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第20話 おまけの後日談。R18

 橘が乱入してきたあの配信は、過去一の売上を記録したと、社長から連絡があった。  『イヤ、マジでヤバいよ~。何?恋人と打ち合わせしてたの?』  電話口の向こうで、ケラケラと笑いながら社長が俺に尋ねてくるので  「そんなワケ無いだろッ!!」  俺は片手を額にあててそう叫ぶと、大きく一つ溜め息を漏らし  「あの後も大変で……」  『え、喧嘩したの?』  俺の台詞に社長は、不謹慎だったかと笑いを止めて、不安気に聞いてくる。  「イヤ………ッそれよりも、質悪ィ……」  『ッ!?わ、別れては無いでしょ?』  声のトーンを落として言った俺に、社長は動揺しながら聞いてくるので  「別れては無い、ケド……。大変だったんだよッ」  『あ~~、びっくりした。別れて無いなら良いわ。またお給料は振り込んどくからさ恋人と美味しいものでも食べに行ってよ?』  「ン……、社長、ありがとう」  深くまで聞いてこない社長に安堵しつつ、俺は今までのお世話になった気持ちを込めてお礼を言うと  『アッハ。また事務所にも暇な時、顔出してよ?ンで、別れたら戻っておいでね~』  しんみりにならないように明るく言ってくれる社長に  「別れねーから。また顔出すわ」  と、言って電話を切った。  今俺はいつものように橘の部屋にいて、ハウスキーパーの仕事をしている。橘は今日会社に出社していて、後もう少しで帰宅してくる予定。  さっき、いつごろ帰ってくるかの定時連絡がラインに届いたので、俺も今日の晩ご飯の献立や橘宛てに届いていた荷物の事を返信し、風呂掃除をしていたところに、社長から連絡があったのだ。  あの配信が終わり、次の日から俺は橘にお仕置きをされている。  てっきり俺の中で、橘と配信中にしたアレがお仕置きだと思っていたが、どうやら違ったらしく橘からは  『プレイ中にはずっと、君の事は触れて褒めていただろう?』  と、言われた。  ……、まぁそうだな。橘がコマンドを言って、それに従うと言葉では無く俺にキスや触れるという形で褒めてはくれていた。  じゃぁ橘があんなに不機嫌だった理由。よくよくあの後話をしてアイツの思っている事を聞いてみたら、まぁ、誰だか解らない奴に俺の痴態を見られる事への不快感と、最近捕まったコンシェルジュの田中も俺の配信を見ていた一人だったワケで……。  そういう事が重なっていた時に、俺が挨拶だけでも配信をするのは心配だったというのが一番の理由だったらしい。そう言ってくれれば良かったのに、本当時たま橘って言葉が足らないんだよな……。  だから俺が配信していた時も頭に血は上ったが、見ているリスナーに自分のモノだと解らせる良い機会だとも思ったらしい。  だからアレは橘の中でお仕置きでは無いんだと。………………、だったら……?  俺がハッと察したように橘の顔を見ると、アイツは意地悪な表情を俺に向けて  『今日から三日間、自慰は禁止だ。そして私は君に触れない』  フンッ。と息を吐き出しながら俺に言った橘に対して、正直俺は心の中で余裕では?と思ってしまった。  そりゃぁ、俺も男だから橘とのプレイ以外で自慰する事はある。が、そんなに頻繁でも無い。それが三日。ましてや橘が俺に触れないって言ってもその数日間だけだろ?余裕、だよな?  そんな考えでいたから、俺は橘のお仕置きに、それで橘の気が済むならと了承したのだ。  そしてつつがなく三日間は過ぎていく。  ホラな。やっぱり余裕だったな。と三日目の夜に橘と一緒に夕飯を食べ終わり、片付けが終わって帰ろうとすると  『石川君、私と一緒にバスルームヘ』  と橘から言われ、俺はお仕置きが終わり、プレイの誘いかな?と思ってアイツの後についてバスルームヘ向かった。  結局、俺は我慢できたし橘の方が俺より我慢ができなかったのでは?なんて……、少しそう考えると嬉しいような楽しい気分でバスルームへ入っていく。と  『コレで除毛して欲しいんだが?』  ズイと橘が俺に差し出してきたのは、剃刀とボディー用のシェービングフォーム。  『はぁッ!?』  なんの特殊プレイだよ?と、橘の顔を見ると、至極真顔で俺を見詰める橘の顔があり……。  『え?……、どこを……?』  なんて、聞かなくても大体予想はできていたが、一応確認の為に聞いてみる。すると  『陰毛だな』  予想通りの返答に、俺は続く言葉が見付からず橘を見詰めると  『私は君に触れないと言ったからな。君がしてくれ』  言いながら橘は俺にそれらをグイと押し付けると、バスルームの壁に背中を預けて胸の前で腕を組み、何も言わずに俺を見る態勢にはいっていて……。  『………ッ、てかお前が見てる前でしろっていうのかよ……』  眉間に皺を寄せながら呟く俺に  『そうじゃなきゃ仕置にならないだろ?』  ……………。どうやら橘の中ではお仕置きは続行中で、止めてはくれないらしい……。  俺は小さく溜め息を吐き出し腹を決めると、穿いていたパンツとボクサーを脱いでシャワーを捻り出す。  温かいお湯で一度陰毛を濡らして、シェービングフォームを自分の陰毛へと付けていく。そして、剃刀をあてがいゴクリと喉を鳴らした。  二十六年間生きてきて、初めて陰毛を剃るのだ。定期的に鋏でカットはしていた。それは配信用にしていた方が良いと、社長にアドバイスされていたからだ。 だが、全剃りは初で……。ちゃんと傷付けずに剃れるのか不安だ。  『何してる?早く始めてくれ』  姿勢を崩さずにジッと俺を見詰めたまま橘が呟く。  俺は一度橘をキッと睨み付け、ユックリと剃刀の刃を肌にあてて……  ジョリッ。  滑らすように上から下へと剃刀の刃を動かすと、綺麗に泡と毛が無くなる。  ジョリッ、ジョリッ、ジョリッ……、ショリッショリッ……。  お互い無言で……、傍から見れば異様な空間だろうなと思いつつも、俺は自分を傷つけ無いように真剣に、慎重に刃を滑らせていく。  綺麗に泡と毛が俺の陰部から無くなり、サッとシャワーで洗い流し、橘に視線を向け  『……、満足したかよ?』  と、呟くと  『……、じゃぁ次はこっちだ』  橘は壁から上半身を起き上がらせバスルームを出ると、俺にバスタオルを渡し俺が拭くまで待機する。  俺も渡されたバスタオルで下半身だけ手早く拭き上げると、持って出た下着を再び着ようと片脚を上げるが  『そのままで、一緒に……』  と、脱衣所を出ていく橘の後を、下半身だけ何も履かずに付いて行く。  橘はリビングのソファーに座ると  『私を跨いで座ってくれるか?』  俺の顔を見ながらそう呟き、ジッと動かずにいるので、俺はソロリと言われた通りに橘と向かい合う形でソファーの上へと上がる。  ……………。プレイをするのか?ケド、フェロモンや圧は出てない……?  プレイ前には必ずDom特有のフェロモンや圧でSubの俺を支配下に置こうとする。それによって俺もスイッチが入るのだが、そういう感じでも無い雰囲気に、何をされるのか解らない不安が俺を包む。  『不安にならなくても良い、別に君を傷付ける事をしようなんて思って無い』  俺の不安が解ったのか、橘は落ち着いた口調でそう言うと、自分とソファーの肘掛けの間に置いていた普通の紐を取り出して  『少し君に触れる』  と言って、先程俺が除毛したか所を指先で触れる。  『ッ……』  三日振りに橘が俺の体に触れた事への感触がリアルで、俺は一瞬息を呑む。が、橘は淡々と事務的な仕草で俺の竿の付け根に持っていた紐を巻き付けると、キュッと絞り自分の指先を少しだけ紐の中へと入れ込むと、器用にくくり付ける。  俺は橘が何をしたいのか解らずに、ジッとその行為を見詰めていると  『キツイか?』  不意に俺に視線を合わせて橘が尋ねるので  『……少し』  とだけ答えると、そのまままた視線を戻して、今度は小さい鋏を先程紐を出した所から出し、パチリと切る。  そうして、いきなりDomの圧を出すと  『Stay』  のコマンドを口にする。  『………ッ!』  いきなりのコマンドに俺は、橘の肩に両手を付けてそのまま『待て』の態勢で静止すると、橘は自分と俺の間の膝上に横に置いていたのだろう器具をカチャリと出し、置いていく。  その器具は透明な物で、一番大きな形をしている物を見て、俺は喉を鳴らしてしまった。  その形は男性器の先端に良く似ている物だったから……。  『………ッ、それ……』  俺がそれだけ言って言葉に詰まっていると、橘は先程切った紐と輪っかになっている器具を手にし、部品の大きさを比べるとその一つを選んだ後、その輪っかに更に柔らかい素材の物でその輪っかを覆い  『カフリングだ。これだけだと皮膚にあたって痛い時があるから、シリコンホースを付けて痛くないようにする』  と、説明をしてくれるが……、俺が聞いてるのはそういう事じゃ無くて……ッ!  俺がそう言おうと口を開く前に、橘は先程紐で縛っていた俺のモノの付け根にそのカフリングを装着する。  装着されれば、少し食い込む感触に俺は息を呑んでしまい言葉を発せなくなる。  そんな俺を橘は無視して、棒状の物をそのカフリングの穴の開いた部分に通し、そうして残っていた男性器の先端部分の部品を手に取り  『ン……?やはりこれだけだと長さが少し足りないか……』  ブツブツと呟きその部品をつける前に、多分長さの調整をするために入っていたのだろう、違う部品を先程の棒状のところへと入れ込み、先端部分を合わせると  『ン、良さそうだな……』  と、言って俺のモノの先端を掴むと、その器具の中へと嵌め込もうとする。  たが、器具の入り口が狭くすんなりと入らず、一瞬橘は俺に視線を向け  『大きくするなよ』  一言、俺にそう告げるとパンツからポケットローションを取り出すと、パッケージを破り俺のモノへとトロリと垂らす。  