンターキッチンへと着き、ダイニング側に行くよう指示され 「なんです?」 机にバラを置き指示通りダイニングに向かい紫藤はカウンター越しに佐渡の行動を見守りながらバラの花をつっついた 「俺たち10年もいるからか以心伝心してるかもしれん」 冷蔵庫から違うケーキ屋の箱を取り出し中から抹茶ケーキとショートケーキを出して皿に乗せてカウンターに置くとそれを見て紫藤も嬉しそうに笑った 「あなたも買ったんですね」 「抹茶…好きだろう?」 「はい。よくご存知で」 「ありがとう」 「こちらこそ…。本当はとっちめてやるつもりでしたがどうでもよくなりました」 「どういうことだ?」 佐渡はコーヒーマシンにスイッチを入れ片手間に尋ねるとややブスっとした表情で紫藤は答えた。 「どうでもよくなったとは言いましたけど真剣ですよ?あなた、未羽の前で縁と言ったようですね?」 「あー…言ったかもしれん」 「特別な関係か?と問われました」 「で、なんて?」 部屋にコーヒーの香りが漂い心地いい香りに紫藤は目を細め、机に伏せて再びバラの花をいじった。 「もちろんはぐらかしました」 「もう10年なんだしよくないか?カミングアウトしても」 「迷います」 「なんで?」 煎りあがったコーヒーを2つカウンターに乗せて佐渡がダイニング側にくると紫藤は体を起こした 「イメージと違いませんか?鬼だとか1匹狼だと思われてるのに実は猫なんて」 「事実だろう?それにイメージ通り気ままで気性の荒い…なんとも可愛らしいにゃんこだと思うが?」 「それはあなただけでは?噂話されたりは好みません」 「いいじゃないか数日もすれば過ぎ去ることだ」 「考えておきます…」 「お。ちょっと進歩?」 「言う言わないは私が決めるので黙って上司と部下を演じてください」 「代償は?」 「え?」 「後で…ベッドで…な?」 言っている意味を理解し紫藤は期待に胸を膨らませた

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