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第4話

 翔真がシャワーを済ませ、頭を拭きながらベッドに戻ると、ベッドに座っていた大翔と目が合った。大翔の隣に腰かけ、どちらともなく唇を合わせる。舌を突っ込む性急なキスで、恋人らしいことは何もしない。 「……ん、っは」  翔真が息継ぎをしに唇を離すものの、待ちきれないというように、大翔が再びキスをする。そのまま翔真は乱暴に押し倒される。足の間に大翔が膝を入れ、両手首も大翔によってシーツに固定される。翔真が大翔の頭をわしづかみにして深いキスをまだ堪能していると、部屋着の中に大翔の手が侵入してきた。意思を持った触り方で、思わず腰が揺れる。 「へんたい。俺に触られるだけでそんなんになんの?」 「……うるさい」  思わず顔を逸らすと、大翔は翔真の部屋着を脱がしにかかった。翔真も背中を浮かせて、横になりながら部屋着を脱いだ。ついでに、これからすることも考えて全裸になった。 「俺は本当のことを言っただけじゃん」  そう言って、大翔はにやりと笑った。翔真の身体に顔をうずめて、桃色の突起に舌を這わせる。 「、あ、まって、やだ、っ」 「乳首だけでいきそうになってんじゃん。そんなに俺とセックスするのが好きなんだ」 「っあ、ちが、」  死んでも好きとは言わない。翔真はそう心に誓っているのだ。  大翔には、いまだに乳首を舐められている。片方は指で転がされていて、舌と指の快感に、翔真は目の前がちかちかしてきた。せめて、大翔に挿入されて絶頂を迎えたい。翔真は大翔に強請った。 「はやく」  その三文字だけで、大翔は理解した。 「淫乱かよ」  そう言いながら、大翔は翔真を四つん這いにさせた。ふたりのセックスでは、もっぱらバックが多い。 「一応ほぐすよ」 「うん。……っあ」  翔真は、大翔のそういうところも好きだった。行為のときの言葉は冷たいし、そもそもセフレなんていう微妙な関係なのに、変なところで優しい。  気づいたら、大翔の指を2本飲み込んでいた。2つの指は、しこりをゆっくりと擦り始めた。 「ここ好きだろ。なんだっけ、前立腺」  大翔は翔真を振り向かせて意地悪く笑った。その笑みすらも絵になっていて、翔真は思わず中を締めつける。 「あは、中きつくなった。どうする、1回いっとく?」  翔真が頷くよりも先に、大翔は翔真のそれへ左手を伸ばした。器用に中を弄りながら、翔真のそれを擦る。 「う、ああ、っ、やだ、いっちゃ、いく」  きゅっと中が締まったのが大翔には分かった。翔真の背中に隠れて見にくいが、シーツには白濁がある。 「入れらんないでいっちゃったね。ド変態じゃん」 「変態変態うるさい」  息を整えながら翔真が言うと、大翔は慰めがわりに軽く背中を叩いた。  大翔と翔真はセフレである前に、幼稚園からの幼馴染でもある。だからこうして軽口を叩いても、はいはいといなされる。大翔には恋人らしさの演出という自覚はないが、翔真はそのやりとりも、まるで付き合っているみたいで好きだった。 「そういえばさ、翔真」 「なに」  大翔はキャリーバッグからローションを出しながら、翔真を呼んだ。 「なんで今日声抑えめなの? 嫌だった?」  翔真はすぐに言い返せなかった。俺たちはただのセフレなのに、なんで俺が嫌かどうかを気にしているんだ。そういう優しいところが俺をダメにする。そう大翔に責任転嫁して何も返せないでいると、大翔は続ける。 「俺がライブの興奮を整理するためのセックスだけど、翔真の気持ちも大事だろ」  翔真を見つめる大翔の顔は、純粋に翔真を気遣うものだった。翔真はその顔をまっすぐ見ることはできなかった。 「……俺が抑えているのは、両隣がメンバーの部屋だからだよ。嫌でしょ、メンバー同士でセックスしてますとかさ」  これは本当の理由だった。メンバー同士でセックスをしているのがバレたら、デビューは遠くなる。今日デビューした先輩グループは、事務所の大人たちから遅すぎるデビューと揶揄されている。自分たちもそうなりたくなかった。 「別にいいだろ」 「は?」  あっけらかんと大翔は返した。四つん這いの翔真に覆いかぶさって、耳元に口を寄せる。 「想像してみろよ、Pinksのみんなの前で俺に挿入されてるところ。翔真が俺に、行き場のない感情をぶつけられているのを見たら、みんな何て言うんだろうね。俺楽しみだな」  大翔は機嫌よく自身のそれにゴムをつけた。さっそく翔真の穴にあてがって、ゆっくり挿入する。翔真はそれにぐっと耐えた。 「……っ、変態なのはどっちだよ」 「どっちもどっちじゃない?」  そう言って、大翔は腰を動かし始めた。 全部を入れないで、カリで翔真の前立腺を擦る。 「っ、あ、やだ、そこ、んっ、んぅ」 「嫌じゃないくせに」  大翔は冷たい視線で翔真を見下ろす。翔真は四つん這いだからその目の大翔を見ていないが、何かを感じ取って背中を震わした。  そのまましばらく大翔が前立腺をいじめていると、中が不規則に締まるようになった。翔真は意味のない母音を発していて、中イキしているのがよく分かった。 「気持ちいい?」  大翔が訊くと、翔真は頭を縦にぶんぶんと振った。大翔はその頭を撫でながら続ける。 「俺もだからもっと気持ちよくなろう」  大翔はそう言うが早いが、自身のそれを更に挿入させる。 「や、っい、いや、ぁあっ、やだ、おくっ、やだ……!」  翔真は、あまりの快楽に自分の身体が支えられなくなった。腕を折り、腰を高くつきだした姿勢で抽送を受け入れている。 「好き、の間違いだろ」  大翔はせせら笑った。馬鹿なのはどっちだと、その冷笑を翔真は笑ってやりたかった。ステージの神様に愛された人間が、ステージから下りれば、冷めやらぬ熱狂に身を委ねて幼馴染兼メンバーを抱いているのだから。しかし、そんな余裕は持ちあわせていないし、そもそもそれら全てを愛してしまっているから、そんなことができるはずもなかった。 「締めすぎ」  大翔が呟く。翔真の腰を持ち直して、律動を早める。大翔の限界が近かった。 「ぃや、やだ、っ、いく、っああ」  翔真が絶頂を迎えると同時に、中の締めつけによって大翔も欲を吐き出した。  射精した大翔は、翔真の中から引き抜くと、翔真の隣に仰向けで寝転がった。うつぶせの翔真を一瞥して、天井を見ながら言う。 「先シャワーいいよ」 「……ありがと」  翔真は腰をさすりながらベッドから下りた。

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