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side.××××
『信じらんない…』
─────こんな屈辱、初めてだよ。
「はッ…ど、したのっ、マキちゃん…?」
「あンッ、な…にがっ…?」
大好きなセックスの最中だっていうのに、
ちっとも盛り上がりゃしない。
イマイチ反応が薄いボクに対し、
上にのし掛かる男も不満を露わにし。
負けじと中のモノを突き勃てて、くるんだけど…
「ンッ…もう抜いてよ。なんか萎えちゃったし。」
動きを止め呆然とする男を置き去りに。
さっさとお尻のモノをズルリと抜いて、バスルームへと向かおうとしたら。
イイオトナの癖に情けない姿────ナニをおっ勃てたまんま、ボクの足に縋り付かれて…
ホント萎えるんですけど?
「待って…!」
男の悲痛な叫びに、すっかり冷めてしまったボクは。
ソイツを振り返る事なく…
シャワーを浴びるため、浴室へと向かった。
今のセフレだってそう。
ボクに魅了され服従したがる男なんて、腐るほどいるんだ。
この辺りではセレブ校として有名な、
『海誠 高校の瀬口 マキ』…と言えば。
例えノンケでも、僕に尻尾振ってくるぐらいだし。
なんたってこの生まれもった才能?
その辺の女子高生なんかより、断然可愛いって言われるし。抱き心地だって最高なんだから。
だから当然アイツだって、
ボクに跪いて奴隷と化すと…
思ってたのに。
『やっぱ無理…お前じゃ勃たねぇわ。』
コトに及んで拒まれたのも、
ボクに靡かなかった男も…アイツが初めて。
有り得ない、バカみたい…こんなの、認めやしない。
あんな顔だけの男、こっちから願い下げだっての…
そう自分に言い聞かせて、あの日から更に従順なセフレ増やして。毎日のように違う男を、弄んできたけど。
何処か煮え切らないモヤモヤを引きずり。
忘れようにも忘れられずにいた4ヶ月目の、
夏の終わりの、夕刻…
(アイツ……)
久し振りに遭遇したアイツは、
遠目でも腹立つくらい、更に磨きが掛かっていて。
つい無意識に、目で追いかけていたら…
(なに、アレ…)
アイツが大事そうに、その背に抱えてたモノ。
その光景に、確かな違和感を感じた。
一度気になってしまうと、どうにもならなくなり。
コソコソとボクともあろうものが、ストーカー紛いに彼らの後をついて行く。
暫く尾行すれば、安っぽい集合住宅の敷地内へと差し掛かって。
始めは眠っていたハズの背負われた少年が、
団地の前でゆっくりと降ろされた。
『……………』
『……………』
さすがに会話の内容までは聞こえなかったけど。
なんかこう、明らかに友達とは形容し難い雰囲気のふたりに…
何故だか、苛々と嫌悪感が募った。
外灯の下、見つめ合うふたり。
徐にアイツが、背負ってた小さい少年に手を伸ばし。顔に触れる仕草や優しげな表情を認め、吐き気がしたけど。
更にボクは、衝撃の光景を目撃することになった。
(なッ─────…)
『男のお前じゃ勃たねぇっつったんだよ』
そう冷たく吐き捨てて、
このボクを抱こうとしなかった、初めての男が。
今目の前で別の男…お世辞にも可愛いとは言えないような、チビで冴えないヤツに向かって。
自ら顔を寄せ、キスをする。
その瞬間、ボクの中で何かが音を立て…
崩れ落ちていった。
(ふざけんなよ、上原……)
許さない、絶対。
このボクを土足で踏みにじったんだから。
誰であろうとこの罪は…
償って貰うよ?
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