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第42話

「キョウちゃん」 シンがオレを呼ぶ。 オレはシンの車に乗り込む。 迎えに来てくれたのだ オレは大学生になって数年になる。 シンも学園を卒業した。 シンは大学には行かずに事業をはじめた。 良く分からないが、まあ、成功しているのはわかる。 オレにはたらかなくても何もしなくてもいい、と言ってくるがオレはそういうわけにはいかないので、バイトをしながら学生生活をしてる。 実家は出た。 父親に家を返した。 父親には感謝している。 オレとシンに家をくれたから。 他所に家庭があっても、父親のお陰でシンがかえって来る場所、オレがシンを待つ場所が出来た。 今はオレ達の家がある。 まあ、シンのマンションなんだけど。 シンが泣いて頼むから仕方ない。 シンは忙しいので週末だけ会うという暮らしには代わりない。 学園のカウンセラーを辞めて独立したユキ先生が偶然近所に越してきて、オレのことを何かと気にかけてくれている。 セックスカウンセラーは辞めて、普通のカウンセリングだけにした、とユキ先生は言う。 そうなると今度はこの顔がネックになるだけどね。 と先生は言うが、先生は本当に寄り添ってくれるカウンセラーなのでけっこう繁盛しているらしい。 アルファはアルファ。 オメガはオメガの悩みがあるんだ、と先生は言う。 シンもたまにカウンセリングに行っている、それはそうだよな、と思っている。 シンは自分をバケモノだと思っているから。 アルファになった時からそう思っているから。 そんなことはない、とオレがいくら言ってもだめだし。 ユキ先生にそこは頼るしかないのかな、とは思う。 だって。 アルファの苦しみはオレにはわからない。 ただオレはシンを愛してるだけだ。 何一つシンに与えてあげられないけど、シンはオレの愛だけを欲しがるから。 ただ愛するしかない。 「キョウちゃん、今日はどこに行きたい?」 シンの声が甘い。 車は目立たない国産車なのも全部オレのため。 オレはまあ、目立ちたくないのだ。 シンは週末帰ってくる度、オレを迎えに来る。 そして、オレを散々甘やかしてそれからまた戦いの毎日に戻っていく。 こんなのオレばかりでシンの休息になっているんだろうかと悩むがシンがそうしたいと言うから仕方ない。 「水族館に行きたい」 オレは言う。 シンが目を細めて笑う。 水族館はオレ達にとって特別だからだ。 あの閉じこめられた部屋の中でオレは幼いシンに一度だけ連れて行ってもらった水族館について良く語った。 シンは泳ぐ魚をテレビ以外見たいことがなかったから、水の中の世界が見られる場所があることに驚いて、オレの話に無知になった。 オレは喜ぶシンのために水族館について語り続けていき、 それはどんどんシンのために大袈裟になり オレのせいでまだ幼いシンはクジラが水族館にはいて、水族館は海のように広いと思ってしまった。 シンは、後にろくに通っていなかった小学校で水族館に行けた時、シンは「こんなの水族館じゃない」と泣いたのだ。 オレはそれを聞いてシンに謝りに謝り、大人になったら一緒に水族館に行こう、と言ったのだ。 オレの話とは違ってしまったけれど、二人で行けばきっと楽しいだろうと。 シンが学園に引き取られ、週末に会えるようになってからその約束を果たした。 シンは魚よりオレばかり見てたけど。 でも。 オレが語った水族館程ではなくても、二人で行く水族館は楽しい。 そう言った。 それからオレ達は良く水族館にいく。 「キョウちゃんの話の中で見た水族館が一番好きだけど」 そう言ってシンは運転しながら笑う。 その笑顔は2人きりの部屋でいたころから変わってない。 信号待ちで助手席のオレの手を繋いだりするのも相変わらずで。 水族館やどこででも、肩や腰に手をまわして恋人らしく振舞ってくる。 もう慣れたけど、「あのアルファがあんなベータと?」的視線は常にある、がそれは気にしない。 したところでね。 シンはオレのだし。 オレはシンのなのだ。 水族館に行ったなら、真っ直ぐ家に帰り、オレが用意していた飯を食べて、シンが皿を洗って。 そしてオレ達はセックスするだろう。 オレはこの数年でとんでもなく淫らになってしまった。 恋人が喜ぶから仕方ない。 行為そのもので満足させられないなら、せめてしたいようにさせてあげたいのだ。 と思うけど。 シンはとんでもない変態だった。 あんな綺麗な顔して、爽やかなのになんであんな色々思いつくんだよ・・・。 オレは毎回恥ずかしくて泣いてる気がする。 もう恥ずかしいことなんかない、とか思っているのに、まだまだあることを教えられる。 いやらしいことをたくさんされて、させられる・・・.。 だけど。 だけど。 お願いされたなら・・・断れないのだ・・・。 途中からは絶対逃がして貰えないのはわかってるのに。 恥ずかしくて泣いてもう無理だと言っても、許して貰えず、とことんされる。 ベッドから逃げ出せたことは一度もない。 でも、寝込まされたことは最初の一回だけで、それはシンがめちゃくちゃ我慢してくれているということでもある 今日は何されるんだ、と怖くもある。 そして、そのくせ身体はもう期待してしまう程に教えこまれてしまっている。 でも今は。 水族館の駐車場に車を停めて入口へ向かう。 シンが手を繋いでくる。 その時だった。

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