そうして滑りを良くしてから再度その器具を俺のモノへ取り付けると、先程の棒状の物と先端部分の部品をカチリと鍵で留めてしまう。  ……………ッ、その見た目から貞操帯だと直ぐに解ったが、初めて着けられる衝撃に言葉を無くしてしまった俺は、着いているその器具を凝視していると  『もう一度ローションを洗い流してくると良い』  橘はDomの圧を消し、俺に笑顔でそう言うと、再び俺が橘の上から退けるまで触れないつもりなのか動かなくなる。  俺は橘の肩から手を外し、膝の上から退くと言われた通り再びバスルームヘと引き返してローションを洗い流す。  『……ッ、マジかよッ』  シャワーを出して、自分の声を消すと俺はそう呟いた。  三日間自慰をさせなかったのは、多分この貞操帯が届くまでの時間稼ぎで、これからどのくらい俺に我慢させるのか解らない。  しかも除毛させたのも根元に付けるカフリングが毛を挟ませない為にやらせてる……。  先程橘は俺に、『君を傷付ける事をしようとは思ってない』と言ってたから……。  肌にあたるカフリングはシリコンホースで覆っているので、締め付け感はあるが痛みは無い。  本当に勃起する事だけ禁止した器具を俺に付けたのだ。  先端部分も無数に穴が開いているので、通気性や風呂、用を足す事もできる代物で……。  俺の事を第一に考えて選んでいる事が理解できれば、無機質な物で締め付けられている感覚も……  『クソッ……、アイツいつまで俺に我慢させる気だよ……ッ』  下半身にジンワリと広がる火種を、俺は悪態を吐いて見てみぬ振りをした。  そうして橘に貞操帯を着けられて、今日で一週間経つ。自慰禁止からだと十日間。  流石に俺もそろそろ限界だ。  その間アイツは一度もプレイをしてくれず、そのくせ俺が貞操帯を着けてから触れる事を再び再開したのか、スキンシップは多くなり俺を悩ませた。  そのうちの一つが昨日だ。  橘が突然俺と一緒に風呂に入ると言い出し、俺が大変な目にあった。俺が嫌だと何度言っても橘が折れた事は無いので、今回もまぁ……入る流れになったのだが……。風呂に入る時に貞操帯を一度外され、橘は器具が食い込んだり擦れていないかをチェックし、伸び始めた陰毛を今度は橘が剃る為俺のモノを持って剃刀を俺の肌に滑らせたのだ。  触られていなかった事へのフラストレーションと、橘が剃っているという事実に興奮してしまった俺は、当然勃ってしまうワケで……。  たがアイツはそのまま放置を決め込んでしまった……。何度か触って欲しくて、そういう感じで誘ってはみたが……ノッてきてはくれず……。俺が萎えるまでずっと放置して、萎えたらまた貞操帯を着けられて……。  ムラムラとイライラが、そろそろ限界なのだ。最近は直ぐにプレイや、抱いて貰えるよう橘が会社ヘ出勤する時は、帰って来る前に必ず準備をしているし、自宅で橘が仕事をする時は一旦自分の部屋ヘ戻った時に準備している。そうすると必然的にモノは勃ってしまうのだが、貞操帯のせいで勃ち上がる事ができず、器具に膨張したモノが食い込む形になるだけなので、辛い。そうして頭の中が、それだけしか考えられないようになってくる事も……。  貞操帯を意識してしまえば、必然的に橘の事を思い出す。最初はアイツが部屋にいない時でも縛られている感じがして少し……幸せな気分というか……変だけど安心感というか……そういうモノを感じれていた。  だが、日が経つにつれ開放されたい欲求や、もっと触って欲しい感情が強くなって……。  ピンポ~ン。……、ガチャッ。  インターフォンの音にビクンッと肩を揺らし、俺は玄関へと足を向ける。  玄関へと顔を出せば、会社から帰ってきた橘が、靴を脱いでいるところで  「おかえり、風呂と飯どっち?」  「ただいま。風呂かな」  「ん、沸いてるから」  「ありがとう」  ジャケットとネクタイを受け取りながら、いつもの会話をして俺は橘の寝室へ。橘はバスルームへと行く。  寝室のクローゼットヘジャケットとネクタイをファブッた後掛けて、再びバスルームヘ戻って脱衣所で橘のシャツを洗濯機へ……と掴むと、フワッと橘の体臭を感じて、俺はシャツを抱き締めてスンッと匂いを嗅いでしまう。  ……………ッ、ハァ、マジで……ヤバいよな。  頭では解っているのだが、どうしても止められなかった。嗅いでしまったら自分のモノが反応してしまうのに……。  ギチッと勃ち上がりかけたモノは、貞操帯で勃起できずに、圧迫感と少しの痛さを伴って俺を苦しめる。  俺はシャツから強引に顔を外して、洗濯機に放り込むとスーツのパンツを持って脱衣所を出る。  ズキズキと痛む下腹部の鈍痛に耐えながら、パンツもクローゼットヘしまい夕食の準備をしにキッチンへと行き、二人分の食事を用意する。  風呂から上がって、テーブルの椅子に座る橘に  「今日も飲むんだろ?何する?」  