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第1話

 えっと……なんでこんなことになってんだっけ。落ち着け俺っ!  黒木の部屋で、黒木のベッドに、黒木に組み敷かれて脳内がぐるぐるした。 「どうした急に。ずいぶん脳内テンパってるな?」 「だっ! だだだってっっ! なんか気づいたらもうベッドでっっ!」 「野間、頭パンクしてたからな」  黒木がクッと笑った。 「誘ったのは野間なのにな?」 「そっ?! そそうだけどっ! でも違うだろ?! 想像したのはお互いにだろ! 俺だけじゃねぇだろっ?!」 「ああ、そうだな。ちょっと野間、いったん口閉じようか」  そう言って、黒木が俺の口を唇でふさいだ。 「んぅっ?!」  びっくりしすぎて一瞬固まって、我に返って黒木の胸をグッと押したがビクともしない。 『ま、まままて黒木ーーっ!』  『口ふさいでも心がうるさいな?』 「んんっ、ふ……、ぁ……っ」   黒木まってほんと……っ!    俺は人の心が読める。聞こえてくる。  その人の思いが強ければ、時には映像で見えてくる。  いつからなのかはわからない。当たり前にずっと聞こえていたから、きっと生まれた時からなんだと思う。   この力が自分だけなんだと認識したのは、幼稚園の頃だった。  友達にはうそつきと言われ、親には気味悪がられた。  うそだよ、本当は聞こえてないよと言ったときの、母親の安堵した顔はいまでも忘れられない。  それからは力を隠すようになった。  自分が傷つかないように、自分を守るために、力を隠してずっと生きてきた。  それなりに楽しくやって来たけど、孤独感は常にあった。  ずっと一人ぼっちの気分だった。  高二の春、同じ力を持つ黒木に出会うまでは……――――  

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