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瀬谷

佐久間は瀬谷の空になったグラスにビールを注ぎ直し静かに頷いた。 「由宇。知っての通り性の悩みはデリケートだ。まだ若い少年たちならなおさらだ」 「ですね。みぃは成人はとっくに過ぎてるけどなんか幼いですから」 「言う、言わないは由宇、おまえに任せるが…俺は言って損はないと思うぞ」 「はい。分かりました。ちなみに先生の息子さん紫苑くんでしたっけ?元気ですか?」 「ああ、紫苑で合っているよ。んー…どうかな?今、15歳で思春期真っ只中でうっとうしがられてばかりだからね。最近は部屋に閉じこもってばかりでろくに顔も見せやしないよ」 「親になるのも大変ですね」 「おまえ結婚は?」 「あ〜…いや、なんつーかする気ないです」 佐久間は居心地が悪そうに目を泳がせ、グラスを口につけた 「由宇おまえなぁ…せっかく使えるようにしてやったのにもったいない」 「ぶふっ。てか、同じ1期生の(おみ)とルームシェアしてんの知ってるでしょ?だから、ちゃんと使ってんよ。その節はあんがと」 佐久間は瀬谷の言葉に吹き、照れながら話した 「あー…懐かしいな。臣か。おまえが熱を出したときにマンションに送っていったことがあったな?そういえば。仲良しだとは感じたが深い仲になっていたのか。しかし、女性と結婚は考えなかったのかい?」 「どっかの瀬谷って人のせいで男のがよくなっちゃいました。悩んだのに、あんたはさっさと結婚しちゃうし」 佐久間は不貞腐れて答えた 「はは。それはすまなかった。おまえがネコか?」 「なっなんちゅう言葉を知ってるんですか!」 「違ったか?」 少年のような屈託のない笑みを浮かべて瀬谷は尋ねた。佐久間は言いにくそうにうつむき 「半分正解半分間違い。リバーシブルなんで、俺」 「そうか。俺があと10歳若ければ抱いてやれたが…さすがに60にもなると厳しいな…」 「な!デリケートだって言っておきながらすごいこと言いますね。パートナーが泣きますよ」 驚いて佐久間は顔をあげ、その顔を見て瀬谷は息子を見るような優しい目つきで笑い 「パートナーはパートナーで大事にしているよ。すごいことと言うが何年経ってもおまえはかわいいままだよ、由宇。だから、そう思っただけだ」 「そっか。ありがとうございます。忙しい中時間作ってくれて」 「いやいや。礼には及ばないよ。また機会があれば呑もう」 「はい」 佐久間の悩みの相談はそこで終わった

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