と、平静を装って尋ねると  「ビールを頼む。それと石川君」  冷蔵庫からビールとグラスを取り出している俺に、後ろから橘が俺の名前を呼ぶので  「ん~~?」  なんだよ?の意味を込めて返事をし、振り返った俺に  「この後、プレイするから。そのつもりでいてくれ」  なんて、今日の飯も美味そうだな。みたいな感じでサラリと呟いた橘の台詞に、俺は一瞬固まり次いでは  「べ、別に宣言しなくても良くね?」  自分の顔が一瞬にして赤くなるのを感じながら、テーブルにグラスとビールを置くと  「何、期待してるのか?顔が赤いぞ」  意地悪く面白そうに口元を歪めながら言う橘に  「バッ!……、デリカシーッ!!」  「ハハッ、すまない」  ガタガタッと大きな音を立てて俺も椅子に座ると、橘は笑いながら  「私もそろそろ限界でね、良いかい?」  と、ビールのプルを開け液体をグラスヘ注いでいる。  「べ、……ッ別に……」  口ごもる俺に橘は  「では、食べ終わったら寝室へおいで」  さ、食べよう。と胸の前で手を合わせて橘は頂きます。と呟き夕飯を食べ始める。  俺も橘に続いて食べていくが……、目の前にいる橘の食べる姿がやけに目に付いてしまいチラチラと見てしまう。  箸で夕飯を口元に持っていき、唇から覗いた舌で口の中に招き入れ、噛み咀嚼する。意識して見てしまえば、どことなくエロく感じてしまうのは、俺が今欲求不満だからだろうか……?  「どうした?」  俺の視線に橘は不思議そうにそう聞いてくるが、視線が絡みそうなところで俺はフイと視線を外し  「何でも、無い……」  モゴモゴと返事を返して、俺もまた夕飯を食べ始めるが……、あまり味を感じなかった。  食事が終わって、食器などを片付けていると  「先に行ってる」  橘がグラスに入った酒を一気に煽ってカウンターに持ってくると、俺にそう言うので  「解った……、あ、そういえば荷物寝室に置いてるぞ」  今日の夕方、橘宛てに届いた荷物の事をもう一度伝えると  「ん、ありがとう」  ふんわりと笑って返され、橘は寝室の方へと消えていく。  ……………。えらく機嫌が良いな。  橘にとっても俺とプレイをするのは十日振り、だからか?なんて安直な考えをしてしまうが……。そうだったら嬉しいと思ってしまう自分もいる。  食器を片付け、全部大丈夫だよな?と部屋を一度見渡し確認すると、俺も寝室へと足を向けた。  コンコンコン。  寝室のドアを少し緊張気味にノックする。  「入りなさい」  と、橘の声。  ガチャリとドアノブを押して扉を開ければ、途端にDomのフェロモンと圧が俺を包む。その感覚に早くも俺の項は粟立ち、その場に立ち尽くしていると  「Come」  橘が手を差し出し『おいで』とコマンドを言うから、俺はユックリと一歩を踏み出し橘の側まで歩いていく。  橘の側まで行くと、差し出した手で俺の手首を橘が掴み  「Strip」  今度は、『脱げ』の命令に一瞬俺は戸惑う。kneelでは無く、直ぐに脱がせる意図が解らず固まっている俺に  「どうした?まだ貞操帯を着けていたいのか?」  少し楽しそうに呟く橘の台詞に俺は、あぁやッと外してくれるのかと安堵し、次いではジッと俺を見詰める橘から視線を外して掴まれている手首をソッと退かした。  着ている服を脱いでいく俺を、ずっと眺めている橘の視線が体にまとわり付き、少し息が上がってしまう。  羞恥心に目の前がクラクラとするが、それでも自分が選んだDomからコマンドされてしまえば、Subにとってそれは至上の喜びになる。  一糸纏わぬ姿で、下半身の一部分だけ無機質な物を着けている姿は、橘にどう見えているのかと考えれば、恥ずかしさと同時に体の奥から湧き上がってくる欲で、頭がどうにかなってしまいそうだ。  「Good、言う事聞けて偉いな」  橘の真正面に立ち、コマンド通りにできた俺に、優しい声音と共に橘がスリッと体に触れる。  「……ッ」  ただそれだけの事で、俺は息を呑んでしまい吐き出した吐息は熱い……。  「ん?少し興奮してるか?」  俺の顔から視線を下にさげた橘が、貞操帯を見て嬉しそうに呟いている。  俺はモジッと少し太腿を擦り合わせると  「Stay」  『待て』と言われ、素直に従うと橘はベッドの上に置いていた貞操帯の鍵を掴んで、カチリと外す。  始めに着けていった順番とは逆の手順で貞操帯を外していくのだが、少し勃ってしまっている俺のモノは、一番最初の器具スペーサーから外すのに少し手こずる。たが、橘は落ち着いてベッド横のチェストヘ手を伸ばすと、引き出しからジェルを取り出し器具にジェルを垂らすと、殊更ゆっくり慎重に俺の先端をスペーサーから外していく。  俺のモノを傷付けず取り出した後は、棒状のロックピンを抜いてカフリングを外すと、一度クイッ、クイッとモノを持ち上げたりして擦れていないかなどを確認し  「大丈夫なようだな」  一人呟いて、俺の顔を見るために一度視線を上げ、柔らかくニコリと微笑むと  「Kneel」  『お座り』の指示に俺は橘の膝の間に体を入れて床の上へ座ると、そのまま橘の太腿に顔を預ける。  