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第1話 僕と彼女と彼氏の話。 act.1 嶋上晴人の場合。
「もう、会わねーから」
何時もの使い慣れたラブホで、最近知り合った男と一戦を交え、裸のままベッドの上で煙草をくゆらせていた僕に、相手は唐突にそう呟くとベッドから起き上がり、ソファに投げ捨てた自分の服を着始める。
僕は何を言われたのか解らずに、直ぐに言葉を発する事が出来ず、首を後ろに回して相手を凝視した。
僕と目が合った相手は、少しだけ肩をすくめて
「もう一回言った方が良い?」
なんて、軽めの台詞。
「………、なんで?」
絞り出た言葉はそれだけで、意外にも声が枯れている事に自分でも驚く。
カチャカチャとベルトを締め、上に羽織っていたシャツを着込むと、相手は僕に近付いて頭の上に手を置く。
「彼女とお幸せに」
そう言いながら僕の髪をクシャリと混ぜると、そのまま静かに部屋を出て行ってしまう。
「………、マジかぁ…」
呟いた直後、煙草の灰が指から綺麗に灰皿に着地した。
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