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第2話
送迎車に入ると、翔真と葵以外のPinksのメンバーは席に座っていた。2列目に座る最年少コンビの優弥と蒼汰は、今日の興奮が冷めやらないようで、おしゃべりに花を咲かせている。
翔真と葵がシートベルトを締めると、車は動き出した。
「ねね、葵くんと真白くんって、デビューのこと聞いてなかったの?」
Pinksのムードメーカーである蒼汰があざとく後ろを振り返る。顔立ちや仕草がかわいらしい蒼汰は、オフでもたおやかである。1列目の通路側に座っている翔真は、それに耳だけ傾けた。隣に座る大翔は、我関せずといった感じで、窓に流れる景色を見ている。窓に写る大翔の目には、炎が宿っていた。
「同期がいるグループとはいえ、聞いてないな。真白は何か聞いてた?」
葵は、隣に座る同い年の真白に話を振る。
「いいや。多分、デビューすることを誰かに言っちゃいけないんじゃないかな」
「そっかー。嬉しかった? 僕は、良くしてもらってる先輩がいたから嬉しかった!」
蒼汰が嬉しそうに言う。翔真には表情が見えないものの、頬を染めているのがよく分かった。
「俺たちも頑張ろうな」
葵がそう言うと、蒼汰だけでなく優弥もうん、と言った。言わないだけで、真白も頷いていることだろう。翔真は、何も反応できなかった。隣の大翔を盗み見ると、大翔も無反応だった。自分に他のメンバーが追いついてこいと思っているわけではなく、大方、今日のライブの振り返りをセルフでしていることだろう。幼馴染だから、なんとなく考えていることが分かる。会話は大翔と翔真を除いた4人で続いているが、翔真はそこに入らず、鞄からスマートフォンを出して、ブログを書くことにした。
「翔真」
「ん?」
大翔に名前を呼ばれて顔を上げると、いつものように穏やかな顔をした、しかし目に炎の宿った大翔が翔真を見つめている。
「今日、暇?」
ささやくような声で大翔は問うた。
「うん。ブログ書けば、あとは寝るだけ」
「ああ、毎日更新してるやつか」
大翔は景色に目をやりながら言った。
「大翔も毎日書けば? 月1じゃなくてさ」
「うーん、俺はいいや」
「そう」
翔真には、暇かどうかを聞かれる理由は分かっていた。大翔は、翔真とセックスをしたがっている。
大翔と翔真が性的関係を持つようになったのは、高校二年生のときだった。pinksが結成されて、より異性と遊べなくなった頃に抜き合いを始めた。どちらから言い出したかは覚えていないが、他人に擦ってもらうのは中々の快感で、大翔も翔真もやみつきになっていた。ただの抜き合いがセックスに変わったのは、大学入学後のことだった。事務所からあてがわれたワンルームマンションで一人暮らしを始めたふたりは、親の目を気にしなくて良くなり、セックスをするようになった。今でも身体を重ねていて、特に公演後は、大翔が納まらない熱を翔真にぶつけることが多い。
ホテルにはブログが書き終わる頃に到着した。Pinksのメンバーとマネージャーで7階に上がる。部屋は大翔と翔真が一緒で、ふたりはメンバーに別れを告げて室内に入った。
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