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珈琲キャンディ。1
─────オレはキミに何が出来る?
『珈琲キャンディ。』
side. Madoka
オレの名前は篠宮 円 。
この春から短大に入り、誕生日も既に迎え19歳になった。
長所と言えば誰とでも仲良くなれちゃうコト。
それ以外は…特にないかな~?
外見もタレ目ってくらいでチョー普通。
勉強も運動も人並みで。これといった特技も趣味もなくって…別に苦労もしてないし、のほほんとしてるのが性に合ってたから。
今までは、それでも良かったんだケド、ね…。
夏が来る少し前、
オレは運命的な再会から最高最強の恋人を得る。
愛しいその人の名は小野寺 昴 クン。
オレが元働いてたバイト先のコンビニ付近にある、
『鈴鹿 高校』って言う…超有名な不良男子校の1年生で。オレの3つ年下。
そうなんです…
実のところオレの恋人は彼氏でして…
ピッチピチの男の子、だったりします…。
オレには勿体無いくらい、昴クンは完璧なコでして……
思わず溜め息が漏れちゃうほど綺麗で格好良くて。
前髪の赤メッシュがスッゴく似合ってて、片耳には深紅の二連ピアスで色気がマシマシ。
背も高く細身の割に鍛えられてるから、モデルさんみたくスタイルも抜群で。歩くだけで道行く女の子が必ず振り返ってしまうくらいに、
とってもとっても…ステキなコなんだよ。
そんな彼と、まあ…
色々な苦難を乗り越え、めでたく結ばれて。
今現在、同棲なんかしちゃってたりするんだけど…。
こうしてふたりで暮らしてみると、
彼の才能をこれでもかってくらい、
見せつけられちゃうんだ…。
昴クンは今まで幼なじみの晃亮 クンと、
このマンションで二人暮らしをしていて。
その時から家の事を全てこなしてたらしく…。
炊事、洗濯、掃除などなど───…
それは主婦顔負け、プロ級の腕前。
何でもソツなくやってのけちゃうのだ。
勉強だって普段やってないだけであって。
オレが短大の課題とかしてると、一緒に見てたりするんだけど…。
それだけでどんどん覚えてくみたいで、
たまに間違いとか逆に指摘されちゃうから…
真面目にやれば、頭の方もかなり良いんじゃないかなって…思う。
加えて不良なもんだから…って、
今は大人しくなったけどね。
怒るとあの晃亮クンともやり合えちゃうくらい、
喧嘩だって強いから…。
文武両道、顔も良しときたら。
どこにも隙がなくて…
ほんと、困ってしまうよ。
オレだってね、ふたり力合わせて、
生活していきたいって思ってたよ?
家事も分担して。
お互い助け合ってって…でもね、
人間誰しも向き不向きってもんが、あるんだよ…。
オレがご飯の支度を手伝おうと包丁を握れば…
何にもしてないのに、ザックリ指を切っちゃうし。
洗濯機のボタンを操作したら、
すぐエラーになってピーピー鳴り出すし…
掃除機引っ張り出して掃除しようものなら、
コードで足を引っ掛けたりして、色んな物がひっくり返って余計散らかしちゃうから────…
何かしようとすると、逆に足を引っ張るだけだから。
不甲斐なさすぎて…ホント泣けてくる。
そんなダメダメっぷりなオレだから。
昴クンもビシッと叱ってくれてもいいのに、
『俺がやりますから。』
…って、すぐオレを甘やかしてくれちゃうんだもん。
しかも夏休み入ってから、
オレの兄ちゃんの友達の喫茶店でバイト始めてさ。
理由を尋ねたら…
『早く自立して、円サンをお嫁さんに貰いたいんです。』
なんて事を真顔で言うもんだから…。
愛されてチョー幸せ者なんだけど、
オレからキミに返せるものが何ひとつないから…
不安で仕方ないんだ。
(はぁ……)
このままじゃ、
いつかキミが離れてしまいそうで、怖いよ…。
もうメチャクチャ好き過ぎて、
ヘンになりそう───…
キミの愛情があまりに大きくって、
それに見合わない自分が、あまりに情けなくて。
(オレは……)
キミに釣り合えてるのかな…?
好きだから、オレからも。
キミを幸せに出来る何かが、欲しいよ…。
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