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第1話

この世界はアルファのモノ。 それはまあ、誰も言わないけど、暗黙の了解で。 この世界には三種の人間がいる。 アルファ オメガ ベータ。 身体が大きく、運動能力が極めて高く、知能が高く、闘争を目的として生きる種、アルファ。 そのアルファの番であり、美しく、アルファの欲望に耐えれる強い身体を持つオメガ。 そしてそれ以外である多数のベータ。 この三種がそれぞれ別々の種として産まれてくるのならもっと支配関係は分かりやすかったが、ややこしいことにアルファ、オメガ、ベータはそうではない。 アルファ、オメガ、ベータになるのかは第3次成長まで誰にも分からないからだ。 10歳くらいまでは、アルファもオメガもベータも何もかわらない。 突然ひと月ほど苦しみ、身体が作りかえられアルファになる者がいる。 10歳頃に検査で判明してオメガになったとわかるオメガや、発情期を迎えてしまってオメガだと判明したオメガがいる。 そしてそれらがなかったままの人間がベータなのだ。 だから支配は分かりにくい。 肉体的、知能的に圧倒的に優位なアルファが支配しているのは間違いないのに、そのアルファもまたベータ、オメガから産まれるということが。 アルファはアルファだけでは存続できないということが、アルファが種としては世界を支配しない理由だ。 アルファという種が独自の本能に支配されていることもあり、支配は暗黙の了解にされている。 でも、アルファは世界を支配しているし、そしてアルファはただ一人の相手としてオメガを求めている。 それはアルファの本能の1つ、なはずだった。 アルファはオメガ一人を求める、そして番という絆にする、その番システムの中にアルファは存在している、のではなかったか? 支配者であるアルファはオメガにだけは愛されたいと願う。 それがまた、アルファの支配を分かりにくくしているのではなかったのか? そう、アルファはオメガを求めるはずなのに。 「キョウちゃん愛してる」 オレ、15歳平凡この上ないベータの高校生を背中から抱きしめるのはアルファなのである 身長180センチ、アルファがオリンピックにでない理由がわかる裸の上半身を晒している。 濡れているのは風呂上りだからだ。 彫刻のような美しい身体の筋肉は見せかけじゃない。 アルファは普通にオリンピック選手レベルの運動能力を持つ。 オリンピックなどベータのお遊びなのだ。 それはこの身体をみれはわかる。 アルファらしく外見も美しい。 真っ黒な目と同じく真っ黒なクセのある髪。 見つめられたなら、その存在感に圧倒されてしまうだろう。 「いや、オレはオメガじゃないから」 オレはシンの腕を振りほどこうとするけど、外れることはない。 「キョウちゃん好き・・・」 無邪気に言ってくる、このデカいアルファ、シンはまだこれでも13歳なのだ。 10でアルファに変化した。 それまでは普通の子供だった。 幼なじみだった。 オレにめちゃくちゃ懐いてるだけの。 そこから数年でコレだ。 しかも、何故か自分より2つ上のベータの幼なじみに求愛するようになった。 オメガではなく。 「やめろ、当てんな」 デカすぎて怖いものを、尻にこすりつけられ、裸の上半身に抱きしめられている。 慣れとは恐ろしいものだし、毎日こうされてしまって、なんか平気になってる。 自分が怖い。 だが、拒否するに決まってる。 こんなデカいアルファとセックスなんか有り得ないだろ。 オレは可愛い女の子が好きなのだ。 「オメガなんか嫌いだ。キョウちゃんがいい」 唇を尖らす、そんな顔さえ、女の子やオメガが見たらウットリしてしまうだろな、と思う程くらい顔がいい、いやオレでも見蕩れるくらいだ。 だが、ゆっくりスボン越しに尻に押し付けられ、捏ねるように動かれるのには閉口した。 「人の尻でオナニーしてんじやねぇ」 腹に肘を入れた。 結構本気で入れたのに、笑って腕を解かれただけだった。 どういう腹筋してんだ、羨ましい。 「オナニーなんかじゃなくて、キョウちゃんとしたい。オレ、キョウちゃんに挿れたい。キョウちゃんの中でイキたい。キョウちゃんをいっぱい鳴かせてイカせたい」 不必要に真っ直ぐな目で言われる。 そんな綺麗な目で言うセリフじゃないだろ、と思う。 そんなサイズのモン怖すぎるから想像もしたくないし。 が、顔はいい。 本当にいい。 男なのに見惚れてしまうのはたしか。 が、コイツは大学生位に見えても13歳のアルファなのだ。 まだこれからもデカくなるらしいし。 アルファは13にもなれば成人扱いだ。 が、でも、3年前は本当に普通の子供だったのを知ってるから、そうは思えない。 「キョウちゃん、結婚して?」 毎日言われてる。 家に来ない日は電話で。 シンはアルファなので13歳でも結婚できるが、オレは普通のベータなので無理。 だけどそれとは関係なくありえない 「嫌」 そこはハッキリさせとく。 「ん~~~!!」 シンは不満そうに唸って、やらしく尻にそれを擦りつけてくる。 マジデカい。 怖っ。 だが、正直、慣れてしまって何とも思わないことにこそ恐怖は感じても、呆れることには変わらないので、本気で怒る。 「いい加減にしろよ」 そう言えば、シンはやっと離れる。 風呂上りに下だけ履いたハーフパンツの股間の盛り上がりが視覚的に暴力だ。 風呂入ってると何度か入って来ようとしたし、その時に既に臨戦態勢のソレを見たから、どんだけソレが恐ろしいモノなのかは知ってるから余計に怖い。 アルファのソレは俺たちベータのと形状もデカさも違いすぎるのだ。 オメガ、アレ受け入れてんの?凄いと思ったね。 アレは女の子でも・・・いや、マジで。 もちろん風呂に入ってこようとする度に「出ていけ!!」、と追い出している。 が、我が家で勝手に風呂に入るし、中々自分の寮に帰らないし。 それはアルファじゃなかった子供の頃からそうだし。 4歳と6歳。 親達に見捨てられた子供達が抱き合いながら支えあってきたから、シンがアルファになって、なぜだか求愛してきてもシンを拒否するなんてありえないし。 「トイレで抜いたらメシ喰って帰れ」 そう言ってしまう。 明日は月曜だ帰らせないと。 人の家のトイレで、オレの名前を呼びながらオナニーしてる奴のために飯作ってやるのって何なのだろう、と無機質になりながら考えてしまうけど。 「キョウちゃん、好き。料理してるキョウちゃんの前でしてもいい?」 また、ド変態なことを言われてる。 「絶対するな!」 オレは怒鳴った。 とにかく。 オレはシンを拒否できない。 シンが望むように受け入れてはやれないけど、拒否できない。 そして、シンの好物を今日もまた作ってやっているのだった。 何でこうなってしまったんだ、とは思いながら。

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