「Good Boy」  橘の柔らかい声音で褒められ、俺の頭に手が伸びて優しく撫でられると、俺の口から甘い吐息が漏れ出てしまう。  「石川君、お仕置きはどうだった?少しは堪えたか?」  頭を撫でながら俺に問い掛けてくる橘に、俺は顔ごと橘に向けて  「結構……ッ、キツかった……な」  「ちゃんとこっちに顔を向けて言えて、良い子だな」  素直に感想を言った事よりも、顔をちゃんと橘の方に向けた事が良かったのか、頭に置いていた手を頬の方に滑らせてスリリと撫でてくれる。  俺はその心地良さに一度目を閉じて、再び開けると橘がジッと俺を見ていてドキリとしてしまう。  「ん?どうキツかったのか言えるか?」  次いではそう聞かれて、俺は一度口をキュッと閉じてからユックリと  「……ッ、お前に……触れてもらえない、のが……キツかった」  視線を合わせながらモゴモゴと呟いた俺に、橘は意外そうな表情を向けて  「貞操帯は、キツく無かったと?」  「イヤッ……、それもキツいよッ!結構……ヤバかった……ケド……ッ」  「けど?」  「最初は……お前が側にいる感じがして……ッ、あ、んしん……したというか……ッ。それよりも触れてもらえない方が……精神的に、辛くて……ッ」  「……ッ、ハァ。君ね……」  橘が呆れているのか溜め息を吐き出すから、俺は少し慌てたように  「あ、で、でも貞操帯着けてから触れてもらえるようになったし……ッそしたら今度は貞操帯の方が辛くて……」  折角橘が用意した貞操帯がお仕置きにならなかったと勘違いされたと思い、俺は捲し立てるように喋るが、俺が喋れば喋る分だけ橘の眉間に皺が寄っていき、俺は戸惑う。  えッ……、えッ?俺、何かまずい事をペラペラと喋り過ぎてるのか?  そう思って、そこで口を閉ざして橘から視線を外すと、頬を撫でていた橘の手が顎に伸びてグイッと掴まれ、橘の方に顔を上げさせられる。  「両方、辛かったって事で良いのかな?」  強引に合わせた視線の先には、獰猛な雄の顔をした橘がいて、俺はコクリと喉を鳴らす。  「……ッそう、だな……」  喉からそう声を絞り出した俺に、フッと満足そうな顔を俺に向けて、顎から手を離すと橘は自分の傍らに置いてあった今日届いた荷物の箱を開けて、中身を取り出す。  「……ッ!」  取り出された物から俺は目を離せない。  橘は自分の太腿の上へとそれを置くと  「ご褒美だ、自分で着けなさい」  と、呟く。  そう言われた途端に、シビビビッと腰から背中にかけて電流が流れたと思うほどの気持ち良さが駆け上がり、俺は再び橘の太腿にクタリと顔を預けてしまう。  視線の先には先程橘が置いたColorが、黒く滑りながら光りを放っていて……。  「こ、れ……ッ」  甘い吐息と共に橘ヘ聞く。  Colorは『首輪』だ。俺と橘の関係が成立した事を形で表す唯一の物。  今までだって、俺は橘のパートナーだと言われてきた。それだけでも十分に俺は嬉しかった。俺を自分のSubとして受け入れてくれたし、俺も自分のDomとして橘を受け入れたから。  けど、目に見えない物じゃ無く、ちゃんと目に見える形で表してくれた事が、何よりも嬉しい。  俺は無意識に橘の太腿に額を擦り付ける。  「十日間耐えたご褒美だ。気に入ってくれたか?」  俺の後頭部を撫でながら橘が呟くが、俺は言葉にできずにコクコクと首を上下に振る事しかできない。  そんな俺に橘は、はぁッ。と溜め息を吐き出し  「オイ、いつも言っているだろう?私に聞かれたら?」  俺の態度に声のトーンを落とした橘の言い方に、ビクリッと肩を揺らして太腿から額を離し橘の顔を見上げる。  「……ッ、なんて顔してる……」  後頭部にあった手が俺の顎をスリスリと撫でながら橘がそう呟くが、自分が今どんな顔をしているかなんて解らず、ただ撫でられている気持ち良さに、目を閉じると  「着けてくれないのかい?」  俺が嬉しいのだと解ってくれたのか、それ以上俺に何も言わずに、橘は先程のように柔らかく俺に問うてくる。  俺は微かに震える指先でColorを掴むと、留めてあるスナップボタンを外し自分の首ヘ巻き付けていき……。  ………ッ、ヤバい、コレ……ッ、俺、コレ……着けたら……ッ。  先程から橘のコマンドに従うだけで、俺の中心のモノは勃ち上がり痛い位に張り詰めていて……。  首の後ろで、自分が苦しく無いところを見極めると、パチンッ、パチンッとボタンを留める。そうして自分の首にColorを嵌めてしまえば、吸い付くような革の感触に全身が気持ち良さに震え、たったそれだけの事なのに、俺のモノからはビュクッと漏れたように先走りが溢れ出す。  「キツくは無いか?」  