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第1話

「お疲れ様。明日も2公演あるから、今日はしっかり休んで」 「はい」  翔真は研修生統括マネージャーからの言葉に返事した。  須賀翔真は、大手アイドル事務所で研修生をしている。17歳のときに今所属するグループのPinksが結成されて早4年。どんなライブも舞台も手を抜かず、デビューのチャンスを狙ってきた。今日も地方で研修生グループでの合同ライブがあり、さらに夜公演では、先輩グループのCDデビューが発表された。 「あと、須賀」 「はい」  翔真が聞き返すと、マネージャーは言いづらそうに口を開いた。 「君が頑張っているのは分かるんだけど、でも、もう少しどうにかならないかな」 「……すみません」  翔真は頭を下げた。 「五十嵐とセンターを割っている自覚を持って。そうじゃないとバランスが悪いし、デビューなんてできないよ」 「はい。すみません」  マネージャーが楽屋からいなくなると、翔真はため息を落とした。  Pinksは6人組で、センターを翔真と五十嵐大翔(ひろと)で割っている。大翔が天性の圧倒的な存在感を放つために、パフォーマンスでは、大翔とそれ以外の何か、と評されることが多い。大翔のシンメである翔真は、他のメンバー以上に大翔に見劣りしがちと言われることもある。一応アンチは気にしないことにしているが、それでも、幼馴染でここまで差が出ている事実に胸が痛い。 「あんまり気にすんなよ」 「葵くん」  落ち込んだ翔真のもとに、Pinksのリーダーの葵がやってきた。 「翔真だけじゃないから。大翔に追いついて、デビューをしよう」 「うん」  翔真が頷くと、葵に頭を撫でられた。こういうとき、最年長には敵わないなと思う。翔真が荷物をまとめ終わると、葵と一緒に外に出る。送迎車に乗って、ホテルに戻るのだ。

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