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〜番外編〜
フランスへ来て早いことでもうすぐ一年が経とうとしている。
ということは……俺達も結婚して一年になるということだ!
だいぶ環境にも慣れてきた。
だがしかし!フランス語は俺も紫恩さんも全くダメ。いつなっても覚えられない。
じゃあどうやって生活してるのかって?
そりゃもちろん気合いだよ。気、合、い、!
話しかけられても「WOW!」「WO〜!」「いえあ」とか言っとけば案外なんとかなるもんだ。
「日本食がそろそろ恋しいですね」
「卵かけご飯が食いたい」
「確かにそれはわかるかも」
フランスでは生卵を食べる習慣がない。
いや……フランスってより生卵を食べる国は多分だけど日本だけだ!
生で卵を食べようとするもんなら全力で止められる。
だから余計に卵かけご飯が恋しくてたまらないんだと思う。
だってそんなこと言われたら俺も卵かけご飯が恋しくなってきたもん。
「人間ってないものねだりだと思いません?ここに来た当初は『フランスに一生住む!』なんて意気込んでいたくせに今となっちゃ『日本に帰る!』なんて言っちゃってますもん」
「まあそんなもんだろ」
「そうですね。ちなみに今日の夜ご飯は何がいいですか?」
「琉生」
「……死ね」
俺達の会話はいつもこんな感じ。
昔と変わったところと言えば『夜ご飯何がいい?』なんて聞いちゃってるところだろうか。
紫恩さんがド変態なのは変わらないし(毎日愛し合っている)俺も俺で相変わらず俺のまま。
だけど結婚というのはもう少しなにか刺激があるものだと思っていた。
なのに!思ったより何も変わらなくて『これが結婚か〜』って感じ。
「まあ……けど未だに九条って苗字は慣れないかも?」
未だに『九条琉生』なんて言われると照れくさいなとは思う。
紫恩さんも「あ、お前九条か」なんて言うし。
「よし、今日は肉じゃが作れ」
「はあ?なんなの急に」
「肉じゃがが食いたい。ドロドロの」
「俺はドロドロ派じゃないの」
「お前フランス人じゃないのか?日本人はみんなドロドロが好きだぞ」
「そんな話、初めて聞いたわ」
あ、そうそう。1つ問題があったのを忘れてた。
俺達はどうも食の好みが合わない。
例えばカレーの具。俺は大きめが好きなのに紫恩さんは小さめが好き。
そしてシチュー。ご飯にかけるかかけないか問題だ。
俺は絶対にかけない派なのに対して紫恩さんはシチューはご飯にかけるものだと思っている。
俺は誰かに聞いたことがある。
夫夫(夫婦)にとって食の好み問題は離婚に繋がりかねないと。結婚生活もうすぐ一年目にして危機だ。
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