橘は確かめるように自分の指をColorと首の間に入れ込んだり、肌にあたるか所を入念に見ながら俺に聞いてくる。  「……ッ、だ、い……丈夫……」  Colorは三層の革でできているのか、首にあたるか所にボタンの感触は無く、前部分には金具のリングが付いた革が三か所ビスで留めてあるが、ビス部分も首にはあたらない仕様になっている。そして驚くほどその革も柔らかく、肌あたりはとても良い。  「ちゃんと言えて、良い子だ」  今度はちゃんと言えた俺に、橘は優しく微笑みながら頭を優しく撫でると、再びベッドの方に腰を捻って何かを手に取ると、俺の目の前にそれを見せる。  「アッ……」  橘が手に取ったのは、リードだ。それを見た瞬間、ドクンッと俺の鼓動は跳ね上がる。  ユックリとした動作で橘はリードの金具を、俺のColorに付いているリングに引っ掛けると  カチリ。  「ンウゥ……ッ」  Colorとリードが一つになった途端、俺は全身を多幸感に包まれ、我慢できずに白濁を吐露してしまう。  無理だ……、気持ち良い……ッ、気持ち良い……。  十日間放置されていた俺のモノは、ビクビクと触っても無いのに痙攣しながら床を汚す。  「我慢、できなかったな?」  橘はボソリと呟いて、リードを持っていない方の手で俺の頭を優しく撫でる。その感触に俺はフワフワとして、ぬるま湯に浸かった感覚に全身が支配され、クタリと橘の太腿ヘ頬を落としてしまう。そんな俺の変化に  「ハハッ……、サブスペースに入ったのか?」  橘は嬉しそうに呟き俺を見ると  「絢斗、Stand。ベッドヘ」  片手を下から上へと振られ『立て』と命令された俺は、ユックリと起き上がり言われた通りベッドヘと上がる。  リードを繋げれられた途端、安心感に心が満たされる。この人になら何もかもを任せられると信頼できる。全てを橘の支配下に置き、俺のコントロールを受け渡しても大丈夫だと全身が言っている。  「Crawl」  ベッドヘ上がった俺に、その場へ指をさしながら『四つん這いになれ』と言う橘の望むように、俺はその姿勢をとると  「Good。では舐めなさい」  俺の前で膝立ちになった橘の中心が目の前にあり、橘もまた興奮していたのか、寝間着のパンツの前は膨らみ、窮屈そうだ。  俺は少し近付くと、一度スンッと膨らみに鼻を押し付け匂いを嗅いでから、パンツのゴムに手を掛けると、カチャリッ。  音と共にリードを引かれ、首が上へとクンッと持ち上がる。  「手は使うな、良いね?」  そう言った橘の表情が見たくて視線を上げると、獰猛なDomの本能が目に宿り、自分の欲を俺にぶつけたいと語っていて……。  俺はその目に射抜かれ、腰から背中へと上がってきた快感に、背中を捩らせた。  浅く荒い息を吐き出しながら、パンツのウエスト部分を歯で挟み、首を動かして下へとずりさげるが一気には下ろせず、左右の部分も同様にする事でなんとか橘のモノを出す事に成功し、口を大きく開いて咥えようとするがまたしてもリードで阻止されてしまう。  「直ぐに咥えるのか?」  そう問われれば、舌を伸ばして裏筋から舌を這わせて上下に首を動かし、先端で滲んでいる先走りを唇を窄めてズルルッと啜れば、ビクビクッと気持が良いのか、橘のモノが反応する。  それが嬉しくて、俺はカリ部分や鈴口を重点的に舌や唇で愛撫し始めると  「気持ち良いよ……ッ、絢斗、咥えなさい……」  と、やっと咥えても良いとのお許しが出たので、俺は自分の口腔内ヘと橘を招き入れる。  口に入れた途端、グアッと質量が増し咽そうになってしまうが、それを堪えて俺は首を振り始める。四つん這いの態勢だと手が使えず、首しか動かせない事を考えれば徐々に喉奥へと橘のモノを受け入れ、喉で扱く事しかできないと悟ると、俺はユックリと喉を開いて橘のモノを飲み込んでいく。  「ゆっくりでいい……」  スリッと頬を撫でられ、一度橘に視線を向けると橘もまた俺を見ていて、俺は目元を緩めると首を伸ばし喉奥に橘を受け入れる。  グウゥッと喉が鳴り、次いではすぐにゲエェ゛ッと嘔吐く。  嘔吐けばすぐに首を引いて、また奥まで受け入れていく。  「ンブッ……、グウゥッ、……ッングァ、ゲェ゛ッ……」  ガッポッ、ガッポッと首を動かし何度も繰り返すと、苦しさは残るものの感覚は麻痺していき、喉の奥を締めて橘のモノを扱けるようになる。その頃には俺の顔は涙と唾液や鼻水でベトベトになっているが……。止めたいとは思わない。  それ以上に橘に気持ち良くなって欲しいという欲の方が勝ってしまう。  喉奥で何度か橘のモノがビクビクと跳ね出し、そろそろ限界が近いのだと察すれば、一度キュウゥッとキツく舌を上顎へ持ち上げるようにし喉を締めると、リードを後ろに引っ張られズルリと口腔内からモノを出されてしまう。  ……ッ、どうして……?  俺の口の中で達して欲しかったとは言えず、視線を上げればそれが表情に出ていたのだろう。