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※優希と緑朗③
ホテルの階段を登ろうとした瞬間、壁に押し付けられ覗き込まれた。禄朗の瞳の中の欲におぼれかけた優希がいた。
「……あ」
噛みつかれるような口づけに理性を手離す。
日常も常識も何もかも吸いつくされるかと思うくらい、荒々しいキスにしがみついた。
人が来るかもしれない不安も誰かに見られる気まずさも全て関係ない。ただ、禄朗が求めている。優希も求めている。それだけしか考えられなくなっていた。手を引かれ雑踏の中を歩き出す。
前を行く広い背中が破滅しかもたらさないとわかっていても、拒む選択はどこにもない。
ホテルの一室に入るのさえ待ちきれなく互いに体を押し付け合いキスをしあった。合間に鍵をあけ、部屋の中に潜り込む。靴を脱ぐ暇さえ与えられない嵐のような愛撫に、優希は汚れるのも構わずスーツを脱ぎ捨てた。荒い呼吸が部屋に満ちていく。
ベッドに押し倒され、ワイシャツのボタンが飛ぶのも構わない勢いで素肌をさらしあった。何もまとわない姿で抱き合った時、やっとここに戻ってこれたと安堵の息をついた。
「禄朗」
広い背中に腕を回して滑らかで鋼のように引き締まった肌に爪を立てた。杭を打ち込むかのように、強く。
「ぼくの、禄朗」
「そうだよ」
眼鏡越しに禄朗が緩く微笑んだ。
「お前は誰のもの?」
「ぼくは___禄朗、の、ものだ」
そばにいなかった数年が嘘のように、すべては彼のものだった。ないだように静かだった優希の中に、大きな波が起こり飲み込まれていく。
「___そうだよ、忘れるな……お前はおれのものなんだよ、ずっと」
時が戻っていく。離れていたことなんかなかったかのように。
「っ、あ……っ」
歯を立てられきつく吸われて、赤い印が全身にちりばめられていく。
「や……っ、そんなに吸わない……っで」
「好きだったろ?ここ、強くされるの」
「ああっ」
つつましく色づいていた胸の先が、禄朗によってみだらに濡れ赤みをさしていく。指の間に挟まれしごかれるとぷっくり芯を持ち、舌先で転がされると小さく震えた。
「……っ、それ、だめ」
「噛まれるほうが好きだもんな」
大きく健やかな歯で噛みながらしごかれると、小さな爆発がちかちか起こる。上下の歯の間に挟まれたそれは、真っ赤に熟した果実のように実った。
「いっ、あ、やあ……っ」
触れられた場所からほどけ、快楽の種がまかれていく。熱を帯びた体は赤く染まり、欲望の望むまま姿を変えていく。禄朗の好みの体にどんどん作り替えられていくのが分かる。
「優希」
耳の中を直接舐められながら呼ばれると、それだけでどうにかなってしまいそうだった。
「ひゃ、ああ……ん」
「感じやすくて可愛い体のままだな……どうしてほしい?」
「もっとして」
「もっと?」
作り変えてほしい。望むままに。こんな嘘だらけの自分じゃなくて、禄朗の優希に戻れるように。
「禄朗の好きなように、もっと、して」
ねだるように足を巻き付けると、満足した笑みを浮かべた。歯形がつくくらいきつく首筋に噛みつかれると、その刺激に光が散る。
「こんなやらしい体……ずっとどうしてたんだよ、お前」
弾けそうになる性器をギュっと握ると、禄朗は唇の場所を下へとずらしはじめる。へそのくぼみに舌を差し入れ、かき混ぜられた。
ぼたぼたとこぼれおちる先走りの透明が優希の腹を汚していく。
「もうドロッドロじゃん」
「……っ、気持ちよくてどうにかなりそう」
「まだイクなよ?」
我慢できずに揺れる腰を押しつけて、それが口に含まれる。ひときわ高い声が漏れた。
湿っていやらしい音が自分の足の間から聞こえてくるのに興奮したのか、優希は全身を赤く染めた。首を振りイヤイヤ、と何度も呟く。
「恥ずかしいから」
