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side.Madoka
『ふくそーちょーの忍クン』
…うん、確かに。
良くお菓子くれて。オレのコト可愛がってくれてたっけ。
あの頃は確か、ヴィジュアル系の綺麗なお兄さんだったと思う。
そういえば話し方も、ちょっと変わってたかもしれないな…
「あの頃は、円ちゃんに会いたくて毎日通ってたんだからっ。大学入ったくらいから、私もこんなになっちゃって…ご無沙汰だったけどね~!」
「あ~…そうなんだ……」
「円ちゃんなら、お婿さんでもお嫁さんでも大歓迎だからぁ、いつでも私の所に来ていーからね!」
そう一気にまくし立て、頬擦りする忍クンに。
漸く正気を取り戻した昴クンが、慌ててオレの腕を掴み、引き離す。
「待って下さい!円サンは俺の恋人なんですよ!」
忍クンの冗談みたいな台詞に、本気で突っかかる昴クン。
「あら…あらあら~、ふたりってそういう関係?」
忍クンは口元を押さえ、兄ちゃんに向かって問いかけると…呆れながらも肯定的な短い返事が返ってきて。
それを聞くなり忍クンは、ニコニコと満面の笑みを浮かべる。
「そうだったの~。ごめんなさいね、私ったらつい浮かれちゃって…」
邪魔するつもりは無かったのよ、
と申し訳なさそうに手をパタパタさせた。
「え…?オネーサンて男なんスか!?」
「いや土屋、お前はフェードアウトしてていーから。」
今更な横槍を入れる土屋クンに、
森脇クンが空気を読めと鳩尾をひと突きして…
土屋クンは床に崩れ悶絶してしまう。
ちょっと可哀相…。
「相変わらず賑やかだなぁ~、お前のダチは。」
ケラケラ笑い飛ばす兄ちゃんの横で、
晃亮クンも静かに頷くと。
「土屋はあたまが残念なんだ。」
真顔でそう言い放っていた。
「ちょっ…そりゃねーだろよ、晃亮~!」
土屋クンが涙目で食って掛かるけど、
晃亮クンはしれっとしていて。
普段から冗談とか言わない晃亮クンの言葉が、
土屋クンも相当ショックだったみたい…
そんな彼を、なんだかんだ宥 めてあげる森脇クン。
ほのぼのとしたその光景を、遠巻きに眺めながら。
オレは自然と笑みを零した。
「円サン、こっち。」
和気藹々と賑わう中、
昴クンに耳打ちされ手を引かれて。
「どうしたの?昴クン…」
ドキドキしながらカウンター席に導かれ、
丸椅子へと座らされる。
昴クンは質問には答えず、
悪戯な笑みで目配せすると。
そのまま軽快にカウンター内へと入って行った。
「約束したでしょう?コーヒーをご馳走するって。」
そう告げて、器用に作業を始める昴クン。
覚えたばかりとは思えないくらいの手際良さで、
凄く格好いい…
程なくして、コーヒーの良い香りが辺りに立ち込めた。
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