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先輩の伝わりにくい優しさ
「えーと…周防?大丈夫かな?」
真尾が心配し、周防の背中に手を置いた。
小刻みに揺れる背中に状況を察し
「周防、落ち着くまでいていいから。ひとりにするけど大丈夫だね?」
周防は頷いた。
処置室の扉を閉めると、真尾は奈南を呼んだ。
「詩乃。どっち?」
「何が?」
「泣かせてあげたのか、ただたんにいびったのかどっちかな?周防、泣いてるんだよね」
「泣けたんだ。ならよかった」
「ってことは前者ですね?」
「ですね。元気なタイプなやつだから、失敗引きずりそうで。泣いとけば気持ちも整理つきやすいし」
「やり方がまわりくどいね。伝わらないと思う」
「いいんですよ。患者くんの気持ち分かれってのはウソじゃないもの。体験に勝るものは無いと思うし」
「悪いことではないけど…怖い指導者になりそうだね、詩乃」
「褒め言葉って受け取りますね」
「はいはい。じゃあ、業務に入ってもらえる?」
「了解」
ステーションに誰もいなくなると、真尾は周防の元へと向かった。
「周防、落ち着いた?帰れる?」
「師長…すんません、なんか俺…」
「いいよ。きみにうまく伝わったか分からないけど、せっかく詩乃が泣く理由作って泣かせてくれたんだから泣けば」
「なんで、足に刺してきたかは理解できんけど、泣かしてくれたっちゅうことやったんですね。泣くとかキャラじゃないねんけど…でも、おかげでスッキリはしたから、先輩に感謝せんとあかんですね」
「だね。またリフレッシュしていつもの元気いっぱいの周防に戻ったらお礼すればいいと思う」
「凹んでるつもりなかったんやけどなぁ」
「凹まないわけないと思います。僕だってやったことあるけど、凹みましたよ」
「凹む師長…想像つかんわ」
「まあ、僕のことは置いておいて。帰りなさい。気をつけて」
「分かりました。お先です。また休み明け頑張ります!
「おつかれさま」
周防の長い夜勤はようやく終わり、周防は明日以降に向けて気合いをいれた。
リフレッシュ休暇や!
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