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第2話

シンと出会ったのはシンの母親がシンを連れて来たからだった。 シンの母親はオメガだった。 シンの父親であるアルファが死んで、シンを一人で育ててた。 アルファがオメガを何も遺さずに死ぬことは有り得ない、特に子供がいたならば。 子供がいなければ、アルファは自分が死ぬ時に番を道ずれにすることはよくあることだ。 だが、子供にはアルファはオメガの次に執着するから、子供のためにならオメガを生かすだろうし、何も遺さないはずがなかった。 なのに、シンの母親は常にお金に困ってた。 使い果たしてしまったのだろう。 オメガらしく育てられ、金銭感覚なとが無かったのだ。 アルファに甘えて可愛がられるためだけのオメガだったから。 一度、番になってしまえば他のアルファの番にはなれず、もう新しいアルファの庇護は有り得ない。 だから、オメガを抱きたいベータや、番ではないオメガが必要な、特殊な事情のあるアルファの相手をしてお金を稼いでいた。 高収入だったはずなのに、シンはいつもお腹を空かしていた。 ベータだったオレの母親も似たような仕事はしていた。 もちろん、オレの母親の場合はベータ相手だったけれど。 まあ、ベータに本気のアルファの相手は務まらない。 アルファは遊びでベータを抱くことは良くある。 女でも男でも。 だが、本気でその欲望をぶつけたりはしない。 アルファが本気で抱けば、ベータは確実に死ぬからだ。 ベータとのセックスはアルファがペータを支配して楽しむ遊びであって、アルファが本気で欲望をぶつけるのはオメガだけだし、オメガはその激しい欲望を受け止められるのだ。 そして、また、オメガを抱けばベータはめちゃくちゃになる。 その快楽は暴力的だから。 アルファに抱かれてもベータはめちゃくちゃになる。 遊びでも凄まじい快楽だし、本気だと本当に殺される。 アルファやオメガとはセックスの意味が違うのだ。 ベータとは。 結論として、アルファやオメガとはセックスしないことが一番だと、ベータは知ってる。 アルファに遊ばれた母親が言ってたから間違いない。 子供にそんな話すんなよな、とも思うけど。 だがまあ、アルファやオメガに弄ばれるベータは後を絶たない。 それをオレは良く知ってるんだ。 シンの母親はオメガだったしね。 ベータを金蔓にしていたし。 でも、本気ではベータをもとめないはずのアルファに求愛されてて、そのアルファを拒否できないのは、そのアルファ、シンが弟みたいなものだったからだ。 シンの母親は知り合い程度だったオレの母親にシンを押し付けた。 ちょっと見ていてほしいと。 プロに頼むのはお金がかかるから嫌なのは丸わかりだった。 シンの母親より稼げるわけがない平凡ベータのオレの母親は、その端金で引き受けて、まだ6歳のオレにシンを任せて、その金で遊びや仕事に行っていた。 オレは6歳で泣いてるシンを抱きしめて泣いてて、それでもなんとか生き延びたのだ。 母親はいつも抱きしめてくれなかった。 オレに抱きつくシンの体温だけがオレの他人との繋がりで。 オレたちは抱きしめあって生き延びた。 互いの体温だけが支えだった。 10歳になって、オレの父親がオレの環境を知り、引き取ってくれるまで、それは続いていた。 父親はマトモなベータで、10歳からは家政婦さんのいる家で暮らした。 泣きながらシンがオレを訪ねてくるのを父親も拒否できなかった、というより、シンの母親にシてもらったんだろうな、と思う。 ベータがオメガに籠絡されるのは簡単だ。 だけど、怖くなったのか、この家にはほとんど帰って来なくなった。 マトモなベータには、オメガは恐ろしすぎるのだ。 ましてシンの母親にはベータは金を引き出す道具だったし。 でも少なくともオレの父親はオレに衣食住、そして教育を与えてくれたし、オレの母親から救い出してくれた。 今でも、たまには父親に呼び出されて食事してるし、感謝はしてる。 オレだけじゃなく、シンも結果的に助けてくれたのだし。 シンはオレの家で保護されるように生活し、10歳でオレの家で突然倒れて苦しみだし、連れて行かれた病院でアルファとして身体が作り替えられているのだと判明した。 シンはセンターに連れていかれ、そしてひと月たって帰ってきた時にはもう、12のオレよりはるかにデカくなっていた。 そこからは母親から親権が奪われ、国がシンの親権を持った。 そして、全寮制のアルファとオメガの学校に行くことになったが、シンは最後まで抵抗していた オレと離れたくない、と。 オレも泣いてるシンを奪われないために、色々抵抗したんだが、俺たちは引き離された。 泣きながらシンを連れていく車を追いかけたのをおぼえてる。 が、毎週末シンは普通に帰ってくるようになった。 何故だかオレの家に。 父親も認めていた。 大人達の間で何かしら話はあったようだった。 父親が我が家に帰ってくることはさらになくなっていたけど。 他で家族が出来たのだ。 良いことだとオレは父親のために喜んだ。 父親だって、幸せになっていい。 そして、その頃からシンがオレに求愛するようになった。 同じベッドから追い出さないといけなくなったのは仕方ない。 どんどんデカくなっていくシンと違って、こっちは発育不良だったからなんか怖かったし。 でも、どうしても。 同じベッドの上で名前を呼ばれてオナニーされても、油断したら後しろからだきすくめられて、尻に硬いのを押し付けられても、シンを突き放すという選択はなかった。 荒れ果てた部屋で抱き合って眠った子供同士なのだ。 オレがシンを突き放すなんてない。 シンだって、オレが駄目だと言ったら止めるし。 そのうち、良いオメガが現れて、シンの性的な興味はそちらに移るだろうと思ってた。 シンの世界にオレしか居なかったことが問題だったんだ、と。

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