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第3話

「俺先にシャワー浴びていい?」 「うん」  大翔は手前のベッドに荷物を置くと、そそくさとシャワーを浴びに行った。大翔がシャワーを浴びる音がする。  翔真は、荷物を整理しながら、ぼんやりと今日の公演を思い出していた。  研修生の合同ライブでは、最初に全員で歌って、それから各グループのステージがある。そして最後に再び皆で歌って、幕を下ろす。大翔は、全員で歌うときは毎回センターにいた。Pinksのステージでも、ずっと1番前だった。もちろんと言うべきか、シンメの翔真もPinksのステージのときはセンターにいて、大翔とセンターを割っていた。つまり、翔真は大翔のパフォーマンスを間近で感じることができた。大翔は、自分がどう見られているか、どう魅せれば良いのかをしっかり理解している。天性のセンターらしさに加えて、大翔はその勘の良さで、観客を魅せていた。同時に、翔真も骨抜きにされていた。  翔真は、誰よりも近くで大翔を見ているからこそ、大翔に惚れ込んでいる。自分と一生差の縮まらないようなパフォーマンス、圧倒的な存在感がまぶしいからだった。それが、大翔への恋慕だと気づいたのは、一人暮らしを始めてすぐの頃だった。翔真は、アイドルだろうとアイドルの卵であろうと、メンバー内で恋愛をするのは良くないと思い、自分の想いを秘めておくことにした。それでも大翔の特別であり続けたくて、セックスに興味のあった大翔に、自分の処女を渡した。 「上がったよ」 「じゃあ、入ってくる」  去り際に大翔と目が合った。大翔は深紅の、ぎらついた目をしていた。

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