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第66話 引っ越し

「結局この部屋も住んで2年だったな。」 俺はそう言いながら、自分で片付けたいものだけを箱の中へと入れていった。蓮も同様に部屋から持ち出した箱を一つ抱えてリビングの部屋の隅にドサリと置いた。 「それって手持ち?」 俺がもう一度蓮に尋ねると、蓮は頷いてマジックで自分の名前を書き込んだ。そして俺にマジックを放り投げた。 「ああ。後は業者任せで大丈夫だ。涼介は三箱か?結構多いな?」 俺は箱の中を覗き込んでガムテープで留めると、自分の名前を書いた。 「仕事場兼務してたからな。どっちかと言うと、蓮が少な過ぎるんじゃねぇの?」 そう言って蓮の箱の上にドサリと積み上げると、蓮は俺の腰に手を回して首の後ろに口付けて言った。 「俺の大事なものは#コレ__・__#だからな。結構がさばるぜ?」 俺はため息をつくと、腕の中で蓮に向き直って囁いた。 「何、誘ってるわけ?明日引っ越しだってのに?」 蓮は急にギラギラした眼差しで俺を見つめると、目を細めて呟いた。 「俺は隙あらば涼介を食っちまいたいんだ。知らなかったか?明日引っ越しなら、尚のこと引っ越し記念に致さないといけないだろう?俺たちの初めての同棲マンションなんだから。 今度は新婚マンションになるのか?卒業と結婚祝いに、親が共同で奮発してくれたんだ。有り難いよな?」 俺は蓮の太くて逞しい首筋に鼻を押しつけて言った。 「俺は自分で稼いで手に入れるつもりだったんだけどね。両親も理玖の妊娠で舞い上がってるから、ついでに俺にまで大盤振る舞いってわけ。ふふ。」 蓮は俺の身体を焦らす様に、ゆっくりと撫でながら話し続けた。 「篤哉たちが生還した時に高校1年生だったんだっけ。高二で結婚、大学入学と同時に妊娠って…。まぁあいつにしては堪えたよな。大学はどうするって?」 俺は蓮の手を引っ張りながら浴室に向かって歩き出した。 「出産後一年休学するってさ。その間、三好家で多分親にも協力してもらって子育てしながら大学復帰するんじゃない?うちの母さんはぽやぽやしてるけど、野村さん居るから大丈夫だろうし。 でもちょっと理玖が親になるとか信じられないけどね。俺たちはたまに行って、赤ん坊の可愛いとこだけ楽しめるってわけ。伯父さん生活も楽しそうだ。 さてと、じゃあ最後の晩餐ならぬ、記念行事を致しましょうか?」

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