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side. Madoka
「晃亮…」
それはまさに罪人の如く、知られてはならない秘密を…
彼に暴かれた瞬間、だった。
昴クンに好きだと告白されて。
自分が抱く想いとおんなじなんだと。
これ以上ないくらいに満たされ、誓いのキスを交わしてすぐ…。
それは一気に音を立てて崩れ去り、
奈落の底へと突き墜とされてしまった。
「昴クンっ…」
庇うように晃亮クンと対峙する昴クンの後ろで、
オレが不安を露わにすると。
(大丈夫。)
その強い眼差しで、彼は優しく微笑んでくれた。
「何シてた、すばる?」
相変わらず無機質な物言いの彼は、表情もそうだけど…
何でだろう?
今はかなり怒ってるように思えた。
「ソイツは俺のモノだと、言ったハズだ…」
ちらりと目が合い、跳ねる身体。
それを気配で察した昴クンは遮るようにして。
オレの視線の先に、真っ向から立ちはだかった。
「もうやめよう、晃亮。」
いつも控えめで、儚げな子だったけれど。
今の彼はとても勇ましくて。
昴クンは彼の眼を見据え、凛とした声ではっきり告げる。
「俺は円サンが好きだ。だからもう、お前には…指一本触れさせない。」
“たとえ晃亮でも許さない”
それは初めて″兄″に抗う、“弟”の姿だった。
「…………」
何も言わない晃亮クン。
けれど昴クンの一言で、
その眼をあからさまにギラつかせ───…
「ぐッ…!」
「昴クンっっ…!!」
何か考える隙など無かった。
ドアの前にいたはずの晃亮クンが、気付けば昴クンの目の前にいて…
そうすれば、昴クンの身体はもう…吹き飛んでいた。
「ッ…晃亮っ!!」
床に倒れた彼に駆け寄れば、
声を荒げ頭上を睨みつける昴クン。
晃亮クンは暫く茫然としたまま、右手を見つめていたけれど…。
「ゆるさない。」
ぽつりと呟いて、酷く冷淡な瞳をこちらへと向けた。
「どけ。」
オレを突き飛ばし、
昴クンの胸倉を掴んで拳を振りかざす。
何度も、何度も。
堪らなくなって、
オレは崩れ落ちる昴クンの前に割り込んだ。
「ダメッ!!」
「円さ…」
逃げろと弱々しく呻く昴クン。
でもこんなコト…
無視して自分だけ逃げるわけにはいかないよ。
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