「うそ。好きなくせに」
扱きながらくびれに舌を這わせられると、優希の体が強くこわばった。
「それ、だ……め……っ、イっちゃ……っ!」
「早えな、まあいいや」
止めることなく刺激を与え続けると、我慢できず弾ける欲望が優希の腹を汚す。
「っ、あ……っ」
歯を立てられきつく吸われて、赤い印が全身にちりばめられていく。
「や……っ、そんなに吸わない……っで」
「好きだったろ?ここ、強くされるの」
「ああっ」
つつましく色づいていた胸の先が、禄朗によってみだらに濡れ赤みをさしていく。指の間に挟まれしごかれるとぷっくり芯を持ち、舌先で転がされると小さく震えた。
「……っ、それ、だめ」
「噛まれるほうが好きだもんな」
大きく健やかな歯で噛みながらしごかれると、小さな爆発がちかちか起こる。上下の歯の間に挟まれたそれは、真っ赤に熟した果実のように実った。
「いっ、あ、やあ……っ」
触れられた場所からほどけ、快楽の種がまかれていく。熱を帯びた体は赤く染まり、欲望の望むまま姿を変えていく。
禄朗の好みの体にどんどん作り替えられていくのが分かる。
「優希」
耳の中を直接舐められながら呼ばれると、それだけでどうにかなってしまいそうだった。
「ひゃ、ああ……ん」
「感じやすくて可愛い体のままだな……どうしてほしい?」
「もっとして」
「もっと?」
作り変えてほしい。望むままに。こんな嘘だらけの自分じゃなくて、禄朗の優希に戻れるように。
「禄朗の好きなように、もっと、して」
ねだるように足を巻き付けると、満足した笑みを浮かべた。歯形がつくくらいきつく首筋に噛みつかれると、その刺激に光が散る。
「こんなやらしい体……ずっとどうしてたんだよ、お前」
弾けそうになる性器をギュっと握ると、禄朗は唇の場所を下へとずらしはじめる。へそのくぼみに舌を差し入れ、かき混ぜられた。
ぼたぼたとこぼれおちる先走りの透明が優希の腹を汚していく。
「もうドロッドロじゃん」
「……っ、気持ちよくてどうにかなりそう」
「まだイクなよ?」
我慢できずに揺れる腰を押しつけて、それが口に含まれる。ひときわ高い声が漏れた。湿っていやらしい音が自分の足の間から聞こえてくるのに興奮したのか、優希は全身を赤く染めた。首を振りイヤイヤ、と何度も呟く。
「恥ずかしいから」
「うそ。好きなくせに」
扱きながらくびれに舌を這わせられると、優希の体が強くこわばった。
「それ、だ……め……っ、イっちゃ……っ!」
「早えな、まあいいや」
止めることなく刺激を与え続けると、我慢できず弾ける欲望が優希の腹を汚す。
細かな痙攣がおさまるのを待たず、白濁した粘液を指に取りその下にひっそりと咲く蕾へこすりつけていく。自らの体液で濡れていく蕾に刺激を与えると、それは次を期待してひくひく獲物を求め動き始めた。
「や……っ」
「やじゃないだろ。反応してきた……。でも、ここ固くなってるけど……使ってねえの?」
禄朗に開花され散々快楽を楽しんだ場所も、彼がいなくなってからは本来の使い方しかしていなかった。離れている間に一回でも他の誰かと楽しもうなんて、思うことさえなかった。
「あ……っ、あ……禄朗とじゃなきゃ……しないよ」
「……煽ってんのかよ」
脚を持ち上げひっくり返され、禄朗の瞳にさらされた蕾は彼から与える刺激に素直に反応を示し始めた。ずっと待ち焦がれて、それを求めていたように。
「や、だ……見ないで……」
「見る。シワの一本一本まで、全部見る。全ておれのものなんだろ」
優希のこぼした精液を擦りつけしつこいくらいに解しはじめた。最初こそ違和感にためらいを見せていたその場所も、徐々に受け入れ緩んでいく。指を抜き差ししはじめると、思いのほかたやすく受け入れた。
「ああ、ちゃんと飲み込み始めた……」
「あっ、や……っ、や……」
「可愛いなあ。ヒクヒクして誘ってる」
