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第46話 久しぶりの再会

誰もいない教室の隅で、腕の中の涼介を蕩けさせるのはいい気分だ。自分がモテる自覚はあるようだけど、本当のところは全然自覚がなくて困る。 目を閉じて長い睫毛を頬に落とす涼介は、高校時代のひと目を惹く綺麗な男から、もっとなんていうか、いい男になった。色気が増したのかもしれない。 日本人離れしたエキゾチックな顔は、くっきりした二重の大きな目と明るい茶色の瞳が印象的だ。大きな唇はセクシーで、涼介を見かける学生が顔を赤らめてヒソヒソ噂するのもしょうがない気はする。 最近イメチェンしたスパイラルパーマが妙に似合って、目が合うたびに俺もドキッとしてしまう。いつも険しい顔をしてるから、誰でも寄り付く訳じゃないけど、そんな俺様な感じがまた人気をあげてるんだ。 去年は鷺沼先輩の件もあったから、俺の忍耐も随分試された。傷心の涼介に寄り添うのは身代わりの様で、もやもやもしたけれど、涼介ははっきりそれはないって言ってくれた。 あの時の涼介は、本当に手の中から消えてしまいそうで、俺はある意味側にいて、涼介を見張っていたんだ。強気な涼介は見かけよりもずっと繊細で、傷つきやすい。 でもそれを知っているのは、俺だけでいい。俺は自分でも気づかなかったけれど、かなり執着心も独占欲も強かったみたいだ。涼介に対してだけなのか、それは分からないけど。 それに涼介は、身体を合わせる時に征服される感じが好きみたいで、それは俺にも意外だった。俺としては大事な相手に意地悪はしたくない。だから最初は戸惑ったけれど、俺の涼介に対する独占欲を出せば困った顔をしながらも、目の奥でうっとりとするのが最近読めるようになった。 今も困った表情なのに、俺を抱きしめる手がもっとしてほしいとばかりに掴んで離さない。俺はクスッと笑って、もう一度念入りに涼介を貪った。 なぁ涼介、俺はお前を離す気はないんだ。お前が運命のΩに巡りあったとしても、絶対に許さないぜ。俺は焦がれていた涼介と思いを通わせたことで、多分舞い上がっていたんだろう。 俺たちの間を邪魔するトラブルが近づいているのに、全然気がついていなかったんだから。それは、俺が涼介から激しく求められたいってどこか心の中で思っていた、その隙を突かれてしまったんだ。 俺と涼介は両思いだったけれど、恋人には想いの量は必ず天秤が同じなんてことはあり得なくて、いつもどちらかが必ず傾いているものなんだ。それを見せつけられて俺は罠に嵌ったんだな。 ああ、涼介。俺はお前が馬鹿みたいに好きなだけなんだよ。

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