橘は口元を歪め  「……ッ、君の中で……、出しても良い、かい?」  一言そう言って、目にかかった前髪を手櫛で上へと流すと、そのままその手を寝間着のボタンへとかけて着ていた物をスルリと脱ぐ。その余裕が無いような仕草に俺も煽られ、太腿まで下がっているパンツに手を伸ばすと  「ん?脱がしてくれるのか?」  と許されれば、一度橘の肩を押してベッドへと倒し脚からパンツを引き抜く。  そうして仰向けになった橘の上に、俺が跨ると倒した時に伸ばしたリードを一度引かれて  「なんだ、乗ってくれるのか、積極的だな?」  楽しそうに呟く橘に  「英、臣……も……ッ気持ち良く……なって、欲しい……ッ」  先程橘がベッドへ置いていたジェルを手に取り、自分の手の中に出すと後ろ手に橘のモノを掴み、自分の双丘の間で挟みユルユルと腰を振る。  「……ッ、ハァッ……、気持ち良いよ、絢斗……ッ」  俺の言葉に、橘のモノがビクッと素直に反応して、俺は堪らずに切っ先を蕾へとあてがうと、そのままゆっくりと腰を下ろしていく。  店長と電話で話した後、橘が帰って来る前に準備はしていたので、さほど痛みは感じずにのみ込める。  「ンゥッ……、ハァ、ア……ッ」  それよりも橘のモノで満たされる喜びの方が強く、トチュンッと全て収まった瞬間に、パタタッとまた俺は橘の腹の上に白濁を吐き出してしまった。  「アッ、ア……ッ、……持ち、良い……」  出した後も余韻は長く、ブルブルと内腿は震え、それに連動して内壁を締め付けてしまう。そうすれば自分の弱いか所を橘のモノで攻める形になってしまい、ずっと気持ち良いから抜け出せなくなる。  「ハッ……、もう、動けない?」  下から橘が呟き、リードを手首に巻き付けたかと思うと俺の腰に両手をあてガッシリと固定する。そうして下から突き上げるように腰を振り始めた。  「ア゛ッ?……ッ、ヒ、ァッ……ア゛~~」  イッたばかりで敏感になっている内壁を抉るように奥へと入ってきたモノに、チカチカと目の前に星がチラつき、それと同時に橘のモノが弱いか所を叩くから自分で攻めていた時とは違い、いつクルか解らない快感の波に攫われ、ずっと内壁を食い締めてしまい、益々快感から抜け出せなくなってしまう。  「イァ゛ッ、動か……な、ぃで……ッ」  「ン?……、中でずっとイって、るのにかッ……?」  「ア゛……ッ、だか、らッ、……だ、からァ゛ッ~~~!」  ずっと中でイキっぱなしになる気持ち良さは、怖い。だから止めて欲しいのに……ッ。  けれど橘は動きを止めてはくれず、俺は後ろ手に橘の太腿に手を付いて態勢だけは崩すまいとするが  チャリッ。  グイッとリードを引かれて、上半身のバランスを崩すと、橘の胸へとダイブしてしまう。  「絢斗……ッ」  橘の胸に額を付けていた俺を、気持ち良さそうな声が呼ぶので顔を上げると、快感を長く味わおうと眉間に深い皺を寄せて、荒く息を吐く表情が目の前にあり、俺の体でそんな顔をしているのかと思えば、ビリビリと背中に這い上がってくる甘い電流に喉が仰け反る。  「フウゥッ、ン……ッ、ア゛ッ、またッ……イッ、ク゛ッ!」  橘の顔を見て、ギュウゥッと締め付けてしまえば再び自分で良いところを抉ってしまい、ビクビクと腹を痙攣させながら中でイッてしまう。  「……ッ、絢斗……」  再び橘から名前を呼ばれ、俺は体を少し橘の方へと寄せ、唇を奪う。すると腰にあてていた手が後頭部にまわり撫でられれば、キスして欲しかったのかとキュッと胸が温かくなる。  「ンゥッ、……ファ……ッ」  お互いの舌を絡め合い、深く口付けを交わしていれば、後頭部にあった手がシーツの端を掴み俺の顔に伸びて  「ハハッ、ぐちゃぐちゃだな」  唇を離して俺の顔を拭いながら橘が呟く。  「ン……、ブゥッ」  イラマチオの時の涙や鼻水が綺麗に拭われると、再び橘は俺の腰へと手を伸ばして腰を振り始めるが  ドチュンッ。  キスする時に自分の態勢を少し上へとずらした事により、橘の腰辺りから少し上になった為、橘は膝を立て容赦無く俺に杭を穿つ。  「ア゛ッ、ァ゛~~~ッ!ンウゥッ、ヤ、ァ゛……ッ」  先程よりも深く入るようになったモノに、俺は唇から口を離し橘の首筋に顔を埋めてしまう。  「ホラ、……ッ顔を見せなさい……」  耳元で囁かれ、俺は埋めてしまった顔をソロリと上げ  「ハッ……、良い顔に、なってるな……ッ」  俺の顔を見て橘は笑いながらそう言い、更にDomのフェロモンを強くする。  「ア゛……ッァ……、駄目ッ……だってェ゛……ッ、も、……もぅッ」  今だってDomの支配下でサブスペースに入っている状態。その上から更にフェロモンをキツくされれば、脳が蕩けそうになってしまう。  また中でイキそうな感覚に、ハクハクと空気を噛んでいると、突然橘が俺の腰を上へとあげて自分のモノを俺の中から抜く。  ズルルッと引き出される感覚も酷く気持ち良く、出ていくときにカリ高の切っ先が弱いか所をかすめビクンッと体が踊る。  