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え、急に!?

「だから……なに?」 「何回も言わせるな。親父が組を下りる。この意味わかるか?」 「わからない」 「俺が組長ってわけだ」 「はあ!?」 ここはフランス。そう、フランスだ。 事の発端は一時間前。 組長様から紫恩さんへの着信が入った。 『俺、組長辞めちゃうから〜 お前が帰るまでは俺が九条組を守るけど後はお前がどうにかしろよ、バカ息子。じゃあね〜』 スピーカーだったため俺もその会話を聞いていた。 意味がわからなかった。 たこ焼きさんに詳しい話を聞くと愛する恋人ができたとかなんとか…… そんな理由で?とは思った。思ったんだけど…… 恋人さんが「ヤクザなんてやめて!」と必死に言ってくるもんだから恋の免疫がない組長様はそれが可愛くてつい「わかった!」なんてバカなことを言ってしまったらしい。 一度、口に出してしまったことは曲げたくないらしく紫恩さんに組長を譲ると…… 「急になんなの!?」 「俺が親父の跡を継いだところでお前にデメリットでもあるのか?」 「あるよ!もう俺の体はフランスで慣れてんだよ!いい加減にしろよ!俺を振り回すなよ!」 「日本に戻ればまた日本に慣れるだろ」 そんなことを言ってるんじゃないんだよ!! 色々手続きとか面倒臭いじゃん? そもそもその手続きだって誰がすると思ってるの? 「ありえない」 「直ぐに戻るとは言ってないだろ」 「周りの人達にも悪いと思わないわけ!?」 「思わないな」 薄情者!バカ!なんなの!? フランスに来てわざわざ籍を入れて式まで挙げてやっとフランスの環境に慣れた頃に何わけのわからないこと言っちゃってんの!? 「もう……振り回さないでよ」 「お前はいじめられたいタイプじゃないのか?」 「は……?」 この人、ナニイッテルノ? いじめられたいの意味が違……って、いや俺もなにを言おうとしているんだよ、バカ。 「悪い、お前を振り回しすぎているのはわかっている。だが、俺はヤクザなんだ。わかってくれ」 いやいやそんな急に真面目な顔をされて言われても…… 「ヤクザなのは重々承知なんだよ!」 「それじゃ――」 「もっと2人の生活を楽しむべきだろって言ってんのなんでわかんないの!?」 どうやら俺の言葉が効いたらしく紫恩さんの目は取れそうなくらい開いていた。 「ああ、なるほど。それなら別荘でも買おう」 「は……?何言っ――」 「お前が俺と毎日したいのは理解した。日本で家を買えば今みたいに毎日できるだろ」 いやいや……だーかーらー! そういうことじゃないんだってばー!!!!

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