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最後の鬼ごっこ⑨

「ふふふ……」  緊張の糸が切れて、俺は笑いだしてしまった。あまりの可笑しさにその場に座り込む。一方鳴海さんは俺が笑ったことに対して、繋がっていた手を投げ捨てるように離すと睨みつける。 「なんで、笑うんだよ!」 「だって……わからないんだろう?」 「お、おう」 「だから、安心して笑ってるんだよ」 「え?」 「まだ、ふられてないってことでしょ、それ」  今度は鳴海さんが噴き出した。  俺と同じように床に腰を下ろすと足を組んで、大きく深呼吸をする。その顔に、もう涙はなかった。 「お前、楽観的すぎだろ」 「楽観じゃないよ、確信だ。どれだけ俺が追っかけてきたと思ってるのさ。最初から盲点だった。あんたを離そうと思ってたこと事態がミス。こうなったら、とことん追いかけさせてもらうよ。地獄の果てまで。覚悟してよね……」  俺の言葉に顔を赤くして、顔をそらしてしまう。否定されないところをみると、受けて立つということか。俺は気を取り直したついでに、胸元から一本取り出すと口に咥えてもう一つの盲点に気づく。 「あ、火持ってる?」 「いや、教室に置いてきたな」 「あぁ、じゃあいいよ……その代わり。鳴海さん、こっち向いて」 「え?」 「嫌じゃないんだろ」 「わた……!」  彼の言葉ごと呑み込めば、少し驚きに身を震わせた。  夕焼けに赤くなる屋上で俺は寂しい唇を慰めるように、鳴海さんへとキスをする。たった一瞬、影はひとつとなった。

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