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side.Tamotsu
「陸人君を呼んだのはね…」
僕の怪我も把握してたし、休んだからとても心配してくれてたっ…てのも、あったんだけど。
あれからマキ君達はどうなったのかが、ちょっとだけ気になってしまって。
上原君の話だと、首謀者であるマキ君も不良達と一緒に蹴散らしちゃったって言うからさ…。
純粋に心配だったのと、また恨みを買ってしまうんじゃないかって…ちょっと不安になってたんだよね。
「アイツらなら…」
陸人君の話では、上原君の暴れっぷりは想像以上に凄まじかったみたいで。予想はしてたけど…不良達はほぼ全員、病院送りになったんだそう。
これに関して上原君は、
「保に手ぇ出したんだから、当然だろ。」…って鼻で笑って一蹴。
…まあ、痛い目みた僕からしても、その気持ちは解らなくもないけどね…。
首謀者であるマキ君も例外ではなく…といっても一応、喧嘩に関しては素人だったから。
手加減してやったって、上原君は言うけども。
彼曰く「仕方なく一発だけ、思いっきりブン殴ってやった」とか言ってたから……どう、なんだろう?
「多分、もう大丈夫だと思う。」
陸人君と従兄弟の和博君は、以前よりギクシャクしてしまったらしいだけど。
一方でマキ君と和博君は、相変わらずな関係だそうで。今回の事ですっかり鬱 ぎ込んでしまったマキ君を、献身的に慰めてるとか…。
マキ君も今回は、色々やり過ぎてしまい。
取り巻きの大半が離れて行った中…和博君だけは変わらず傍にいてくれたらしく。
このふたり、意外とお似合いというか…
陸人君がいうには、まんざらでもないんだそうだ。
そんなこんなで、マキ君も相当懲りただろうから。もう報復とかはしないだろうって、陸人君は呆れ気味に苦笑していた。
ちなみに余談だけど…
「マキってのは本名じゃなかったらしい。」
…と陸人君。本当の名前は『 正明 』っていうらしいけど。可愛くないから名前を略して“マキ”と名乗ってたんだって。
マキ君らしいといえば、らしいのかな…?
「まあ、あんだけ痛めつけてやったんだからな。それでもやろうってんなら…次は容赦しねぇけどよ。」
そういうことを真顔でさらりと述べる上原君は。やっぱり一般人とは、ひと味違うなと思う…。
「とにかくさっ!一件落着ってことで…早く飯にしましょーよ!」
この話はおしまーい!と、芝崎君がまとめてくれて。広げたまんまのお弁当箱を指し示す。
「陸人君も、一緒に食べようよ?」
こないだ家に来た時は、ご馳走するって言いながら…結局は僕が取り乱して叶わなかったし。
お詫びといってはなんだけど…。みんなで食べようと思って、たくさん作ってきたからね。
天気もいいし、遠くの山は紅葉し始めてて綺麗だし…久しぶりの息抜きっていうか、なんだかちょっとしたピクニックみたいで…
こういうの、ちょっと楽しいよね?
「…いただきます。」
「ちょ、テメェ…一番に保の飯食ってんじゃねぇよ!」
「…保サン、コレすごくんまいッス。」
「そう?良かった~、じゃあ遠慮なく食べてね!ほら、上原君も。」
「……保、お前ホントに自覚あんだよな?」
みんなで楽しく、いつもより賑やかなランチタイムだけど。
「僕も作ってきたから、遠慮なく食べてくれ。」
「綾兎先輩の卵焼きは~、ダシ効いてて美味いッスよ~!あ、佐藤先輩のは甘口ッスね~こっちもチョー美味いッス!」
「ふふっ、デザートもあるからね~。」
いいなぁ、なんか。
当たり前だった日常が、ようやく戻ってきたんだってすごく実感する。
「あ、陸人君おべんと付いてるよ~。」
「ん…ども。」
「なっ、おい保────…高月、テメェッ…!」
恋をするって楽じゃない。
擦れ違ったり、苦しかったり。
好きになればなるほどに、嫉妬だとか苦労の類いは、尽きることなんてないのだろうけれど…
「もう…上原君てば────…」
上原君の腕を引き寄せ、耳打ちする。
こういう時こそ、勇気を以て本音を晒け出せば…
(僕には…昭仁君だけ、なんだから…ね?)
誰よりも特別で、愛おしいのは。
「っ……!!」
「あ~上原サン、顔まっかっかだ~!」
「はは、珍しいな。」
「…チッ……ノロケかよ。」
この先何があっても、
「ばっ…テメェら冷やかすんじゃねぇ!!」
「ふふっ…」
キミとずっとずっと、一緒にいられますように。
…end.
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