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第24話 最高のタイミング

俺が気弱な事を言ったせいなのか、蓮はマッサージしていた手を止めると耳元で尋ねてきた。 「何?何かあった?…鷺沼先輩と。」 俺は蓮の鋭さに苦笑して、答えるともなく呟いた。 「やっぱり環境が変わると時間が合わなくなって、会う回数も減るだろ。ま、そんなのは言い訳だって分かってるんだ。理玖と篤哉を見ればな。アイツらは時間を惜しみなく使って、意地でも会ってるからな。 俺たちはそこまでの熱量は無いんだ。たぶん。これがアルファ同士の限界なのかな。」 俺がそう言うと、蓮は俺の肩に置いた手にグッと力を入れて俺の耳元で囁いた。 「…人によるだろ。少なくとも、俺はそうじゃ無いけどな。」 俺は蓮を見上げて、ニヤリと笑った。 「そんな事言ったって、お前本命とは付き合ってないんだろう?」 そう言って揶揄うと、蓮は妙に迫力のある笑顔で俺をじっと見つめて言った。 「そうなんだけどな。でも、俺が本命と付き合ったら、よそ見なんて絶対させないぜ。」 蓮があんまり本気で言うものだから、何となく俺は茶化すのも違う気がして黙ってしまった。丁度その時に、生徒会室のドアが空いて、騒がしく壱太が入ってきた。 「ヤッホー。壱太様が来ましたよっと…、あれ、今、もしかして俺タイミング悪い⁉︎」 そう言って、壱太が焦った様に頭を掻いた。俺は肩をすくめて壱太に言った。 「いや?別に大丈夫だけど。なぁ、蓮?」 そう言いながら蓮に顔を見上げると、予想に反して蓮は苦々しい顔で壱太を睨みつけていた。 「タイミング悪いのは、壱太だけじゃ無いけどな。」 そう蓮が言ってる側から、篤哉がニヤけた顔で生徒会室へ入って来た。 「ちーっす。あれ、何か空気重いね。壱太、お前だろ?何かやらかした?」 俺はパソコンを開くと、三人が何やら目配せし合ってるのを、呆れた顔で眺めると言った。 「そろそろ、他の役員来るから。議題の確認と、提案書、こっちに送ってくれたか?」 三人は何故か俺をじっとりとした眼差しで見つめると、たぶん俺の悪口でも言い合ってるんだろう、ヒソヒソと頭を寄せて話してたと思ったら、俺の方を向いて篤哉が尋ねてきた。 「なぁ、涼介、鷺沼先輩と上手いこといってないの?」 俺は蓮を睨むと言った。 「随分ハッキリ聞くんだな。俺には上手くいってるのか、いってないのか、どっちともいえないな。前回空気が悪かっただけだ。たぶん今度会う時に理由がわかるんだろ?」 そう答えた俺の机の上のスマホが、ブブブと震えながら少し動いた。言ってるそばから、葵からのメッセージだった。タイミングは最高だな。俺は公開処刑かよと思いながら、メッセージを開いた。

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