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第47話 橘先輩

結局、橘先輩はなかなか気遣いの出来る人だと、少し話してるだけでも分かった。俺は多分、葵の友人というフィルターで、橘先輩を自分のテリトリーに簡単に引き込んでしまったのかもしれない。 それ以来何度か、大学で会えば挨拶して少し話をしたりする事が増えて、気づけば一緒にカフェテリアでランチを食べたりする様な仲になっていた。 なぜか先輩と出くわす時には、蓮が授業でいない事が多かった。俺は先輩と喋ってることを蓮に隠すつもりも無かったけれど、敢えて言う必要も感じなかった。 橘先輩はあくまでも、葵の友人で、友達だったからだ。実際、橘先輩は俺に迫ってくるわけでも無かったし、アルファ同士の気の置けない関係として、俺はまぁ懐いてしまったのかもしれなかった。 だから、いつもの様に橘先輩が俺に声を掛けてきて、自分のマンションで飲まないかって誘って来た時に、俺は特に考えもせず了承していたんだ。 高層マンションの中層に位置する先輩のマンションは、ざっくばらんな先輩のイメージとは違って、かなりクールモダンな雰囲気だった。 「橘先輩、なんかイメージ違いますね。カッコつけじゃないですか?あ、結構お持ち帰りしてるんでしょ?」 俺がふざけてそう言うと、先輩はニヤッと笑ってキッチンに立つと、海外ビール瓶を2本手に持って慣れた手つきで開けると、一本を俺に渡してカチリと鳴らして言った。 「最近はそうでもないぜ。俺も葵の件があってから、考え方を変えたんだ。あれほど人の事を好きになるってどうなんだろうって。…そうだな。そう言う意味じゃぶっちゃけお前には興味あるよ。」 そう言うと、グイっと喉仏を動かしながらビールをグビグビと飲んだ。俺は何だか予想外の答えに、戸惑いつつもつられてビールを飲んだ。 「今、俺三好のこと誘ったんだけど。俺に興味ない?」 俺はまたどうしようかと迷いながら、もうひと口飲むと言った。 「…先輩、俺今幼馴染と付き合ってる…んです。」 先輩はクスっと笑って言った。 「知ってる。お前に首ったけなあいつだろ?でも、俺にはお前があいつほどのめり込んでる様には見えないけどな。あいつはお前が弱ってる時につけ込んだんじゃないのか? 言い方悪いけど、俺だってもし状況が同じだったら、流されて付き合う気がするからさ。別にお前が考えなしって言ってる訳じゃないんだけど。 もし、流されて関係してるんなら、一回立ち止まってもいいんじゃないかなって思ったんだ。」

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