「言わないで……っ、あ、ああ!」
「でも、もっと濡れたほうがいいだろ」
ためらいもなく口をつけられ、唾液を塗りこめられていく。音を立て犬のように舐められるとくすぐったさと恥ずかしさがないまぜになり、興奮が高まっていく。もっと欲しいばかりに、ぱくぱくと口を開こうとしている。
「や、___っ、舐めないっ……で」
禄朗の柔らかい髪に指を絡めると、今度は舌先が潜り込んで来ようとしていた。入り口をつつきながら厚いぬめりが侵入を始めてくる。敏感な粘膜に対する直接的な刺激に優希は体を震わせた。
「やっ、あっ、あ……」
「濡れてきた……」
熱のこもった声に優希の発情はさらに高まっていく。もっとしてほしい。もっと欲望を暴いてほしい。
自ら膝の裏を抱え受け入れやすくするようにすると、禄朗は満足そうな息を漏らした。
「やらしい眺めだなあ……」
遠慮のない手つきが双丘を押し開き、恥ずかしげもなく口を開いた場所を晒された。施されていた口技で、濡れた場所へ再びゆっくりと指が押し入ってくる。
禄朗のしなやかな指が内壁をこすりあげていく。少し入ったところに、ぷっくりと膨れて彼を待っている場所があった。それをひっかかれると、優希からはすすり泣きにも似た声が漏れた。
「あっ、あっ……ねえ、そこダメ……」
「ココだろ、優希の好きな場所……」
「やああ、ああっ、あっ」
ローションを足され湿った音を立てながら指が抜き差しされていく。ぐちょぐちょと淫猥いんわいな音を立てたその場所は、ひたすら快楽を追い求める。再び上を向いた性器は揺れるままに、透明な体液をまき散らした。
「出ちゃ、う。また……っ、来る……」
「はは」
すげえな、と禄朗が掠れた声を出した。
「優希の中、グッズグズに溶けて俺の指ふやけてきたわ」
「あ、あっ、あ……っ」
入口に引っ掛けた指を左右に開かれると、真っ赤に蠢く内壁がまるでそれ自体に意思があるかのように動いて禄朗を誘った。
「見ろよ。パックリ口を開けて誘ってる……いじらしいなあ」
「やああ」
「もっといじっていい?」
「ダメ、……し、して……あっ、あっ」
与えられる快楽で、何も考えられなくなっていく。もっと欲しい。怖いからやめてほしい。もっと、して。禄朗でいっぱいにしてほしい。壊れる。足先から痺れるような刺激が伝わってくる。大きな波に、のまれてしまいそう。
全身が壊れそうなくらいの強い刺激に襲われて快楽の渦に逆らえず、落ちかけたその時だった。この場所に不似合いなくらい涼やかなベルの音が鳴り響く。
「……っ、えっ」
それは脱ぎ捨てた優希のスーツのポケットから流れ出た、小さな端末から聞こえていた。光りながら震えるそこには、一番見たくない名前が表示されている。
腕を伸ばして拾った携帯を眺めて「明日美ちゃんっていうんだ」と禄朗は微笑んだ。
「可愛い名前だね」
禄朗は通話ボタンを押すと、乱暴にベッドへ放り投げた。「でなよ」と口の動きだけで催促すると同時に、明日美が優希を呼ぶ声が流れてきた。
「もしもし?ゆうちゃん?」
「あ、明日美」
「まだ仕事?終わらないの?」
わざとスピーカーにしたせいでみだらなこの場所に、不似合いなほど涼やかな明日美の声が響く。
「そ、そうなんだ……まだ終わらなくて」
息が止まりそうになった。
動揺する優希に冷ややかな視線を送ると、通話の途中だというのにあろうことか指の動きを再開し始めた。湿った音が小さく聞こえくる。
「っ、だ、だから」
早く電話を切らなきゃいけないのに、端末は離れた場所で明るく光っている。頭を振り、冷静を保とうとしたがうまくいかない。発情がそこかしこで優希を苛んだ。
「大丈夫?」
ふいに明日美の声が不審げに変わった。
「なんか息荒くない?」
「そ、そう。今、階段で荷物、っ運んでいて、ちょっと息切れて……」