抜かれてから橘の上で荒く息をしている俺を、トンッと軽く横に押してベッドへと寝転がせると、橘はクルリとそのまま俺を半回転させ、うつ伏せにさせる。  「な、に……ッ?」  正常位で抱かれるんだと思っていた俺は、バックでかと腰を持ち上げようとすると、そのまま橘が俺の上へと乗ってきて  「えッ、……ッなにッ、ンア゛~~ッ……」  そうして寝た状態のまま、自分のモノを俺の最奥にあて、押し入ってくる。  「ヒァ、……ッァ゛~~ッ、持ち……ッ良いッ、良い、よぉ~ッ……」  いつもとは違う感覚を中で感じて、俺は無意識に橘のモノを食い締めている。上から押さえつけられるように腰を動かせられれば、切っ先が前立腺を押し潰すように何度も叩き、背中に橘の重みを感じるのもギュッと抱き締められているみたいで、何も考えられなくなる。  「気持ち良いな……ッ?」  言いながら橘の手が前に伸びてきて、スルリと俺の立ち上がった乳首を見つけ、スリスリと指先を上下に動かす。  「アッ、アンン゛……ッ、ハァッ、す、き……ッ、ソレ、好き、ィ……ッ」  「ン、そうか……、可愛いな……ッ絢斗」  素直に喘ぐ俺の項に、橘はチュッ、チュッと音を立てながらキスを落とす。その感触さえも気持ち良くて、その度に内壁を締めてしまう。  「ン、ッ……、もっと、奥……ッして……」  「ン?」  俺は堪らずに、白くボヤのかかる頭で口走る。  ……ッ、もっと、奥……気持ち、良くしてッ欲し……ッ。  「ハッ……、尻を上げて、ヘコヘコ動かして……ッおねだりしてるのかな……?」  気持ち良さから無意識に双丘を上げて、腰を上下に振っていたらしい……。  耳元で楽しそうに橘が呟き、俺の耳を甘噛みすると、俺は完全に理性を手放してしまい  「んぅ……ッ、欲しいッ……英、臣の……ちんぽ……ッ奥、まで……」  俺が言い終わると同時に、橘のモノが最奥だと思っていた更に奥まで届き、その衝撃に俺は喉を反らして息を呑む。  「望み通り……ッ、全部入れたぞ……」  「イ゛……ッ、ア゛~~~……ッイィ゛ッ、気持ち゛ッ、良い゛……ッ」  「気持ち、良いな……ッ、奥が吸い付いて……ッ」  橘の台詞に、橘も気持ち良いのかと思うと、更に強く奥を抉って欲しくて、橘が動くリズムに合わせて自分もまた腰を動かしてしまう。  「ア゛~~~ッ、ア゛~~ッ、イ゛イ゛ッ……、ぎ持ち、良い゛ッ!」  「ハッ……、絢斗ッ……出すぞッ、……」  「カヒュッ……」  橘が呟いた直後に、リードを後ろに引っ張られ、俺は喉を更に仰け反らせる形になる。  その橘の行動に、彼がどれ程興奮しているのかが伝わり、俺は全身を身震いさせて大きな快感の波にさらわれてしまう。  「ア゛ッ、イ゛ッグ……ッ!イッぢゃ……ッ!!」  「……ッ!!」  一番奥に叩き付けられるように橘のモノを感じた刹那、ビュルル……と更にその奥に白濁をかけられ、俺はグルンと白目を向いて意識を飛ばしてしまった。           ◇  次いで目を覚ましたのはバスルームで、橘と一緒に湯船に浸かっているところだった。  俺を支えるようにして後ろに橘がいる。  「気が付いたか?」  俺がモゾッと体を動かした事で、気が付いたと察した橘がそう声をかけてくる。  「ン……ッ」  薄っすらと目を開ければ、隣で少し心配そうに俺を見詰める橘の顔があるから、大丈夫だという意味を込めてスリッと首筋に額を押し当てる。  その動作に小さく安堵の溜め息を吐き出した橘が  「すまなかったな……、加減が出来なかった」  と、謝るので  「……、気持ち良かった……、今も気持ち良い……」  プレイが終わってこうやってSubの俺を労るようにしてくれる行動は、とても安心感に包まれる。  「まだ、サブスペースに入ってるからな」  「ん、……」  フワフワとした意識の中で、無意識に首元に手をあてると、既にColorは取られているが、俺は感触を思い出して幸せな気持ちに浸っている。と  「絢斗……、私からのお願いなんだが……」  後ろから一度俺の髪にキスを落として橘が俺にそう切り出す。そうして  「私と一緒に暮らさないか?」  と、提案してきたのだ。  俺は首にあてていた手をチャプリと湯船の中に落として橘を振り返ると、少し照れ臭そうに苦笑いしている顔とぶつかる。  「……ッ」  橘のそんな顔を初めて見た俺は、カアッと自分の顔が赤くなるのを感じて、言葉に詰まってしまう。  「あ……ッ、え……?」  そんな俺の態度で、大体はどういう返事が返ってくるのか解るはずなのに、言葉が出てこない俺に対して  「Say」  のコマンド。  俺は震える唇から言葉を絞り出すと、嬉しそうに微笑んだ橘の唇に、自分の唇を押し当てた。 おしまい。

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