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side.Subaru
「ゴメンね…オレが散らかしたのに…」
リビングのソファからキッチンにいる俺に向け、
円サンが申し訳なさそうに告げてくる。
その声は酷く掠れており。
先ほどまでの甘く情熱的な情事を、生々しいまでに物語っていた。
「良いんですよ。…俺の所為で円サン、立てないでしょう?」
「ううっ…それは、オレが誘ったんだし…」
からかうよう目を細めれば、
円サンは真っ赤になって俯いてしまった。
あの後、一度果てたくらいでは済まなくなり…
再三にわたり身体を求め合った結果────…
円サンは本当に動けなくなってしまい、
だからと言って台所をこのままにしておくわけにもいかないからと…
俺がひとりで片付けを買って出たのだけど。
「昴クンは、よく動けるよね…」
やっぱり若いから…などと独り言のように呟く円サン。
実際あれだけの激しいセックスだ。
さすがに俺も多少は気怠さもあったが…
まぁそれは単純な話、
抱く側の俺と、抱かれる側の円サンとでは身体に掛かる負担の量が違うから…ってのが、一番の原因だと思うんだけどな…。
「円サンの為なら、このくらい平気ですよ。」
本心から直球で告げると、また赤くなる円サンに笑みが零れる。
「オレだって、昴クンの役に立ちたいのになぁ~…」
何かを思い出したよう、しゅんと俯く円サン。
そういえば…と俺も情事前に円サンから言われた言葉を思い出す。
雰囲気的に流してしまったけど、
確かオーナーの忍サンがどうとか言っていたような…
今更だがこの擦れ違いの原因さえ、俺は殆ど掴めていない。
だからこそきちんと聞いておかなきゃと思い、
円サンにこの話題を切り出したのだが…
「それは、ね…えとぉ──…」
言葉を濁しながらも円サンが打ち明けてくれた本音は。
「……つまりヤキモチ、ですか?」
家事の一切をこなせない無力な自分。
対して女性でありながら、店を切り盛りする美人オーナーの忍サンという存在に。
俺と忍サンが話してる場面を、目にしてしまった円サンは。言いようのない不安に駆られてしまったんだそうで…。
「だって、スッゴくお似合いだったんだもんっ…昴クンとあのオーナーさん。それに比べてオレは普通だし男だしっ…」
…と、涙まで浮かべる円サン。
「もう…しょうがない人ですね…。」
貴方と通じ合えて知ったコト。それは…
「俺が愛して止まないのは円サンなんです。」
想いをちゃんとした言葉で伝えると言うコト。
「でもっ…自信、なくって…」
「ん…俺だってそうですから。」
円サンが勢い良く顔を上げ、目が合う。
戸惑いに揺れる瞳に微笑みかけ、俺は更に続けた。
「俺も不安で仕方ないんですよ…?ただの友達だって解ってる相手にさえ、ガキみたいに嫉妬したりして…」
ホント、余裕ないんです。
苦笑しながら打ち明ければ。
円サンは真意を確かめるよう、じっと俺を捉える。
「昴クンも、ヤキモチ…?」
情けなくもハイと返事すると、
円サンは面食らったように目を丸くする。
「そっか…、そうなんだ……」
暫く考え込んだのち、円サンは安心したように呟いて笑みを漏らした。
「円サン。」
片付けをひと通り終え、
ソファへ身体を預け座る円サンの前へ跪く。
その手を取り、俺は誓いを立てるようはっきりと宣言した。
「俺には貴方しかいない。円サン以外の人なんて、絶対に考えられませんから。」
信じてくれますか?…と、見つめ合ったまま問い掛けると…
円サンは溜め込んだ不安を吐き出すかのように、
ボロボロと泣き出し俺に抱き付いた。
「オレも…キミだけだからっ…」
「…ハイ……」
何も持たなかった俺は、
またひとつ…愛し方を知る。
相手を想うばかりが、愛情ではないのだと。
「円サン、明日は一緒に買い物しませんか?」
スーパーに行って、
それからお互いの好きな物を一緒に作りましょう。
少しずつ、ふたりで。
「オレ頑張る!オレだって…キミに尽くしたいから…。」
その言葉と笑顔だけでも充分幸せだけど。
与えられるのも、意外と心地良いものなんだと…
貴方が俺に教えてくれたんだ。
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