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佐渡 呼び出される
「こほ……」
「縁…まだ咳が出てくるな…」
佐渡はベッドのそばに椅子を置いて座り、眠る紫藤の背を撫で、心配そうに見つめていた。
坐薬のおかげで熱は下がって眠れたからよかったが…心配だ。
5年と少し少年棟で一緒に働いているが体調不良で休んだことは滅多になかった
なのにいま、こんなに弱ってる。
紫藤の身を佐渡が案じていると紫藤はうっすらと目を開けキョロキョロとあたりを見回し
「何時…ですか?」
「…ぁ、起きたのか?縁。15時30分ごろだ」
「仕事は?」
「は?」
「仕事」
「いやいや、縁が心配でそれどころじゃないだろ?」
「何を言っているんですか?しっかりしてください」
「縁…しかし、大丈夫か?」
「病院に来る前よりはいいです。ちゃんと終業まで働いてからまた来てください。いい子で待っていますから」
「う…だが」
後ろ髪を引かれる思いで佐渡が立ち上がれないでいると携帯電話が鳴った
🎵〜
「はい、佐渡」
〝院内にいる?〝
聞こえてくる麻弥の声に佐渡は返事をし
「はい。紫藤といます」
〝リカバリーに戻ってこれる?〝
「何かトラブルですか?」
〝千歌ちゃん。摘便したら怒らせちゃってねぇ…泣きながらきみを呼んでるの。たぶん佐渡先生じゃないとなだめるの厳しそうだから助けて?〝
「分かりました。少し待っていてください」
電話を切ると佐渡は紫藤を見つめ、見つめられた紫藤は苦笑し
「私は大丈夫だから行ってあげてください。千歌ですよね?」
「ああ。分かった。行ってくる」
佐渡は紫藤の頭をポンと触り、部屋から出ていった
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