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由宇 摘便
「あかんやん…どないしよ」
「どうしたの?周防」
「新患の由宇くん、一昨日が排便最終なんですわ。今日中に出るかと思ったんやけどまだで。一応便秘時摘便で出とるんやけど…暴れそうやな…って尻込みしとりました」
「いける?」
「任しといてください、真尾 師長。摘便に関しては元消化器内科所属やから自信あるんです」
「手がいるようならポケベルかナースコール鳴らしてください。応援にいきます」
「分かりました」
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「ちゅうわけでや…掻き出しすんで?」
「は?」
「せやからな?由宇くんの腹ん中に便が溜まっとるやろ?それを今から出すねん」
「間に合ってんだけど?」
「あかん。排便確認とれんまんま夜勤に引き継げれん」
「便にこだわりすぎ。つーか瀬谷先生にいじくり倒されたから疲れてんだけど?」
「なっ!そんなん言うとる場合やないっ便秘は怖いんやで!日に日に便が堅なって詰まるか最悪、腸が傷ついてみぃっ、腸に穴開くで!他にもいろいろ弊害あんねんて」
「しつこい」
「悪いけどパンツ脱がすで」
「ちょっ!だぁっもう脱ぐ!脱ぐから。赤ちゃんじゃないんだから脱がそうとすんなって」
由宇はパンツを脱ぎ周防に投げ捨てた
「ほらこれで満足?」
「そしたら腸の向きがあるから左向いてや?足はちょっと曲げて。パンツは返したる」
拾ったパンツを由宇の手元に置くと周防は手際よく準備を始め、由宇の体の下に防水シーツと尿取りパッドを敷き、窓を少し開けた。
「なるべく動かんといてや?」
周防は左足をベットに乗せ左手で由宇の下腹に触れ、由宇の体をホールドすると右の人差し指にとったワセリンを由宇の肛門に塗りつけた
「…っっ」
「力入れんといて?はーって息吐いとり?入るで」
「ぃや…ぁああああっ!」
どこから出ているのか分からないほど大きな声で由宇は叫び、パンツを握りしめた。
ぎゅうぎゅうと周防の指を締め付け侵入をこばみ
「…い…ぃたっ…痛い」
「さっきまでの威勢はどうした?まだ1cmや。あと3cm頑張り」
「無理ぃっいったいって!」
「はいはい。まあええわ。好きなだけ泣きぃ」
「ひぃーっやぁ…っやぁー!」
泣き喚く由宇を気にせず周防はくるくると指を回しながら中から便を掻き出していった。
「…あ…あ…し、しっこが…」
「ええよ、そのまま出しぃ。腹圧かかってどうしても出る子は出るねん」
「もうやだ…」
「もう終わる。ほら綺麗したる」
周防は由宇の身を清めていくと、身体を抱き起こし由宇の背中をポンポンと叩いた。
「よぉ頑張った。由宇くんはええ子」
「…ひく…ひくっ」
由宇は肩を揺らして泣いた。
はじめての恥ずかしさと痛さ、未知の世界に対する恐怖でどうしていいか分からず周防の肩に顔を埋め泣き続けた
「えらいかわいいことしよるな?自分。よしよし痛かったなぁ、見えへんし怖かったやろ?恥ずかしいことばっかりやしな?」
いろいろ言いたい由宇だったが、とめどなく溢れてくる涙のせいで言葉が出ず、周防にしがみついた。
20年後のいまでは2人は良き友人、飲み仲間である
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