「それは大変だー。運動不足だもんね」
「だ。だね。だから……あっ」
さらに指が増やされグルリと指でかき回された。大きく開いた場所からいやらしい音が途切れず聞こえてくる。逃がそうとした快楽がもう一度弾ける場所を探し出す。
「どうしたの?」
「ごめんっ、ほんと、今無理で……」
「ゆうちゃん……?」
もうだめだ___禄朗の硬い熱が圧しつけられ、ヌルヌルと入り口をこすり始めていた。あともう少し。あともう少しで、繋がることができる。
「ごめん、もう切るから」
これ以上こらえることは不可能だった。ギリギリで通話が切れる。強く握ったせいで電源まで落ちたようだったけど、そっちのほうが都合がよかった。これ以上、聞かせるわけにはいかない。
「あっ、あーーっ、あ」
通話が切れた瞬間、ためらいもなく禄朗が体の中に押し入ってきた。圧迫されるキツさも嬉しいと思うくらい張り詰めた熱に、優希は安堵の息を漏らす。
今、体の中に禄朗が存在している。別々だった身体が一つに繋がりあっている。彼の熱が内側から優希を溶かし、命の鼓動を伝えている。
そんな幸せな気持ちを壊すように、禄朗の低い声が届いた。
「明日美ちゃん、声も可愛い。女の子って感じで」
しっかりと腰を押さえ、律動を始めながら言葉を続ける。体の奥深くを蹂躙され、優希の口からは呻きとも聞こえる声が止まらなくなっていた。
「正直に言わなくてよかったの?今、大事なゆうちゃんは明日美ちゃんの知らない男に突っ込まれて犯されながら、あんあんよがってますよって__こんな風に」
角度を変えながら腰を揺する。それに反応するように優希の内壁はひくつき、禄朗をさらに咥え込んだ。
「あーあ。どうすんだろうね、こんなになってるの知ったら。明日美ちゃんびっくりするかな」
「あっ、あ___っ」
「あーすげ……引き千切られそう」
「言わないで……っ」
ガクガクと体を揺らされながら、まなじりを涙が伝っていった。ぽとりとシーツに黒い染みを作る。濡れた首筋に気がついて彼は優希の片足を持ち上げ、さらに奥に分け入りながらも意地悪く口元を歪めた。
「泣くほどヤダった?そんなに可愛い奥さんにばれたくなかったんだ?」
「違……っ、違う」
そうじゃない、と優希は囁いた。
「……ほかの人の声を聞かせたくない。ぼくを抱きながらっ、ち、違う名前を呼ばないで……っ」
優希の気持ちのよくなる場所を的確につきながら、ほかの人の名前を呼ぶ禄朗に腹が立った。背中に爪を立てながら首元にかじりつく。今、禄朗をほしいままにしているのは優希なのだ。誰が何と言おうが、優希だけのもの。
大事にしてきたつもりの明日美も、あの清潔な毎日もどうでもよかった。禄朗がいれば、その他はなにもいらない。
裸で無防備な時の彼にほかの人の声なんか聴かせたくない。優希だけでいっぱいにしてやりたいのに。
「ぼくだけで、いっぱいになってっ」
「……お前」
涙で濡れたままの頬を掴まれて真正面からのぞきこまれた。禄朗はまぶしそうに目を細めると、ふ、と苦く笑った。
「ちょっと、それ反則だわ」
「何が……っ、反則なんだよ」
「反則だろ。だって、なにそれ」
優希の中の禄朗がぐんと硬度を上げた。膨らんだ体積がさらに優希を満たしていく。
「あっ」
「ヤバイって、可愛すぎるって、お前……怖えな」
もう一本の足も抱え込まれ、折り込んだ体の奥に深く潜り込んでくる。
「あーっ、あ、深いっ……」
「そりゃそうだろ。燃えるだろそんなこと言われたら」
抱き寄せられて何度もえぐられると、光の粒がちりばめ始めた。
「ダメ、それ、飛ぶっ」
「大丈夫」
「怖いっ、あっ、ああっ」
小刻みに、そして大きくかき回されて、優希は真っ白な空間へと弾き飛ばされた。
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